おやっさん
やっぱりモブも見せ場作らないとダメかな?
そろそろ、戦闘やらないとみんなつまらないかね?
いい加減、詠唱考えないとなぁ思いっきり中二っぽいやつがいいですよね。
誰かリクエストありません?笑
機械人形に記録されなかったモブたち
1
「そんで、チキンレースの順番はどうするよ」
クロが皆に問う。
「作戦では皆で一斉に、引き付ける…だったようだが」
市長のギンがいう。額の三本傷がトレードマークだ。
「ボールのあの態度はどうみたって、怪しかっただろうが」
クロの独眼が光る。老いてもなお、その瞳は鋭い。
「まぁ、兄上は我々身内には、昔から隠し事が上手くはないからな」
「最後の最後まで俺たちに死んでこいとは言わなかったな」
クロは些か不満そうだ。彼はいつからか自分の死に場所を探すような生き方をしていた。
「そういうな、上官として領主代行としても一番辛いのは兄上だ。あの方は、涙が枯れてしまっただけで常に泣いているよ。そして、誰よりも痛み傷ついている。それでも死ねないんだよ。ずっと取り憑かれているんだ、後悔という怪物に…この五十年間ずっとな」
ギンの目は海を見る。かつて、ボールマンを分かろうとしなかった自分を責めているようだ。
クロも海を見る。きっとこの広大な海は何でも知っているのだろう。
「シロお前から見てこの作戦はどう思う」
ギンは、この中で一番冷静で客観的な視点で物事を見ることができる付与術士のシロに意見を求める。
「忖度なしでいいか」
「シロ、勿体ぶるな」
相も変わらずクロはせっかちだ。
「ハイケンがいっていた作戦は、要は我々八人が一斉に散らばり蚊蜻蛉で的を絞らせずに目的地点の四キロまで海蛇を誘導することだ」
シロは、皆を見回しながらいう。
「この作戦の利点は、我々の生存率が高いという点だ」
「「「………」」」
「欠点は」
ギンが皆の代わりに聞く。
「一歩間違えば海蛇を岸まで誘導出来ずに全滅する」
「「「………」」」
「ここに死ぬのが怖くて逃げるやつなんざ一人もいねぇぜ」
クロは、シロを皆の代わりに睨む。
「今回は、皆がそれぞれの役割と長所を発揮出来れば十分に作戦は達成可能だろう」
「だったらなんの問題もねぇじゃねか」
武神もクロに賛成だ。古来より、戦闘狂は人の話を聞かないようだ。
「あぁ、俺たち全員、誰が殺られても目的地まで逃げることができればだ」
シロは、クロを睨んだあと再び皆に視線を移す。
「この作戦は仲間が海蛇の爪に裂かれようが、魔術で殺られようが、喰われようが逃げることができるかだ!俺やギン、百歩譲ってヒョーは出来るだろう!
だが、どうだ!
いつまでも、血の気の多いお前には無理だろう、ベンは…あの通り…よく分かっていない」
ベンはいつの間にか、海に向かってションベンをしていた。おじいちゃんは、トイレが近い。
「俺は死ぬのは、怖くねぇ。生粋の〖浜っ子〗だ」
「それが作戦の成功率を下げるんだ、我々がすべきは仲間の屍を越えていくことが出来るかだ」
「………」
「「「………」」」
シロは、目に涙を溜めている。
クロは何も言い返さない。クロももう五十だ、人生の経験もあれば自警団団長として数々の任務をこなしてきた。何よりこの二人はお互いがお互いのことをよく理解しているつもりだ。
どちらも、俺が死のうがお前は生きろと
命の譲り合いをしているのだ。皆、言葉に出さずとも長い年月苦楽を共にした彼らは、お互いのことを自分よりも痛い程分かるのだ。
「皆で一斉に散らばらずに作戦を遂行した場合はどうだ」
ギンが皆を代表して口を開く。
武神も【タイマン】なら負けんぞと、ちょっと【ウザッ】だ。
シロは涙を拭き、目をつむり月を見たあとにいう。その仕草は、月の女神に許しを乞うようだった。
「全員玉砕だろうが、海蛇は確実にボールが仕留めてくれるはずだ」
実にシロらしい非情な回答であった。
皆が息を飲む。
