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9 導かれて

「ラギサキ、大丈夫か! 」

『白猫ちゃん、素敵よぉん! 見直しちゃったわぁん』


「はぁ、はぁ、はぁ、俺が……勝ったのですか」

影骨が消えた後も、ラギサキはまだ興奮状態であった。時間こそ短かったが、相当に精神と体力をすり減らしたのだろう。


影骨からは、盾とロングソードがドロップした。

フェンズがいうには相当な業物のようだ。


ラギサキの切れた片耳は、フェンズが丁寧に保管して四次元にしまった。

地上に帰還すればラザアが治してくれるであろう。

ラギサキは「さっきの影骨を忘れないようにこのままでもいい」と言った。とりあえず、アーモンドが傷口を消毒して包帯で処置した。

フェンズが下級回復薬を勧めたが、ラギサキが勿体無いからと使わなかった。獣人の間では、ただのかすり傷だとのことだ。


「ラギサキ、すまない。私は正直、ラギサキが斬られるかと思った。だが、お前は私が思っているより数段上の強さだった」

『私もよん。びっくりしてブラックボックスが停止しちゃうところだったわぁん』


「……強敵でした。初手で盾を弾けたのが幸いでした。最後の一振は……ションベンチビりそうでした」

「『ぶっ! ハッハッハ』」

『……』

アーモンドとフェンズは思わず吹き出した。

マルチはノーコメントだった


「笑い事じゃないですよ」

ラギサキも何故か嬉しそうだ。

ラギサキは《獣化変化》を解除した。フェンズが、木人から貰っていた体力回復飴を渡す。


三人は二十階層の階段で、野営をした。

ラギサキはとても気を張っていたのだろう。匂いで安全と知るや否や直ぐに寝た。


アーモンドもうとうと寝た。やはり、魔力回復飴だけでは身体の芯に残る疲れは取れなかったのだろう。


『二人ともおやすみなさい』

フェンズが囁いた。



2


二十階層は十階層と同じく一個体で階層主が出現する。


 影骨の大型魔獣で体長は二メートルクラスでバトルハンマーと盾を持った個体だ。いままでは、武器なしの個体が《告解》を発現してきたが主は詠唱してくる。遠距離攻撃はして来ないが中距離でのバトルハンマーでの膂力は凄まじいものがあり、攻撃は盾で防がれたところに影を踏まれて《告解》を発現してくる厄介な階層主である。


3


三人は一晩寝た後に、二十階層に足を踏み入れた。


「なんだい遅かったねぇ」

「キャン、キャン」


『木人様! ホクト! 』


二十階層主部屋の扉には、木人が椅子に座りながら葡萄酒を飲んでた。

ホクトが尻尾を振って三人を迎える。


「木人殿、これはどういうことだ。偽物か魔術による幻覚か」

アーモンドが白橙を抜き警戒する。

「スンスン、ご主人様、この匂いは間違いなく木人殿です」

ラギサキが本物だという。


「警戒させちまってすまないねぇ。ラギサキってたっけか? 前の階層では随分活躍したみたいだねぇ。たいしたもんだよ。将来は、《獣神変化》できるかもねぇ」

『木人様、どうやってここに? 木人様でしたら、ソロでも二十階層位どってことないでしょうけどん』

フェンズが木人なら簡単だろうという。


「いや、何。ちょいと、ズルしたのさ。私としたことが、パンドラの迷宮の管理者権限を持ってたのを、すっかり忘れちまってたよぅ。ヤダヤダ、年は取りたくないねぇ」

「キャン、キャン」

ホクトが教えたのは僕だよとドヤった。


「管理者権限って……木人殿あなたは一体何者なんだ」

アーモンドは未だに警戒を緩めなかった。


「なんだい王子様や、前のこと根に持ってんのかい。安心おし、少なくともウェンリーゼの敵ではないからねぇ。ただの刺激を求める世捨て人さ」


アーモンドとラギサキは、世捨て人なのに刺激を求めるって、無茶苦茶だと思った。


「そんなわけで、昨日からいたんだけど。あんた達、寝ちまったからねぇ。ちょいと酒飲みながら暇潰してたんだよ」

『相変わらずねん。木人様』


「まぁ、迷宮探索に水を差すようで悪いけどさぁ。秘密の部屋までの【エレベーター】があるから、さっさといくよ」

木人が葡萄酒を飲み干した。


「フェンズ」

『なぁに、アーモンドちゃん? 』

「木人殿のような人のことを、古代語で【嵐のような人】というのかな」


『アーモンドちゃん、嵐じゃないわ……暴風よ! 』


フェンズがアーモンドに耳打ちした。



ギィィィィィィ


一行が二十階層主部屋の扉を開けた。

木人がいう【エレベーター】は主部屋の奥にあるとのことだ。


『ビィィィィ、ビィィィィ、予期せぬ事象が発生しました。即時撤退を推奨します』


マルチが【エマージェンシー】を【アナウンス】する。


カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ


「なっ! どうした」

アーモンドの脇にかけていた絶剣が鳴く。


 四方、約四十メートル程度の部屋の中心に、絶剣が導かれるように浮遊する。


キャハハハハハハハハハハハ


絶剣が笑いながら燃える。

これは、生産者であるレツが加えた自動修復機能である。しかし、絶剣は特に傷はない。


「これは一体何が……」

アーモンド達が木人を見る。


「馬鹿な……なんだって、この魔力波形は」

「キャン、キャン」

いつも、人を繰ったような態度の木人が取り乱す。ホクトが鳴く。


キャハハハハハハハハハハハ


絶剣の炎が激しくなり、周りの魔力粒子を喰らっている。


炎からは人影が映る。

ゆっくりと炎が集束していく。


炎からは、ブロンドヘアをなびかせた青い瞳の女性が絶剣を持って現れた。


「……ラ、ラザア? 」

アーモンドはラザアによく似た女性に目を奪われる。


「……インヘリット」

木人が女性の名前を呼んだ。


『ビィー、ビィー、対象の魔力波形を確認しました。データベースに登録がありました。双子の騎士、初代剣帝と一致しました』


マルチが機械的にアナウンスした。







感想と⭐⭐⭐⭐⭐ありがとうございます。筆を折らない励みになります。


今日も読んで頂きありがとうございます。

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