閑話 銀髪と婚姻届
原案者様 特典 「西の姫君の涙」の最終話です。
「皆さま、応援ありがとうございましてニャース」
白猫より
エピローグ
カッ、カッ、カッ、
神殿の庭に杖が地面と触れ合う音がする。
「アーモンド様、カッ、カッと相変わらずうるさいし、遅いですね」
「リーセルス、貴様、それが主に対する態度か」
「飼い主が、二度と怪我をしないように諌めるのが私の仕事ですから。どなた様は、私を都合のいい【救急箱】か何かと勘違いしているようで」
リーセルスは、本当は治療は苦手らしい。
リーセルスは主を諌めながら、器用に【線香】に魔術で小さな火をつける。見事な魔力操作だ。
「両の手が杖で塞がっては、あぶないので私が【お供え】させて頂きます」
「悪いな」
なんだんだで仲は良いようだ。
猿王撃退から約三ヶ月が過ぎた。
山猿と狼少年の喧嘩は、両者の痛み分けのようだ。
アーモンドの猿王撃退の勲章は、猫の郷の市民権と全治半年のオマケつきという、大層豪華なものである。今では両の手にある【松葉杖】姿と、体に巻いてある【硬性コルセット】も見慣れたものだ。
アーモンドは猫の郷に来てからの、度重なる《治癒》《回復》により、身体が魔術による治療を受け付けずに絶賛保存療法中である。
本人は不満そうだが、リーセルスは安堵している。
よくこの程度の怪我で済んだものだと。
今回の社交ダンスは子供には些か、大人びたダンスであった。
色々と迷った挙げ句、ホーリーナイトは神殿の庭の木の下に埋葬した。
白猫によく似た白い碑石で…
最終的な被害状況だが、猫の郷の重軽傷者およそ五十名、死者一名、失禁者ほぼ全員と、郷としての被害は軽かったのだろう(加害者アーモンド?)。
前回の猿王の被害に比べれば、本当に奇跡らしい(加害者アーモンド)。
その奇跡の、影の立役者である西の姫君の葬儀は、族長と息子の意向もあって国葬の予定であった。しかし、飼い主の意向もあって家族のみの、厳かな式となった。
アーモンドは埋葬の時、棺に魔猿に千切られた銀髪と【婚姻届】をいれてやった。アーモンドの【天然パーマ】の銀髪はきっと寝心地がいいであろうと…
緑の棒が灰になり、線香の煙が空に舞う。
時の女神はいつの間にか、季節を夏にしたようだ。古来より、死者が現世に戻ってくる数日間に魂でも逢えるようにと…
アーモンドは松葉杖を墓に立て掛け、痛む足を曲げながらしゃがみこみむ。アーモンドは一呼吸置き、白い墓に手をやり〖家族〗を撫でながら自分のブーツに語りかける。
「共に生きよう、共に闘っておくれ」
(一生そばにいるから、一生そばにいてくれ)
ニャース
線香の煙に紛れてブーツから猫が啼く
いったい何処の白猫であろうか
本当に嬉しそうな鳴き声だ
どうやら、時の女神の計らいは必要なかったようだ。
ここに、神々公認の誓いはなった
アーモンドは埋葬の時、棺に【婚姻届】をいれてやった。その婚姻届にアーモンドが名前を書いたかどうかは、神々ですら知らない二人の秘密である。
アーモンドは、この二つを加えて神殿の庭にホーリーナイトを埋めてやった。
聖なる夜に出逢った、アーモンドの聖なる騎士を埋めてやった。
獣人の像がいつからか、ほんの少し微笑んでいたことは、ホーリーナイトとアーモンドですら知らない。
「啼け、猫啼き」
「ニャース」
今日も何処かで、猫が啼く
原案者 ヴァリラート様 特典
「西の姫君の涙」
完
閑話も元々一話の予定だったんですが…笑
西の姫君の涙は、何をリスペクトしているか分かった人には分かったと思います。
真相は闇の中に…笑
そろそろ、海蛇どうにかしなきゃいけないんですが
外伝で「機械人形は夢をみる~モブ達の救済」が別作でやってしまいました。
八人のオッサンが以外に好評なようで、マジでモブだったのにね…
よかったら、隙間時間にでもそっちも覗いてやってください。
ナポレオンは調子にのっているようです 笑
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