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グルドニア王国歴25年 第三王子タイム

アートレイの子ども達のお話です。


分かりずらかったらスミマセン。


グルドニア王国歴25年


アートレイがいなくなって五年が過ぎた。


グルドニア王国歴20年に第一王子であったレイはエリティエール魔法大国に留学中に魔力が暴走して猿の獣となってしまった。

五年の間、地下牢に閉じ込めておくしかなかった。


勿論、知っているのは王妃であるエミリアと、信頼における六大貴族だけであった。


その問題に対しては、西の森にいるアートレイの元パーティーメンバーであるヒグマ獣人のマダラが相談にのった。

マダラは、レイを森で預かることにした。レイも納得した。だが、皆、分かっていた。恐らく、レイはもう帰ってこないことを……


そうなると、後継者の問題が浮上した。


今や王座は空位である。


有力候補としては、成人である十五歳を迎えようとしていた、第二王子バスターと第三王子タイムが上がった。

二人は双子であった。


第二王子のバスターは、兄であるレイ同様に成績優秀で、剣術の腕も同年代では抜きん出ていた。


第三王子のタイムは、一般教養は苦手であったが魔術の腕は、母であるエミリア顔負けの術士であった。


この二人はお互いに仲の良い兄弟であった。


王太子であった、第一王子レイが何よりも優秀であったために二人は将来的には、六大貴族のどこかに婿入りする予定であった。


しかし、レイが獣になってからは状況が変わった。バスターは、兄を心配しながらも少しずつ、欲が出てきたのか、地盤を固めるかのように貴族たちに取り入った。


「ゲコゲコ」

「クククッ」

その頃から、バスターの近くには、カエルとイタチのような側近が付きまとうようになった。


タイムは、レイの治療法がないかと知識を集めるために、大陸を旅した。


タイムは、旅の途中で《強奪》に目覚めた。父であるアートレイの独自魔法であったが、やはり血統的な要因もあったのだろう。

タイムは、《強奪》を治療に生かせないかと研究した。タイムは、さらなる叡知を求めて旅をした。

タイムは、旅先で物知りな機械人形と出会った。

アナライズ(二番目の子)という機械人形はタイムに知識をくれた。タイムは、アナライズに人種の感情という記録をくれた。

利害が一致した二人はいつしか友となった。


タイムは、《強奪》に加えて《生命置換》を習得した。

《強奪》は対象から奪う魔法に対して

《生命置換》は命や魔力を別に置き換える魔法だった。


タイムは、アナライズとの【シュミレーション】の末に、レイを《強奪》で奪ってから《生命置換》で人種に戻す方法にたどり着いた。


タイムが帰ると国は変わっていた。

いつの間にか、双子の兄であるバスターが国を治めていた。

バスターは森に向けて獣となったレイを魔獣として、討伐隊を組んだ。

タイムは反対した。

しかし、バスターがこういった。

「この国の法で尊き言葉がある。アートレイの望むのままに。今は俺がアートレイ()だ」

バスターはタイムを地下牢に閉じ込めた。


「ゲコゲコ」

「クククッ」

バスターの側近がタイムを笑った。


バスターは戦争をした。

大国であったエリティエール魔法大国が滅んでからは、近隣諸国のパワーバランスは一気に崩れており、血で血を洗う争いが絶えなかった。


ある時にバスターが地下牢にやって来た。

タイムにバスターがこういった。

「もう疲れた」

バスターが倒れた。どうやら、毒を飲んだらしい。しかし、竜殺しの一族血には、毒ごときでは死神は来なかった。


「ゲコゲコ、ダメだゲコゲコ。まだまだ、戦争をやらないと」

「ケジメはとりませんとね。生け贄も足りませんしクククッ」

側近であるカエルとイタチが、バスターを追い詰めていた。


「お前らが! バスターを壊したな! 」

タイムの魔力が溢れた。

タイムは、地下牢から出た。タイムはバスターとの無用な争いにより、グルドニア王国を割るようなことがないように大人しくしていたに過ぎない。


「なかなかの魔力ゲコ」

「ほう、生け贄百人分くらいにはなるんじゃないか」

カエルとイタチの頭から角が出てきた。


「お前達は、その異形なる姿は悪魔だな! 」


タイムの目付きが鋭くなる。


「ゲコゲコ、なかなか物知りゲコゲコ」

「あまり聡いやつは長生きできませんよクククッ」


タイムは戦った。

タイムの実力は父であるアートレイには及ばないものの、賢者といわれるレベルである。

しかし、悪魔二体を相手取ることは難しかった。


「ゲコゲコ」

「クククッ」

カエルとイタチがタイムをオモチャのように扱う。


カクカクカクカクカク


その時、首をカクカクとしながら大猿がタイムを助けた。

両の腕には大きな鎌を持って……


「……レイ兄上? 」

大猿は何もいわなかった。

カクカクカクカクカク

首を傾げながら悪魔に向かって鎌を振るう。


「なんだゲコ」

「なりそこないの猿が! ククッ! 」


悪魔達は戸惑う 。


「元つ月、木更月、弥生、卯の花月」

それは奇跡だったのだろう。

壊れてしまったバスターが、無意識の剣戟を放った。


「ゲコゲコゲコゲコッ! 」

「クククククククククがぁぁぁ! 」

カエルとイタチは、大猿とバスターに切り裂かれた。


「あーあ、この肉体はもうダメ、ゲコゲコ」

「クククッ、また遊ぼうねぇ。王子様方ククククククッ」


