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銀狼がみる夢は

年度内に終わらせる予定がどう考えても難しいです。

外伝含めて三日に一回くらいのペースで更新出来たらいいなぁ。

タイトル変更に伴い、一話を二話に分けました。エピローグ(プロローグ)で、インテグラとアナライズの単語含めて、数十文字程度加筆しました。


すみません、いつものようにルビと濁点は明日やります。やはり眠い。

猫の郷からアーモンドとラザア再会の記憶


「自分で魔術の【コントロール】が出来ない。まぁ、覚えたての初心者によくあることね」

ラザアはアーモンドを見る。

「完全に出来ないことはないのだろうが、対象に触れることが条件だ。その者の身体の一部を壊すといったところだろうか?」

アーモンド君、好きな子の前ではカッコつけたいよね。

「ただ相手に魔力を流すというより、なんだ、自分と違う色に干渉するような感じとでもいえばいいのか?すごく不快な感じがして、自分の内側も傷つけてしまうのだ」

「見てるこちらからしたら、ただの自爆ですよ。見てるだけでこちらの寿命が縮みます」

この殺しても死ななそうなリーセルスの寿命を縮めるとは、まさに《キモ》だ。

「まさに自爆技ね」

「だいたいにして、自分でいうのもなんだが、これは魔術なのか?ただの魔力暴走のような気がしないでもないのだが」

「実物を見てないから分からないけど、そうそう発現できる代物でも無さそうね。他に変わったことは何か」

リーセルスは控えめに手を挙げる。

「気のせいかもしれませんが、術の発現時とその前後で、アーモンド様の目が赤く輝く気がするのです。見間違いかも知れませんが」

「……」

ラザアは一考しアーモンドを見つめる。アーモンドはその美しい青い瞳にたじろぐ。

「右腕を振れば空が裂け、左腕を振れば海が割れ、右足を出せば大地が割れ、左足を出せば草木を枯らし、天を仰げば雷が鳴き、その視線は生命を奪う、覇道を極めし大陸の覇者であった。初代国王アートレイ・グルドニア様のお話覚えてる?」

「もちろんだ、賢き竜退治なんど読んだことか」

「むしろ、主が本読んでいるところはそれ以外見たことがないのですが…」

リーセルスは今日も通常運転だ。

「アーモンド…私が貴方の本当の魔法の使い方を見付けてあげる。是非今度試して欲しいことがあるんだけど」

その女神の笑顔は、再会してから一番の笑顔であった。


…………


微睡みの中にいる。

そこから抜け出そうとするが、その沼は泥でぬかるみ足が沈む、踠けば踠くほどに沈む。泥が体に纏わりつく、なぜだか心地好い。深く沈むほどに、微睡みが絡みつき体から泥が離れない。

沈む、沈む、ゆるりと沈む。

だか、その沼の中で赤い瞳だけは輝く。まるで獲物を見付けたように、泥の中で狼は嗤う。





2

「ガララ、ガララ、ガララ」

シーランドは怒る。この海王の祭典を邪魔する者がいる。美しく【フィナーレ】を飾り、彼の王を星座へ還す物語に泥を塗ったのだ。この落とし前をいったいどうつけてやるか…


「婿殿下がりなさい、今ならまだ逃げれる」

「に…げ…る」

アーモンドはまだ微睡みの中だ。この獣はボールマンを見た後に、何かに取り憑かれたようにシーランドの瞳を覗く。

青い宝石のような一つ目だ。

ウェンリーゼの砂浜に、青い一つの宝石と赤い二つの宝石が輝く。


「ガララララァ」

シーランドが痺れを切らす。尾鰭が左右に揺れる。シーランドは、その〖永遠の脊椎〗なる数十~百個近くあるであろう関節の可動域を、目一杯に滑らかに動かし、尾鰭を鞭のようにしならせアーモンドに振るう。

見るからに重症で、フラフラのアーモンドに機敏な動きは期待出来ない。アーモンドは波のようにユラユラと揺れてる。まだ酒が抜けきっていないようだ。

「ダメだ!アーモンド」

ボールマンは反射的に目をつぶりそうになるが、その目に映った光景に驚愕する。


アーモンドは右腕の魔力を空にする。

そしてフラリと後方にゆったりとした【ステップ】を踏み、迫り狂うシーランドの尾を撫でる。

「《強奪》」

ボールマンには一瞬にして、アーモンドがシーランドの尾をすり抜けたように見えた。

「ガラァァァァァァアア」

シーランドの尾鰭が、命の尽きた花のように萎れている。アーモンドはシーランドの何かを奪ったようだ。

シーランドは、《水球》を三発放つ。海と水の女神の眷属であるシーランドは、海に比べて陸での〖魔力粒子〗の集束は効率が悪い。海に体の一部を接していない限り、その魔力は無限ではなく有限である。

アーモンドは先ほどのシーランドから奪った〖何か〗を練り上げる。

「《銀狼》」

アーモンドの右腕から銀色の光が放たれる。その光の塊は狼のように獲物に噛みつく。


ビジャァァァァァァァアア


《水球》は初級魔術だが、シーランドが口から放つその威力は万全ではないとはいえ、低く見積もっても中~上級魔術の威力はあるであろう。

アーモンドの《騎霧》はシーランドの魔術を相殺した。



〖騎霧〗(強奪・銀狼)(未完成)

