水面と感情が揺れるときに
そろそろバトルパート頑張ろうと思います。
《津波》というキーワードがあります。
配慮した文章のつもりですが、気分悪くなる方は、スキップ下さい。
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「ガァララララララァ」
無慈悲な風が海王神シーランドを襲う。シーランドは、残った片方の眼を赤く光らせて暴れ狂う。
厄災級魔法《竜巻》がシーランドのモブ達によって出来た各部位の傷口を、更に抉るように切り裂いていく。現状、ディックの杖が発現できる最適解な魔法だ。
「うぉぉぉぉ」
ボールマンとディックは非常に頑張っている。
ボールマンの両の腕が震え悲鳴をあげている。いくら魔石を媒体にしたとしても、この魔法は術者にかかる負担が非常に大きい。年老いていたボールマンであったなら、術の発現すら出来なかったであろう。
竜巻の余波によって、【海上ブイ】と魔導杭による光の結界が破られ、ランベルトの上級多重複合魔術【コン・クリート】すらも弾かれる。
ランベルトは《竜巻》に備えて、ある程度距離をとっていたがその場で四つん這いになり、吹き飛ばされないように体勢を屈める。
《竜巻》、その風は竜を巻きこむ名のとおり、恐るべき風だ。
「ガララララ、ガララ、ガララララ」
シーランドが天を仰ぐと同時に、残った独眼竜は瞳を赤から青く光らせる。ボロボロの背鰭が青く発光する。
ランベルトは、風の隙間からシーランドを辛うじて視認し、その光を《鑑定》する。
「なっ!ボール《津波》が来ます!」
いつも、エミリアと【郷土料理】以外のことでは冷静沈着なランベルトが焦る。
「くっ…」
ボールマンにランベルトの声は届かないが、一瞬見えた表情ですべてを理解する。
海の水面が揺れる、ユラユラと揺れる。
その揺れがぶつかり合って大きな力を溜めている。
ボールマンは、ディックの杖を見る。
「ディック、座標変更」
『了解しました。座標を変更します』
ディックは補助なしで、不馴れな自身での演算を行う。ディックは、魔法の杖になって以来の試練を非常に頑張っている。
ディックは、《津波》が発現する前の穴を見付ける。試練を突破したようだ。
『座標確認、《津波》の穴を確認しました。対象を変更しますか』
竜巻の風に傷付きながら、シーランドがこちらを伺っている竜種だけあって、冷静であれば知性は高いのだろう。
「ボール、ダメです!そのままシーランドを、我々に二発目はありません」
ランベルトは、叫ぶ。しかし、彼の声はボールマンには届かない。
ボールマンはシーランドを一睨みしたあと、「フッ」と笑った。
「ディック、波の穴を狙え」
『了解しました。対象を変更、《津波》を【レジスト】します』
ディックの杖は、対象を変更するために自動で杖を動かす。ボールマンの腕が悲鳴をあげ、両の腕からは〖ガキン〗、〖ゴキン〗と音がなる。ボールマンは数十年ぶりに〖ガキンの人〗になった。今回は〖ゴキン〗のオマケつきだ。
水面の揺れは激しくなる、だがそれは《津波》ではなく《竜巻》によるものだ。
ウェンリーゼの浜辺は、海水を被ったが、シーランドの《津波》は、〖竜を巻き込む風〗により【レジスト】された。
波はまだ揺れているが、いつも通りだ。
海の怒りは鎮まった。
潮の流れが変わり、静寂の後に…
「ガララララララァ」
シーランドが雄叫びをあげる。海の王は、ウェンリーゼの王を見て「ニタリ」と獰猛な笑みを浮かべる。
ボールマンは、両の腕をダラリと垂らし
「フッ」
と不敵に笑った後に
「まあまあだな」
と少し困った顔をした。
魔法の杖は記録する。その、かつての主によく似たその顔を…
そしてハイケンは記録する。
本当の〖海王神祭典〗を…
〖カツンの岩〗は、かつての泣き虫だった青年をとても心配そうに見守っていた。
ちょっと短めです。
エモいの使い方あってますかね?
移動しながらの執筆なので後で加筆訂正する予定です。
神々は、固唾を飲んで見守っています。
カツン、カツン、カツンはボールマンが石碑に名前を彫っている音色でした
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