エピローグ 2
1
『ハッハッハ、騙し騙し稼働していたが本機は限界だ。一旦、シャットダウンする』
チルドデクスが少し眠りたいという。
「ピィ、ピィ、ピィ」
フィールアが申し訳なさそうに鳴く。
『まぁ、いいさ。フィールアのおかげで、ユーズにも会えた。悪いことばかりではない。ユーズ、本機がシャットダウンしたら面倒だが秘密の部屋に修理工場がある。そこに、繋いでくれ、いつ再起動となるかは分からないがな……』
『……』
ユーズレスはエメラルド色の瞳を点滅させてた任せてといった。
『デクス、ユフト師はやはり』
『ガード、それは本気が言語としていいものではない。君たちの冒険の報酬だ。ただ、一つ言えるならば、待っている……どんな形であれな』
『そう……ですか』
『会いにいってやってくれ』
『……』
「メエェェ」
ユーズレスとクリッドが補助電脳ガードの代わりに頷く。
『ガード、本機は貴方を応援している。貴方の選択に幸あらんことを、貴方のココロがいい意味でアップグレードできることを』
『デクス、貴方も、私の……気付いて』
『それはまた別のお話だ』
デクスの瞳がゆっくりとまばらに点滅する。シャットダウンが近い。
『ニイ……サン』
『ユーズ、ガード、クリッド、パンドラの迷宮初踏破おめでとう。なあ、ユーズ。本機も夢を見ることが出きるだろうか……夢くらいは、オール兄さん……と……』
チルドデクスがエメラルド色の瞳を点滅させ、シャットダウンした。
2
フィールアは落ちていた一角と自分のたてがみを咥えて、シャットダウンしたデクスの前に置いた。
腹を空かせていたとはいえ、悪かったと思うところがあったのだろう。
クリッドがフィールアーの言葉を訳すと、一角は薬の材料に……たてがみはどんな状況だろうと、何処にいようと一回だけフィールアが背に乗せてくれるそうだ。
神しか背に乗せないフィールアに乗れるとは、かなり貴重なアイテムである。
ちなみに、一角は数千年経てば成長と共にまた生えるから気にしないでとのことだった。
ユーズレスはお礼とお土産も兼ねて、アップルパイを焼いた。石の竈で林檎も長期冷凍していたものだったが、バターの風味とシャクシャクとした果肉の歯ごたえが美味しそうなパイだった。
結局、その場でフィールアが全て食べてしまったので、お土産にはならなかった。
クリッドが隣で、「フィー君ばっかりズルいメエェェ」と騒いでいた。
結局、新たにクリッドの分もパイを焼いた。更に、ミルク氷菓を上に乗せた。迷宮を踏破した戦利品の代わりだ。
「熱いと冷たい、甘酸っぱウメェェェ! マリアージュメエェェ! 大きくなったらアップルパイと結婚するメエェェ! 」
クリッドはどうやら将来、アップルパイと結婚するようだ。父である魔界大帝と、母である時の女神は一大事だ。
「ピィエエェェェェ」
フィールアも黙っていなかったので、クリッドとケンカになったがユーズレスに残りを取り上げられたので、二匹は泣きながら仲直りした。
クリッドは一切れだけアップルパイミルク氷菓のせをフィールアにあげた。
『これは、冷凍林檎ですから本物はもっと美味といわれています』
「メエェェ! 」
「ピィエエェェェェ! 」
二匹は驚愕した。このような最上の更に向こう側があるのかと、ニンゲンって凄いと。
「ピィ、ピィ」
フィールアはアップルパイの欠片を泣く泣く媒介にして《生命讃歌》を発現した。力のほとんどを失っていたので、種を作るだけで精一杯だった。
フィールアはアップルパイのお礼に種をクリッドに渡した。
フィールアは、満腹だと言って天界に帰っていった。
名残惜しそうだが、ペナルティの件で呼ばれているらしい。
ユーズレスは果物がなかったので、簡単なプレーンケーキを焼いた。今度はフィールアも腹が膨れていたので食べなかった。きっとお土産になるだろう。
「ピィ、ピィ、ピィ」
フィールアは少し名残惜しそうにありがとうと天界へ帰っていった。
「メエェェ」
クリッドも名残惜しそうだった。
ガゴン
秘密の部屋への扉が開いた。
「機械人形と悪魔 後編」 完
第五部 「機械の権利 前編」に続く
海王神祭典後のウェンリーゼのお話です。




