12 尊いは正義
フラワー、ラザアの祖母
エミリア、ラザアの母
梟(不苦労)、リトナー魔法国宰相フォローが擬態している。
ジュエル、グルドにア王国の皇太后の立場を隠して推し活中
フェリー、青い怪鳥神獣フェリーチェが小さくなっている。
1
『聖女のドレス』
フラワー・ウェンリーゼ専用装備
〖ストーリーと効果〗
ジュエル・ダイヤモンドにより製作されたドレス。
物理耐性《極》、魔法無効化、ただし回復系統の魔術・魔法は含まれない。
自動サイズ調整、防塵、不滅、清潔、消毒、温度調節、再生が使用者の任意で発現する。
また、使用者が透明になることも可能である。
当時、製作を手伝った錬金術師はドレスの効果に驚愕した。
素材として、フェリーチェの羽をベースに鉄ミミズの表皮にカラレイの糸を編み込んだ生地から作ったドレスに、製作者であるジュエルの魔力が根源として染み付いている。
この聖女のドレス計画はミクスメーレン共和国の国を挙げた一大プロジェクトであった。
国を救った英雄であり、癒しの聖女、おまけに復興資金の約国家予算並みの額である国債も買ったジュエルに何か恩返しをしたい。
ジュエルは第三者から見れば、なんの見返りも求めない。無垢な慈愛の少女であった。
ジュエルの行動は端から見れば、偽善と思われるかもしれないが、偽善ではないのだ。
なぜなら、私利私欲のためにドレスを作りにきただけなのだから。
そのような七十年前近くの推し活により、作成された。『聖女のドレス』とジュエルは対面した。
2
「このドレスは……」
「クルルゥゥ」
ジュエルが聖女のドレスを手に取る。フェリーチェも自身の素材が使われているドレスを懐かしく思う。
「お婆様が皇后様より、学園の卒業パーティー用にって頂いたドレスよ! 信じられる! あの聖女ジュエル様から、オーダーメイドで一から作って貰ったみたいなのよ。ねぇ、嘘みたいな話よね。お母様もお婆様の形見だからって大切な時にだけ来ていたのよ! ねぇ、マロンも覚えているでしょう! 」
「もちろんでございます。昨日のことのように覚えております。僭越でございますが、私も同じ素材をしようしたメイド服を持っておりますから」
「そうなよね! マロンってば元は、皇后様の従女だっていうじゃないのよ。その時に作ったのがこのドレスなのよ! 凄いでしょジュエル」
ラザアがジュエルにドヤ顔した。
「間違いなく本物でございます。ジュエルも見れば分かりますよね。このドレスの皇后様からフラワー様やエミリア様に対する尊さが」
「はっ……はい」
ジュエルは感激していた。
ジュエルはかつてないほどに胸を打たれ、心震えていた。
聖女のドレスは、素材こそ最高のであるが正直ドレスとしての出来はお粗末なものだった。
当時、十二歳のジュエルがハンドメイドで作った素人に毛が生えたようなドレスであった。
そのような今のジュエル本人にとってはお粗末様なドレスを、少女であった当時は青春の全てを課金したドレスを、推し達は親子三代に渡って大切にしてくれていたのである。
「でもね、このドレス残念だけど専用装備らしくて……私では着ることができないのよ。もしかしたら、私にはその……資格みたいなものがないのかもしれないわね」
「なっ! そんなはずわありませんわ。確かにフラワーお姉さま専用に魔力登録しましたが、エミリア様でも着用できましたから、血縁者ならば問題ないはず! 」
製作者であるジュエルは焦った。ラザアはその姿は誰が見ようと、いや、ジュエルからすれば間違いなくフラワーの孫であり、エミリアの娘である。
『聖女のドレス』はフラワーの娘であるエミリアまでは着用可能であった。専用装備ではあるが、近しい血縁者なら着用は可能なのである。
ラザアを多少なり落ち込ませたことで、ジュエルは何てことをしてしまったんだと、当時の自分を責めた。
ジュエルは全く悪くはないが。
「えっえ、そうなの? ジュエル詳しいわね」
「ラザア様、ジュエルは、その、少なからず、素材集め等を手伝いましたから、ドレスの製作にも関わっていたのですよ」
「キャン、キャン」
「ホウホウ」
「クルルゥゥ」
マロンがフォローする。
動物達もマロンに加勢した。
ちなみにマロンは嘘は言っていない。ジュエルは少なからず、自分で素材を採取してきたのだから。
「あら、そうだったのね。ジュエルって、もしかして、実は貴族だったりする? 皇后様や、マロンと顔見知りだったみたいだし、木人様のお弟子さんなんでしょう」
「えっ、えっ、えっ、その、あのー」
「領主様や、あんまりお嬢ちゃんをいじめないでやっておくれ、知りたがりは悪いことじゃないけど、他人の過去をどうこうするのは、いい女のすることじゃないいよ」
木人が助け船を出す。
「それも、そうもそだわね。困らせるようなこと言って、ごめんなさい。ジュエル、悪気はなかったのよ。許して頂戴」
「そんな、ああ、滅相もございません」
「それにしても、ドレスの件は気になるねぇ。ちょいと、失礼するよ《鑑定・極》」
木人がラザアとドレスを《鑑定》する。
木人はやはりか、と思考した。
「ホウホウ」
梟に擬態しているフォローもだいだいの予想は出来ていた。
ラザアは外見こそ、ウェンリーゼの家系そのものである。見目麗しい姿をしている。
しかし、魔力波形の特徴はボールマン寄りである。
正確には、かつて栄えた魔法大国エリティエール王家の血が強いのだ。
この事実を知っているのは、記録を自身で削除したユーズレスを除いては、今や木人とフォローだけである。
「そうさねぇ、流石に直系でも二世代経つと魔力波形も微妙に変わるからねぇ。何も、領主様に資格がないとかそういう問題ではなさそうだねぇ」
「そう、そうよね。元々、皇太后様がお祖母さまのために一生懸命作って下さったドレスですものね。いくら孫とはいえ、私が着たらバチが当たるわ。それに、これは皇太后様とお祖母さまの大切な思い出の品ですものね。それを形見だからといって着用しようなんて、無礼でした。ありがとうございます。木人様、おかげで諦める踏ん切りがつきましたわ」
ラザアがお腹をさすりながら、少し悲しくも仕方ないと諦める。
「ちょっとお待ちください! 」
しかし、その所作を見逃さなかったジュエルが待ったをかけた。
「お言葉でありますが、きっと皇太后様はそのようなに等、微塵も思ってはいません。きっと、フラワー様も、エミリア様もこのように大切にし貰って嬉しく思っておいででしょう! 」
隠してはいるが、ジュエルは皇太后本人なので間違っていない。
「ありがとうジュエル、気休めでも嬉しいわ。でも、専用装備はよほどのことがない限り所有者の変更は難しいと聞くわ」
「話の途中に失礼します。領主様、もし、よろしければ一つだけ可能性がございます」
マロンがいった。
一同の視線がマロンに向く。
「ああ、もしかしてあそこかい? モノづくりの国、ミクスメーレン共和国にいってみるかいねぇ」
木人がニヤリとジュエルに向かって笑った。
活動報告にもあげましたが、育休中により休載します。キリが悪いところで申し訳ありません。
ふと思ったのですが、夜中のミルクやオムツ交換は冒険者の護衛任務の見張番に近いなと、寝不足で思考が訳が分からなくなってます。
子育てはファンタジーだ。
おやすみなさい。




