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グルドニア王国歴20年 アートレイ(雷獣ガーヒュ)

グルドニア王国歴 20年


アートレイとエミリアの子で第一王子であるレイは、エリティエール魔法大国に留学中であった。

エリティエール魔法大国の王とは、アートレイが冒険者の頃から懇意にしていた。

宰相であるフォローは、一時期はアートレイとエミリアに魔術を指導した師のような立場であった。


故に、グルドニア王国の時期国王たるレイを安心して預けた。

しかし、ある日の実験で災いが起きた。


レイの魔力が暴走した。

レイは、自身の感情と魔力を抑えられなかった。レイの身体が獣のようになり、最終的には体長二メートルの大猿となってしまった。



アートレイの怒りがエリティエール魔法大国に向いた。


2

エリティエール魔法国 王宮 玉座の間


「《雷音》」

雷光の後に、爆音が王宮に鳴り響く。

アートレイの《雷音》は王宮の魔法障壁を軽々と突き破り、城であったものが焼けている。


人の焼ける臭いがアートレイの鼻腔をくすぐる。


キャハハハハハハ

キャハハハハハハ

両の手に握られた、双子の騎士の二振りが笑う。


「……つまらん」

全身を血で濡らしたアートレイが、吐き捨てるように言葉を洩らしながら、後ろを振り返る。

アートレイが通った後には、山積みにされた騎士達や、魔術師達の死体が火事で焼かれていた。

美しかった魔法大国は、アートレイの逆鱗に触れ燃えていた。


「小僧が、やはりあの時殺しておけばよかったな」

エリティエール王がアートレイにいう。

「あんたには感謝してるよ。だが、いかんなぁ。あれは、いかんなぁ。息子は泣きながら、獣となってしまった。貴様らのモルモットになってな! 」

アートレイがエリティエール王を睨む。


「ほう、お前のような化け物にも、家族の情があるとは、驚きだな」

エリティエール王がアートレイを見る。アートレイは、剣を握る両の腕が揶揄ではなく獣のような毛皮で覆われ、頭からは山羊のような角が生えていた。


「お前はもう、死ね」

アートレイが絶剣を振り上げる。


「おんぎゃあぁぁぁぁああ」

王に抱かれていた赤子が泣いた。


「ちっ! 」

絶剣は振り下ろされずに、一瞬行き場を無くす。


パリン

その刹那に空間が揺れた。


「王よ! これはいったい何が? 貴様、アートレイか! お前がやったのか? 」

《転移》により、アートレイの目の前にエリティエール宰相である大賢者フォローがやって来た。


「久しぶりだなぁ! お師匠殿、まだ、くたばってなかったとはなぁ。あんまり長生きするもんじゃねぇなぁ」

アートレイがかつての師であるフォローを不敵に笑う。


「貴様! その姿は、剣に魂を喰われたか? いや、賢き竜を喰らった代償か……化け物め」

フォローが見たアートレイは、人種ではなく血を欲する獣に見えた。


「うるせぇジジイだなぁ《雷音》」


バリバリバリバリ

千に近い雷がフォローを襲う。


「ぐううう」

「おんぎゃあぁぁぁぁああ」

王と赤子が《雷音》の余波に怯む。


「《多重魔法障壁》、《復唱》」

フォローが王と赤子を守るように《多重魔法障壁》を発現させた。さらに《復唱》の魔術を使用して魔法障壁を自動で再生させる。


「ハッハッハ! さすが、大賢者様だ! 」

アートレイが嬉しそうに笑う。


「恐ろしいやつじゃ! お前はワシがここで仕留める《獣化変化》」

フォローの身体が隆起し背中からは羽が生えて、顔がフクロウのようになる。

フォローの魔力が急激に跳ね上がった。


「カッカッカ! 人工獣人化計画か! いや、いや、人体実験とは流石だな! うちの息子も【サンプル】として世話になったな! 」

アートレイがフォローを睨む。


「ふん、自らが望んだことだ! 貴様の息子には、器が足らなかった。逆恨みも大概にせい! 王よ! 坊様を連れて御下がり下さい。この怪物はここで仕留めます」

フォローは獣化しても高い精神力で意識を保っていられるようだ。