アーモンドが使う独自魔法

・ 効果

触れた対象に魔力を流し内部から臓器・血管を破壊する(活動を停止させる)。対象の魔力に発現するため相当の魔力操作を要する。

アーモンド自身まだ完全に術の発現を制御しきれておらず、自身の臓器・血管を傷つけてしまう場合もある。

その対象に触れた際の強奪した〖何か〗を練り直し、〖銀狼〗として放出することが出来る。





3

「ランベルト中将ご無事で」

リーセルスは血だらけのランベルトに駆け寄る。

「かろうじて身体は繋がっているようです。とっさに、自分に麻痺をかけていなかったら喋れもしなかったでしょうね」

「今、《治癒》をかけます」

「ああ、結構です。少尉も、もう魔力の余裕はないでしょう。無駄なことに使う必要はありません」

ランベルトが自分の体の状態を理解している。

「それよりも、今すぐに二人で撤退しなさい。これは命令です」


「ガララララァ」

ランベルトとリーセルスの視線の先には、遠くの砂浜で怒り狂う海蛇と酔っ払った銀狼が戯れている。


「撤退の選択は…今更ながら難しいかと…」

リーセルスも出来ることなら早々に撤退したい。

「状況を見るに難しそうですね」

この似た者同士のそれぞれの主に対する気苦労は絶えない。

「《鑑定》、《演算》」

ランベルトはその戯れを眼鏡に映し、自身の観察力、分析力、状況を把握し未来を予測する。



〖ランベルトの眼鏡〗

(ラザアのファースト・キッス)

・ストーリーと効果

ラザアが始めて作った玩具の魔導具で視力自動調整機能付き。シロによって魔術《鑑定》小~中が付与されている。

・ランベルト専用装備

ランベルトは主に生物の状態把握、観察、分析する際に使用ている。《鑑定》自体の効果も、上記項目に特化している。



「リーセルス少尉、確か貴方は天才でしたね」

「中将閣下には負けますが」

いったい、なんの忖度だ。

「一つ聞いて欲しい命令があるのです。本当の()()()




「ゴフッ、ゴフッ」

アーモンドが血を吐きながら膝を折る。どうやらこの魔法はまだ未完成のようだ。アーモンドの体が悲鳴をあげている。

アーモンドは意識が朦朧としている。微睡みの中だ。

いくら王族であるアーモンドでも、おそらく魔力保有量を考えるに、魔法はあと〖一回〗が限界だろう。アーモンドは砂を噛みながら思考するが、意識が朦朧とし体が熱くなり考えがまとまらない。


落ち着かないときの【服用】をオススメしますよ…


ふとした言葉を思い出す。

アーモンドは、しばらく懐のポケットに入ったままだったタバコを取り出す。

アーモンドはボールマンを振り返り…別れを告げる。


「元帥閣下も如何でしょうか?落ち着かない時に【服用】するといいらしいですよ」

アーモンドは、慣れない手つきでタバコに火をつける。

「せっかくだか、随分前にまじない代わりに禁煙していてな。こう見えても【ベビースモーカー】だった」

「そうでしたか…これは【釈迦に説法】でしたね。ゲホッ、ゲホッ…ゴフッ」

アーモンドは、シーランドと闘う前にニコチンとタールに負けた。

「どうやら、私には大人の味は分からないままのようです。後を頼みます。このウェンリーゼに必要なのは、闘うことしか能がない獣ではなく、皆を導くことができる指導者です」

「バカをいうな!私に構わず逃げなさい。大人のワガママに若者が付き合う必要はない」

「ラザアと…私のワガママな女神と約束したんです。貴方を連れて帰ると、古来より神々との約束事を破る訳にはいきませんから」

「アーモンド君…頼む、後生だ」

ボールマンは、右腕から徐々に朽ちていく。罪人に残された時間はあまり多くはないようだ。

「申し訳ないありません、私も元帥閣下やラザアに負けず劣らずワガママなようです。お互いに残された時間は、多くはないかもしれませんが、一分一秒でも貴方に生きていて貰いたい。もう一度、ラザアに会って貰いたい。これがせめてもの、ウェンリーゼの皆の…私の最初で最後の親孝行です」

アーモンドの全身が赤く光る。残された魔力全てを練っているようだ。


「ガララララァ」


シーランドは問う。

別れは済んだかと、この海蛇は親子の会話を邪魔しない程度の【エチケット】を覚えたようだ。きっとモブ達の教育の賜物だ。

「死神が呼んでいます。アーモンドと呼んでくれたこと、嬉しかったです。初めて父親に名前で呼んで貰えました…オトウサン」


アーモンドは幼き頃より、愛に飢えていた。王族の最底辺の三男坊など、王宮で相手にするのは、病弱の母と周りの数人の使用人だけである。父親に至っては、十数年その顔すら見たことがなかった。本当の父親に、名前で呼んで貰ったことなど一度たりともなかった。

この狼は死の淵で、報われない幸せを感じた。

アートレイの血が哀しみを叫ぶ。

しかし、その叫び声は神々にしか届かない。


死神は大神を見る。

大神は、()()()()()は何もいわない。大神は全ての物事に中立だ。観測者が、物語に干渉することは神話の時代より許されない。死神は思う、この狼に鎌を振りたくないと…

しかし、死神は神話の時代より父親の前で公私混同したことは一度でもなかった。


アーモンドの赤目は光らない、その微睡みからは完全に抜けきってないようだ。銀狼は一服を終えた。酒を飲み過ぎ、もうそろそろ眠くなってしまった。


ボールマンは願う。タバコの火のように、大事な息子の命が消えないことを…

しかし、父親からこのかけがえのない息子にしてやれることは、ただ名前を呼ぶことしか出来なかった…



今日も夜の更新でスミマセン。

いつも読んでくれてありがとうございます。

次回は外伝でジョーやってから、本編でそろそろユーズ出したいと予告します。

皆さん今日もよい夢を


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