死神が、死の匂いに釣られてる間に大神は、供えられていた【御神酒】にバレないように手を出そうとしている。
「一つ大事なことを聞いてもいいか」
ベンが皆を代表して、シロに聞く。
ベンはションベンしたくせにモジモジしている。
「いつになったら鰭酒はくるんだ。さっきからずっと待ってるんだが…」
大神はビクッとした。自分のことではないようだ。酒飲みに禁酒はきついですよねー
「………」
シロクロコンビは天を仰いだ。
「「「………」」」
他のモブたちの時が止まる。
この静止した空間で、死神だけが微笑み戻っていく。
ベンの一撃は、死の神すらも追い返した。流石はウェンリーゼ最強の守護神だ。
「おやっさん、まだ海蛇退治してないんです…」
クロは、状態異常魔術《混乱》を【レジスト】出来なかった。
シロはため息をつく。シロは辛うじて【レジスト】できたようだ。
「「「ハハハハハッ」」」
モブたちは笑いあった
「なんじゃい、ワシはてっきり酒を飲む順番でケンカしとるんかと思ったぞ。大丈夫じゃい、小童ども、海蛇なんざぁワシがいって懲らしめてきてやるからのう」
ベンがクロとシロの頭を撫でる。
とても、大きくてガサガサしてゴツゴツした武骨な手だ。オマケに爪の間はオイルだろうか、黒くてきっと洗っても落ちないだろう。油にまみれた汚れた手だ。
そして、世界で一番安心できる父のような暖かくて優しい手だ。
ベンにかかれば年が五十の二人も小童らしい。シロクロコンビも照れはするが、まんざらでもないようだ。
【浜っ子】にとってベンの拳骨と頭を撫でられるのはセットだ。
親を亡くした彼らにとってのおやっさんはウェンリーゼ皆の親父なのだから
「「「ハハハハハ」」」
「流石、おやっさんだぜ」
「ベンにかかったらクロもシロも形無しだな」
ギンが皆を代表していう。
「ワシの拳骨は、ちぃとばかし痛いからのう」
【準備運動】を終えた武神がベンの横で力こぶを見せている。
物凄く痛い拳骨なのだろう。
死神はシーランドが少し気の毒に思えてきた。
ベンは願う、たとえ九死に一生であろうとも、可愛い小童たちのためなら、自分が九回死んで小童たちの人生を守ってやりたいと…
またそれは、ここにいる八人全員がおやっさんと同じ気持ちであった。
大神は、この油まみれで【ボケた】おやっさんに敬意を表した。
時が進み、30分後
2
海王神シーランドが皆の犠牲とアーモンドの特攻により、浅瀬のブイの砂浜側に入る。
「今です!術式解放」
ランベルトの掛け声に砂浜の魔導杭と【海上ブイ】が光り輝き二重三重の光の線が六角形の輪を作り、シーランドを閉じ込める。
「ガァァァァシャァァァア」
シーランドは、モブたちの犠牲により付けられた各部位の負傷で怒り狂っている。先ほどから、蒼い瞳が紅くなっている。
ランベルトは、空中に〖夜森の杖〗で杖回しをしながら三つの美しい円を描く。
「水よ、土よ、灰よ、我は練る練る要求する《融合》、《粘度》、複合多重術式【コン・クリート】」
ランベルトは、中級魔術《粘度》を長文詠唱と〖夜森の杖〗の効果範囲増大により、《粘度》を上級広域範囲魔術まで昇華させる。
シーランドに纏わりついていた海水の粘性が一気に高くなる。【コンクリート】のように泥々と粘性が高くなる。その百メートル級全長におよそ数十トンの質量は、蟻地獄にはまった海蛇だ。踠けば踠く程に、コンクリート沼での身動きがとれなくなる。
「ボール、今です!」
グルドニア王国歴509年、ウェンリーゼ領にて
ディックの杖が数千年の時を経て【始動】しようとしている。
モブたちは、閑話扱いで【モブたちの救済】で8話位やる予定です。まずは、白猫の閑話終わらす予定です!
色々考えたんだけど、オッサン連続8話きついですよね笑
ラストまでの構想はあるので、ちょっとペースダウンします。
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