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魔法の杖

原案者様からの、リクエストです。閑話ではなく本編扱いですのでよろしくお願いいたします。


小間切れという若干残酷なキーワードあります。

ユフト師はいった

「ナインス、君のその力は自分が主と認めた人の為に使いなさい」


『本機はオトウサンの力になりたいです』

ナインスは、ユースフルシリーズ後期型(九番目の子)ともあって音声が滑らかだ。


「私は確かに君を作った。だが、兵器としてではない。機械は人の幸せのためにあるものだ。ナインス、今の私は君を不幸せのためにしか使うことが出来ない。こんな父を許して欲しい」

ナインスはユフト師の言葉と少し困ったような表情を記録した。


まだ、()()()()が人型機械人形だった頃の記録である。






ヴァリラート歴最後の年 機械厄災戦争


二つの月(月明かりの道しるべ)がナインスを照らす。

『《月雷》』

ナインスの周りの大地と機械人形達が、消し飛ぶ。機械人形達は、部品すら残らない。

『右翼に敵機捕捉、数およそ百』

マザー・インテグラ(ファースト)の補助音声が入る。

『感応《竜巻》』

ナインスは右手を水平に振る。

マザー・インテグラの対象補正により、厄災魔法竜巻は、右翼集団の()に発現した。

百機の機械人形は、そのボディを無慈悲な風によって切り刻まれ、スクラップとなる。

『竜巻の使用により、ナインスの稼働時間六十秒を消費します。ナインスの戦闘継続可能時間は、残り二分三十四秒です』

UFTシリーズ ロットナンバー U―9 〖魔法〗は本来、拠点強襲用機体であり〖敏捷(アギール)〗との運用により一撃離脱をコンセプトに設計された機体だ。

戦闘継続可能時間が五分と拠点()()には向かない。

『左に百』

アナライズ(セカンド)も補助する。

『感応《暴風》』

左手も休まらない。

機械人形達は、風の中を暴れまわるが天災に飲まれる。

「バカな!さっきまで、千機はいたんだぞ!」


ナインスは振るう、魔法を振るう、その活動時間が尽きるまで最愛の父と兄弟達のために…


挿絵(By みてみん)

ナインス・チルドレン

(九番目の子ども(機械神)









数千年後、ウェンリーゼ領浜辺地下一メートル



カツン、カツン、カツン


ナインスは砂の中から自身の【聴覚センサー】の感度を上げて音を拾う。


目覚めてから数百年、幾度となくマザー・インテグラに【アクセス】を試みるが結果はいつも【エラー】だ。


目覚めた場所は、海底であったが数年前に大きな潮の流れによって、この浜にたどり着いた。たどり着いたのはいいが、【エネルギー】が不足しており、【スリープ】モードすら起動出来ずに、意識はあるがほぼ【シャットダウン】の状態であった。

その間に、大きな潮の流れにより積み重ねられた砂や物、生物であったもの等が重なり現状に至る。


カツン、カツン、カツン


この音も、夜になると一定の間隔なっている。

それとともに、呻き声のような声が聞こえる。


ナインスは本機の【エネルギー残量】を確認する。

メーターは、20%を切っている。これでもここ数百年で周囲の魔力をかき集めた結果だ。砂の中という悪条件のせいで【魔力素粒子】が非常に収束が非効率であり、まさに不運としかいいようがない。


ナインスは思考する。

あとどれくらいここにいればいいのだろう






カツン、カツン、カツン


今日で三百と六十五日目の雑音がなる。

「ゴホッ、ゴホッ」

この一年で分かったことがある。

この雑音は、人が何かを何か()に打ちつけている音であること、この人は何か病を患っているのではないかということ…

そして、いつも泣きながら打ちつけているということ


ナインスはいつの間にか、この迷惑な()()に親しみを覚えたということ



六百と九十三日目のこと


「なんでだ!なんで、こんな肉を食わせたんだ!今までずっと俺たちを騙していたのか」


ガキン

「もうやめて」


今日は珍しく、違う人種の音が聞こえる。識別記録を参考にするとおそらく、〖カツンの人〗と男性と女性が何か言い争っているのであろう。

その日の夜は、いつもの雑音の代わりにいつもより長い時間、〖カツンの人〗の泣き声を聴いた。




「ゴホッ、ゴホッ」

今日で七百日を越えた。

一つ分かったことがある。この〖カツンの人〗は何かを患っているわけではなく、何かをを吸っているようだ。

しかし、いつもむせている。

身体にいいものなのだろうか?

〖カツンの人〗は、今日も浜辺で独りで泣く。

今日も雑音は鳴らないことを、機械人形は残念と思考(記録)する。





カツン、カツン、カツン


「兄上、いったい何なんですかこの【モルヒネ】という痛み消しは、ただの毒じゃありませんか!貴方はそうやってまた私達を騙したんですか!」

いつの間にか千日を越えた。



最近ではまた、カツンが聴こえるようになった、そして泣いている時間は倍になった

〖カツン〗が聴けるのは嬉しいが、同時に 〖カツンの人〗が泣くのが悲しかった。


何故か、オトウサンの少し困った顔を思い出した。





カツン、カツン、カツン


「やっと終わった」


二千日と六日で〖カツン〗が終わったようだ。

『………』

カツンが鳴らなくなり、泣き声と、何かをむせる音ももう聴けなくなるのだろうか?

カツンの人はもうここにも来ないのだろうか?