「《強奪》」

タイムが不快なるゴミを掃除した。


三兄弟によってグルドニア王国は守られた。


2

「バスター! バスター! しっかりしろ」

タイムがバスターの揺するが反応がほとんどない。廃人同然のバスターが最後に見せた、アートレイ譲りの剣は本当に美しかった。


「ぁぁぁ……」

バスターが大猿を見た。

「……ごめ……なさ……にい……さん」

バスターが逝った。


タイムは泣いた。

大猿であるレイは顔をカクカクさせながら泣いた。


タイムはレイに、人種に戻れるかもしれないと、治療を進めた。

だが、レイは断った。

レイはもはや、言葉を介すこと叶わなかったが断った。

レイが二本の大鎌を持って虚空に二振りした。

それはまるで「奴らはまた来るぞ」とでもいっているかのようだった。


レイはバスターの遺体に祈りを捧げたあとに、タイムを抱き締めた。

タイムはレイの鼓動を感じた。大猿であるレイの毛はフカフカしていた。

「変わらない、レイ兄上は大猿になっても、ずっと、優しいままだ」

タイムは心細かった。ずっと一人でレイを元に戻す方法を求めて旅をした。


旅は手探りだった。

何度、挫折したかは分からない。


カクカクカクカクカク

大猿が優しく、ありがとうと何度も何度も、首を傾けた。


タイムは報われた。


3

タイムは決意した。


母であるエミリアがやって来た。

エミリアはなんとなくだが状況を理解した。


大猿はエミリアを見たあとに、満足だとでもいうように森へ帰っていった。

「待って! レイ! 」

エミリアは叫んだ。母は息子の名前を呼んだ。


バスターの遺体を見たエミリアは、気絶した。ストレスが最高潮に達したのだろう。


母であるエミリアは状況を察したが、第三者が見れば、タイムがバスターを殺したように見える。


アートレイの創ったグルドニア王国が、血で血を争う構図となってしまう。


「バスター、ごめんよ。バスター、本当はこのまま眠らせてあげたいけど……私は悪魔だね。私のことを恨んでもらって構わない……バスター、《強奪》、《生命置換》」

タイムはバスターの遺体を《強奪》して取り込んだ。


ガキン、ゴキン、バキン


「ああああああぁぁぁぁ! 」

タイムの身体が変化する。骨格が変わり新たに形成された。痛みも伴う。タイムは気絶しそうになりながらも、耐えた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

タイムの姿がバスターとなる。


「バスター、私は父とバスターに誓う。絶対に、父の創ったこのグルドニアを守って見せる。どんなことをしようと! カエルとイタチ! 奴等の……何年かかろうが、息の根を止める! 」


タイムは誰にも理解されないであろう。

ヘルモードを選んだ。


事件は穏便にすんだ。

記録には、タイムがバスターを殺そうとして、返り討ちにあった。

側近であるカエルとイタチは巻き添えをくらった。


幸いなことに《強奪》により、バスターの記憶がタイムにも流れた。


そのため、政務には支障がなかった。

誰にもバスターの姿をしたタイムを疑わなかった。


アナライズは、タイムを序列第三位のマスター登録した。

アナライズは王座に変形した。

アナライズはタイムを孤独にしないように、一番近くで相談役となった。

アナライズの声は、タイムにしか聞こえなかった。


タイムはバスターの記憶を可能な限り覗いた。


バスターも、本当は秘密裏にレイを元に戻す薬の作成をカエルとイタチに頼んだところを、かどわかされたようだった。


タイムは悪魔達に対する憎悪が膨れた。


母であるエミリアには、本当のことを話さなかった。

「きっと、夢を見たのでしょう。()()()は死にました」

エミリアにはきっと全てバレていた。しかし、タイムは話さなかった。


業を背負うのは自分だけでよかった。



グルドニア王国歴30年

アートレイが行方不明になり十年が経過した。

国民にはアートレイは、賢き竜との古傷により、闘病の末に崩御したと公表した。


タイムは今日もグルドニアを守っている。

父であるアートレイに代わって。

兄であるバスターに代わって。


カクカクカクカクカク


レイもグルドニアを守っている。

森の奥から大好きなグルドニアを守っている。

いつしかレイは、猿王レイアートと呼ばれるようになった。


グルドニアはずっと、ずっと、三人の兄弟によって守られている。


「ゲコゲコ」

「クククッ」


悪魔達から今日も今日とて……守っている。


王座となったアナライズが、エメラルド色の瞳を点滅させた。


要約すると

第一王子レイは、エリティエールの留学中に人体実験によって、大猿になりました。

猿王レイアートは、第一部の閑話でアーモンドに稽古をつけています。


第二王子バスターは、悪魔達の犠牲になりました。


第三王子タイムは《強奪》、《生命置換》でバスターに成り代わってグルドニアを守っています。


閑章 賢王のタコで、デニッシュの父は《強奪》を繰り返したタイムです。

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『機械人形(ゴーレム)は夢をみる~モブ達の救済(海王神祭典 外伝)』 https://ncode.syosetu.com/n1447id/
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