不運
この回もユーズでないんです( ;∀;)
いったい誰が主人やら、本編で久しぶりにアーモンドさんいらっしゃいますよ。
様々な事象が重なったのだろう
1
リーセルスはやっとのおもいで、海を泳ぎ岸へたどり着いた。
アーモンドをシーランドまで特攻させた、【水上バイク】ルーググは死神の予言の通り、海の藻屑となった。
「アーモンド様、御無事ですか」
リーセルスは、シーランドのブレスをパーシャルデントの鏡による《反射》の反動で石碑に打ち付けられたアーモンドに駆け寄る。〖水皮のマント〗の効果による物理衝撃吸収大がなければ、身体がバラバラになっていたであろう。
〖水皮のマント〗
・ストーリーと効果
東の姫巫女に仕えし騎士が代々継承するマント
限り無く透明に近い水色で、海と水の女神の衣服の一部であったといわれている。
・物理衝撃吸収・耐性(大)
・魔法抵抗に対しては同属性の魔術・魔法耐性(大)、他の属性には(小~中)の耐性を持つ。
「くっ…リーセルス、シーランドはどうなった」
リーセルスは、息を切らしながら《回復》魔術を詠唱する。アーモンドの意識がハッキリし、表情が和らいでいく。
「今は、元帥閣下とランベルト中将が…善戦とは言い難いです」
ランベルトは、ボールマンの安全を第一に優先しており、自身に対する攻撃に対しては最低限の防御しかしていない。
術を応酬するごとにランベルトの生傷は増え、体力、気力、魔力は減っていく。
「元帥閣下は…」
「現在、ディックの杖による《竜巻》はシーランドの《津波》と相殺されてました。状況を見るに、元帥閣下はおそらくディックの杖の魔力調整をされて、その時間稼ぎをランベルト中将がなされているのかと」
リーセルスは、冷静に思考する。こちらはもはや、切り札を使いきった。元帥閣下は何やら奥の手があるようだが、状況をみるにシーランドに勝利する確率はもはや万に一つもないであろう。普通の指揮官であれば即時撤退を選択する。しかし、彼らは犠牲を払いすぎたのだろう。強敵を前に引かない姿勢は騎士の鏡だが、軍人としては失格だ。
リーセルスは副官として決断する。最悪の場合を考えてこのままアーモンドを麻痺させてウェンリーゼを見捨てる覚悟を…
「啼け、猫啼〖トラ〗」
「ニャース」
リーセルスが、《回復》に紛れて《麻痺》をかけようとした瞬間にアーモンドは駆け出した。
この銀の狼はいつの間にか、相当に鼻がきくようになったらしい。
この食い意地の張った〖銀狼〗いつも通りの〖不運〗の匂いにつられていってしまったようだ。
2
シーランドがランベルトを咥えたままボールマンを見下す。そのボロボロの歯からは、大量の血が滴る。
ボールマンは、ディックの杖をシーランドに向ける。狙うならまさに今が千載一遇の瞬間であろう。
ディックは準備万端だが
「ボール今です!どうせ私はみての通りです!ウェンリーゼを皆を守りなさい!」
ランベルトが数十年ぶりにボールマンを叱る。
「………」
ボールマンはシーランドを睨みながら、ランベルトを視界に入れる。よそ見できる状況ではない。
ボールマンは歯を食い縛り、口の中から血を流す。
どうやら、ボールマンは準備万端ではないようだ。
女神達がボールマンの血をハンカチで拭ってあげたそうにしている。押し達のハンカチ争奪戦だ。
先ほどまで、海から出ようとしなかった海の王が獲物を咥えながら威風堂々と、ウェンリーゼの王に近付く。
この海の怪物は神話の時代より始めて、陸へとその歩を進める。
いよいよ神々でさえ、予想だにしなかった緊急事態だ。海と水の女神はすごぶる居心地が悪い。
それほどにこの怪物にとって、ボールマンは大きな獲物なのであろう。
様々な事象が重なろうとしている。
ゴゴゴゴォォォ…
砂煙が舞い、地響きがなる。
ウェンリーゼの砂浜を狼が駆け抜ける。
「ランベルトォォォ中将ォォォ」
「なっ!来るんじゃありません、三男坊君」
ランベルトは、胴体から血を流しながらもアーモンドを視認する。
どうやら、 リーセルスはアーモンドを止められなかったようだ。
シーランドの残された瞳の視界から、アーモンドが本日二回目の特攻をかける。
アーモンドが、必殺〖肉車輪〗の加速から飛び上がり、全体重をのせた自身の垂直切りでシーランドの横っ面を斬る。
「ガララリラララァァァ」
シーランドは、ランベルトを離した。いよいよ牙が数本砕けたようだ。
「ちぃ!浅かったかぁ、アブアバアハアハァァァー」
アーモンドはその勢いのまま、シーランドの首を斬るつもりだった。しかし、砂浜で通常より足の踏ん張りが効かなかったこと。先ほどの〖水遊び〗と〖砂遊び〗でさらに足場の環境条件が悪かったことが災いした。アーモンドの〖肉車輪〗からの特攻は、本来の半分以下の力しか発揮出来なかった。まさに〖アンラッキー〗体質全開である。
シーランドがアーモンドを尾で弾き返した。
〖海王神祭典〗は大人の催しであり、二十歳以下はお呼びでないようだ。アーモンドはシーランドよりリーセルスの元へ【クーリングオフ】された。
銀狼さんお帰りなさい。
だか、とりあえずの【ワンポイント起用】は…
「アーモンド!よくやった!あとは、下がっていなさい。ディック」
…成功のようだ。
婿殿は義父に初めて名前で呼ばれた。
中継ぎとしての繋いだ【バトン】は真打ちへ。
「了解致しました。
残量魔力を使い、劣化縮小版厄災級魔法《暴風》を発現可能です」
ディックの目がブルーに光った気がした。
ギィギィギィギィギィギイ
不規則な機械のような音が響く
美の女神は両の耳を塞ぐ。
「我は要求する、荒ぶる風を、神の怒りを収束する、練る、練る、練る、練る、要求する」
ギィィィィィーン
機械音が小気味のいい流れのあるメロディーへと変化していく。
美の女神は片耳を澄ませる。
その風は、ディックの四十年間集めた魔力をウェンリーゼの風に纒い、神の怒りとして杖の回りに円を描くように九つの輪が収束する。
キィィィィィーン
美しいディックの杖をボールマンが演奏する。二人の意識と息づかいが重なり美しい。
美の女神は両耳を澄まし、そのハーモニーを聴き入る。
「縮小、収束、劣化厄災級魔法《暴風》」
様々な事象が重なった。
その事象を人々は〖不運〗と読んだ。
刹那の時間、死神の鎌が鈍く輝るのを大神は見逃さなかった…
もうちょい書く予定だったんですが、眠気には勝てそうにありませんでした。
こういう引きもお嫌いではないでしょう。
後でちょっと加筆しようか検討中です。
次回は、西の姫君の涙終わらせる予定です。
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