「おんぎゃあぁぁぁぁああ」


それが合図だった。

フォローは羽を使い、素早く上昇して制空権を支配する。

「《水月》、《獄炎》、《雷音》、《土波》、《氷化粧》」

多重平行術式をフォローが展開した。

《水月》水の月による圧倒的な質量

《獄炎》すべてを燃やし尽くす炎

《雷音》音より速い雷の嵐

《土波》土を隆起させた地形を変える波

《氷化粧》氷の針や刃からは逃げられない


上級殲滅魔術を、五つ同時に発現できるものなどフォロー以外いないであろう。


「死ね! 」

フォローがアートレイに向けて魔術を放つ。


「はぁ、お前も退屈《強奪》、四極! 」

「なっ! 馬鹿な! がふぁぁ!」

アートレイの影から大きな手が発現して、フォローの魔術を喰らった。


キャハハハハハハ、キャハハハハハハ


更には風の刃が二剣から、八つの刃となってフォローを襲った。

「はぁ、はぁ、はぁ、馬鹿な、《魔法障壁》を貫通しただと、皮膚も獣人をベースにした鋼鉄並みの強度を誇る肉体だぞ」

フォローの羽や身体中が、ズタズタに引き裂かれていた。

フォローは自動で《魔法障壁》を発現させたが、アートレイの剣技の前には紙切れ同然であった。


「はぁ、十秒しか持たんか。ご褒美だ。十秒まってやる」

アートレイがフォローを憐れむように笑う。


「フォロー! この子を頼む」

王がすかさず前に出て、フォローに赤子を預ける。

「王よ! 何を」

「坊の首には転移石のペンダントがある。お前は逃げろ! 」

「何を馬鹿なことを! 」

「この子を託せるのはお前だけだ。この子に必要なのは、無能な王ではない。早く行け」


「残り五秒……四……三」

アートレイの【カウントダウン】は止まらない。


「うぉぉぉぉぉ! 」

エリティエール王が博大な魔力を解放して、アートレイに特攻した。


「王よー! ! 」

「あんぎゃぁぁぁぁぁぁ」

フォローが叫ぶが王は止まらない。


「元気ないい泣き声じゃないか」

エリティエール王が微笑んだ。


「せっかちな野郎だ。ちぃ! 面倒だな、全て飲み込め《強奪》」

アートレイから漆黒の影が部屋、城全体を覆う。


「あんぎゃぁぁぁぁぁぁ」

「うぉぉぉぉぉ《転移》」

フォローと赤子は間一髪《転移》した。


「ぐううう」

エリティエール王は闇に飲み込まれた。


「はぁ、退屈だ」

アートレイの身体が更には、獣のようになる。手からは鋭い爪が生え、臀部からは尾が見えた。


アートレイは巡剣と絶剣を王座があった場所に突き刺した。


3

アートレイは、そこから様々ものを壊し、殺した。


アートレイが血に染まる。

そこにはもう人の姿は、なかった。

「ガヒュッ、ガヒュッ、ガヒュッ」

山羊のような、竜のような、狼のような化け物が嗤った。


「ガヒュッ! 」

獣が空を飛んだ。


「ガヒュ、ガヒュ、ガヒュ」

雷が獣の全身に帯電する。底知れぬ魔力が練り上げられる。

「ガヒュュュュュゥゥゥゥゥ! 」

雷を宿した獣がエリティエールという国に突っ込んだ。


ズドーン


その刹那に大陸は地形を変えた。

エリティエール魔法大国があった場所には、大きな大きな穴が空いた。


獣はニタリと嗤った後に、ガヒュッと笑い満足そうに去っていった。


エリティエールの生き残りがこういった。


ガヒュッと不気味に鳴く雷獣が、国を滅ぼしたと……


後にその穴には雨水がたまり湖となった。

人々は、厄災により滅んだ国に女神様が涙をお流しになったのだろうといった。


ガヒュッと笑った、その獣は『雷獣ガーヒュ』と呼ばれた。


それ以降、人種であったアートレイの姿を見たものはいない。


キャハハハハハハ、キャハハハハハハ


双子の騎士の二振りが楽しそうにいつものように笑った。

赤子はボールマンです。

フォローは、ジュエルの肩に停まっているフクロウ(不苦労)です。

第二部、キカイノココロで木人とフォローさんがエリティエール魔法大国について話している描写あります。


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