「ガグルルル」

カツンの人じゃない声がする。【聴覚センサー】の感度を最大にして声を識別認識する。


「うわぁぁ」

カツンの人が襲われたようだ。カツンの人はきっと強くないのだろう。


ゴキン

【聴覚センサー】がおそらく足が折れたであろう音を拾う。

ナインスは、自身の【エネルギー残量】を確認する。メーターは21%、数百年さして変わりはない。

ナインスは思考する。

「ナインス、君のその力は自分が主と認めた人の為に使いなさい」

「機械は人の幸せのためにあるものだ」

ユフト師が囁いている。

稼働時間は、【ロスタイム】も入れて120秒程度だ。


『本機は再起動を開始します』

ナインスのブルー色の瞳が光る。







ナインスは砂の中から飛び出した。

その身長は【一メートル】と【六十センチ】とグルドニア女性の平均身長程度だ。

カツンの人と思わしき男性が魔獣である猪のような生き物に遊ばれている。


この熱血漢(ナインス)は、〖カツン(カチン)〗ときた

ナインスの右手がウェンリーゼの浜を振るう。

『必中、《竜巻》』

無慈悲な風が、猪の魔獣を襲う。猪は小間切れ肉(オーバーキル)になった。カツンの人が巻き込まれる。

挿絵(By みてみん)

『…………』

ナインスは急いで、魔法を【キャンセル】する。この熱血漢は、いつも周りが見えなくなるので、いつもはお母さん(インテグラ)お姉さん(アナライズ)のお守りが必要なのだ。


ガゴン


カツンの人は、大きな岩に頭をぶつけた。

〖カツンの人〗が〖ガゴンの人〗になった。

ナインスは急いでガゴンの人の治療を行おうとする。

『本機のエネルギー残量は残り2%以下です。機体を維持するため早急なシャットダウンを推奨します』

人工補助電脳が【アナウンス】を鳴らす。

ガゴンの人は頭から血を流している。人種の定義でいうところの重症だ。

『熱血、《超回復(ハイ・エイド)》』

熱血により超回復の効果を倍増させる。

ガゴンの人の傷が治ってくる。

今まで攻撃魔法しか使用してこなかったナインスは、初めて治癒系統の魔法を使用した。不思議なことに【エネルギー】をほとんど消費しない。きっと、ユフト師がナインスを作った本来の目的はこういうことなのだろうか

ナインスは、自身の両手を温かいと感じた。


『本機のエネルギー残量は残り1%以下です』

『これ以上の稼働は機体にダメージを与えます。本機を強制【シャットダウン】致します』


「おい!ボール大丈夫か!」

「何ですか、この機械は」

人が集まってきた。

前にガキンと殴った人と、眼鏡の人もいる。

仲直りはしたのだろうか?


この〖ガゴンの人〗は〖ボール〗っていう人なのか…

ナインスは、その〖玉の人(ボール)〗を見つめる。心なしかオトウサンに似ている気がする。


この〖玉の人(ボール)〗ともっと一緒に居たいなぁ


『ナインスは〖心のカケラ〗を獲得しました。ナインスの願いを叶える最適解を演算します。マザー・インテグラ及びアナライズは【バックアップ】と記録をお願いします』

右腕に情報が【高速転送】される。自身のコアである【ブラックボックス】もだ。

『ナインス、今までよく頑張りました。よい夢を』

人工補助電脳(もう一人の僕)が別れを告げる。


ガキン、右腕がパージされた。

その右腕は九色(七色)に輝き〖変形〗して一本の杖になった。

先ほどまで自分だった()()()()は、とても満足そうにウェンリーゼの月明かりを浴びていた。




カッ、カッ、カッ


杖の音色が聴こえる。


ナインスは〖玉の人(ボールマン)〗の杖になって数十年が過ぎた。

ナインスは、今日もボールマンを支える。

ボールマンの〖カツン〗の音色はツン(トゲ)が失くなり、玉のように丸みを帯びた優しい音色に変わった。


あれ以来、ナインス(ディック)は魔法を使えなくなったが毎日とても満足している。だって、この〖魔法(ディック)の杖〗は自分で選んだディックの夢なのだから


ディックは今日も夢を見る。

いつか我が『主人』である〖玉の人〗が両方の〖、〗をとって誰かの王になれる日を夢見て


カッ、カッ、カッ

美の女神はその雑音(音色)をとても美しいと聴き入った









「ボール、今です」

ランベルトは、長文詠唱の合間にボールマンへ合図を送る。


「ディック、変形」

デックの杖が輝き、その形を変える。杖の先端には九つの窪みができる。

ボールマンは九個の人工第一級魔石(白金貨千枚)をディックの杖に捧げる。

魔石は杖の先端の窪みから吸い寄せられるように空中に浮遊する。すべての魔石が杖の先端を中心として、等間隔の輪を作る。


「ウェンリーゼを守護せし機械神、インテグラ・アナライズ・◯◯◯・アギール・ジスト・フェンズ・◯◯◯・ツール・ディック、我は求めんその未来を」

ディックの杖が九つの光を帯びる。


「必中・厄災級魔法《竜巻》」

ウェンリーゼの浜辺に無慈悲な風が吹く

ランベルトとモブ達がボールマンの見せ場を作り、ディックの杖が主の花道を飾る。


その()が、竜巻とともに散らないことを、明日からも心地良い〖カッ、カッ、カッ〗が聴けることを、美の女神達はウェンリーゼの機械神(魔法の杖)に強く願う


あれから12年ですか、作者、キャラクター一同、ささやかではありますがご冥福を御祈り申し上げます。

バトルが進まないね!

難しいんだよ!

平和が一番だよ!笑

今日もお読みいただきありがとうございます。


作者の励みや創作意欲向上になりますので、よろしかったらブックマーク、いいね、評価して頂ければ幸いです。

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『機械人形(ゴーレム)は夢をみる~モブ達の救済(海王神祭典 外伝)』 https://ncode.syosetu.com/n1447id/
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