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エピローグ 1

ブックマークありがとうございました。

「ヒィァァィィァン」

一角を斬られたフィールアの体躯が縮んでいく。

古代語にある【名馬はことごとく悍馬から生じる】という言葉があるように立派な体躯をしていたフィールアがポニーのように小さく愛らしくなってしまった。


「ピィ、ピィ、ピィ」


「可愛いメエェェ」

ポニーとなったフィールアはなおも闘志を奮い立たせているが、その姿は見るものの心をくすぐる愛らしさだ。


「ピィ、ピィ、ピィ」

フィールアが短い脚でゆっくりと突進してくるが……

「よーし、よしよしよしドゥドゥ」

フィールアの精一杯の突撃も、クリッドに撫でられて終わる。


「ピィエエェェェェン」

フィールアが子馬のように泣いた。どうやら、外見に精神が引っ張られているようだ。


『クリッド、大丈夫ですか? 』

補助電脳ガードが心配して聞く。


「よーし、よしよしドゥドゥ泣かない、泣かない」

クリッドがフィールアをペットのようにあやす。


『おそらく、一角がフィールアの根源たる象徴だったのだろうな。神なる気は感じるが、戦闘力はそこら辺のポニーと大差ないようだ』

チルドデクスも危険はないと判断する。


「ヒィァァィィァン、ピィ、ピィ」

フィールアが地面に落ちた干しいもに気付く。


モグモグモグモグモグモグ

「ピィ、ピィ、ピィ」

フィールアが泣き止んで干しいもを美味しそうに食す。


「ああ、なるほど。そうだったんですね」

クリッドが頷く。


『フィールアの言葉が分かるのですか』

補助電脳ガードは大陸の言語や古代語等全ての言語に精通しているが、流石に馬語は分からない。


「ユーズ兄上、シャチョウ、どうやら、フィー君は……ずっと、ずーっと、お腹が空いていたようです」



2


「ピィ、ピィィァ」

干しいものあまりの美味さにポニーとなったフィールアが非常に喜んでいる。

そこにはもう荒ぶる馬の姿はなかった。


先までの戦闘をしていた空気はそこにない。


ぐうぅー


「お恥ずかしいメエェェ」

腹を空かせているのは馬だけではないようだ。


少しの間、クールダウンをしたユーズレスは腕によりをかけた。

竈を作り、ご飯を炊いた。

焚き火をして夢の中で作ったカレーを作った。トッピングの唐揚げの肉は、剣帝に分けて貰っていた竜の肉である。

「なんだメエェェ! この鼻腔をくすぐる匂いは、お腹が余計にペコペコになるメエェェ」

悪魔ですら虜にするスパイスはやはり魔法の粉なのかも知れない。

実際には、市販のルーであるが……


「メエェェ! 匂いは良いけど、ビジュアルがイマイチだメエェェ!」

クリッドは若干文句を言いながらも匙でカレーを口に運ぶ。


「カラウメェェェ! モグモグモグモグモグモグ、匙が止まらないメエェェ! 」

クリッドの手がまるで魔法にかかったかのように止まらない。


「チーズも欲しいメエェェ! ああぁ、そんなにいっぱい溢れちゃうメエェェ! 溢れチーズだメエェェ! 神様に怒られウメェェェ! 」

『良かったですね。クリッド』

補助電脳ガードが微笑ましくアナウンスする。


『なぁ、こいつ本当に悪魔なのか』

チルドデクスが理性を崩壊しているある意味で野性的な羊を見る。


「ピィ、ピィ、ピィ」

ユーズレスのバックパックから取り出した飼い葉を食べていたフィールアが、クリッドにカレーのおねだりをする。


『ダメェェェ! フィー君は、草を食べるメエェェ! 馬はカレー食ったらお腹壊すメエェェ』

「ピィ、ピィ、ピィ」

『ダメェェェ! これは、私のダメェェェ』


ユーズレスが桶にカレーを盛る。

「ピィ、ピィ、ピィ」

フィールアが喜んで口をつける。

「ヒィァァィィァン! 」

フィールアが叫ぶ。


『クリッド、フィールアは何と? 』

補助電脳ガードがクリッドに通訳を求める。


「戻れないメエェェ」

『???』

「美味すぎて草ばっかり食べてる生活には戻れないメエェェと、言ってるメエェェ」

どうやら天界の馬は雑食のようだ。


『……』

ユーズレスはエメラルド色の瞳を優しく点滅させた。


(だからいったでしょ。きっと喜ぶって……)

ユーズレスのブラックボックスが囁いた気がした。


3


カレーはクリッドとフィールアが仲良く分けた。

デザートには『爆裂黒炭酸ミルク氷菓のせ』を二人で取り合いがら食べていた。

クリッドは羊からいつの間にか山羊の姿に戻っていた。

いつの間に二匹の獣は腹が膨れたら丸くなって体を寄せ合いながら眠っていた。


神なる馬と真なる悪魔にとっては先の戦いがまるで、子供の遊びにしかなかったのだろうか。


『……』

チルドデクスは何か言いたげだったが二匹の獣達の寝顔を見たら、なにも言わなかった。


ユーズレスが機械ビールをチルドデクスに渡した。

何故だが、夢の中のビールより旨かった。


スクラップになった鉄骨竜のパーツは回収しようとしたら、チルドデクスが『集めてこのままにしておこう』と言った。

補助電脳ガードも『オールはもう戦わなくていいのですね』と同意した。

ユーズレスが『デクス兄さんらしくないね』とエメラルド色の瞳を点滅させた。


『きっと、機械ビールにあてられたんだろう』

ユーズレスには、チルドデクスが泣いているように見えた。


「ピィ、ピィ、ピィ」

眠りから目覚めたフィールアが申し訳無さそうに鉄骨竜の残骸の墓に謝った。


『オール兄さんを戦いから解放してくれてありがとう』

チルドデクスがフィールアを撫でながら言った。


チルドデクスはパンドラの迷宮の番人として役目を果たしたのだろう。再起動が必要なため暫くシャットダウンするといった。




あと一話でフィールア編終わる予定です。


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『機械人形(ゴーレム)は夢をみる~モブ達の救済(海王神祭典 外伝)』 https://ncode.syosetu.com/n1447id/
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