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意地悪なドラゴンと狼少年

なんかリーセルス味がでてきたなー

閑話が悲しかったので、気分転換のパートです


昔、昔あるところに一人の名無しがいました

名無しはいいました お腹が空いたと

名無しは食べ物を食べたときがありません

名無しはお腹が空いたと泣きました

名無しは何を食べたらいいのか分からないのです

そんな名無しの泣き声を聴いて、二人の旅人が名無しに食べ物をあげました

名無しは泣きながら初めて食べ物を食べました

そんな名無しをみたまわりの村のみんなも名無しに食べ物をあげました

名無しは泣きました。お腹がいっぱいになって心もお腹いっぱいになったからです

あるとき、いじわるなドラゴンがいました

いじわるなドラゴンは頭がいいドラゴンでした

ドラゴンは毎日毎日、村のみんなにいじわるをしていました

名無しはいいました

ボクがいってやっつけてきてやる

名無しは、頭のいいいじわるなドラゴンのところへいきました

名無しを心配して、頭のいい人と木こりとカラダの大きい人形がついていきました

名無しはうれしくなりました「なかま(親友)」ができたのです

名無しは、ドラゴンにみんなをいじめるのはもうやめてといいました

いじわるな頭のいいドラゴンはいいました

おまえの「なかま」を食べさせてくれればやめてやろうと、ドラゴンはボーッと火をふいてきました

名無しは、ドラゴンとケンカをしました

ドラゴンはやっぱり悪いドラゴンだったのです

名無しはみんなとちからをあわせてドラゴンをやつけました

村にかえった名無しはみんなに「聖なる騎士(ホーリーナイト)」といわれました

名無しははじめて名前をもらいました

名無しはうれしくなりました

名無しはうれしくなってもっとみんなを集めたいと思いました

名無しは人をいっぱい集めました

そして「国」を作りました

いじわるなひとがいない、みんながニコニコしている「国」を作りました

いまもその「国」ではいっぱいのひとがニコニコして暮らしています


「アートレイの冒険」より





「すごいではないか、すごいではないか!私のずっと大きいお祖父様は!なぁ、ホーリーナイト」

幼いアーモンドは興奮している。

「ニャー、ニャー」

ホーリーナイトは、絵本を読むアーモンドの銀髪を寝床代わりにして鳴く。

「リーセルス、リーセルス、ドラゴンは本当にいるのか」

「そうですね、記録では海の竜シーランドも入れれば数体は確認されております」

お目付け役になったばかりのリーセルスはぎこちない礼をとる。

「そうか、そうか、ドラゴンはいるのか」

アーモンドは、ワクワクしている。

「ドラゴンを退治したら、みんなも私のことを誉めてくれて、きっと父上とも会えるのだな!なぁホーリーナイト」

「ニャー、ニャー」

ホーリーナイトは、応援している。

「それには、やはり強くならなくてはいけませんね、竜殺しのパラディンのように」

リーセルスは、子供を諭すようにいう。

「むぅ、確かにその通りだな!よし特訓あるのみだ」

「ニャー」

アーモンドは、絵本を投げ捨て、高級そうな木の棒を振り回す。

「見るのだ、構えるのだ、振るのだ」

「ニャー、ニャー、ニャー」

アーモンドは、振るしか出来ていない。

「やれやれですね」

リーセルスは、絵本を拾いながら主が棒回しに飽きるまで側に控える。









2

リーセルスは目を閉じ回想する。


「私を本当の竜殺し(聖なる騎士)にしてくれ」


アーモンドが高らかにラザアに剣を捧げる。

分かってはいた、こうなることは…

アーモンドは、昔からそういう御方だ、進んで困難を選ぶ御方だ。他人の泥を平気な顔で被れる御方だ。

だが、今回は自分自身で自分のために選択した。

竜を倒しその血を浴びた初代国王アートレイは、神々に認められし聖なる騎士となり国を作った。竜殺しは、わが主の目標だ。彼を捨てたも同然の父親に振り向いてもらうための…


だが、今はきっとそんなことは、どうでもいいのだろう。


なんといっても主には主を愛してくれる家族を手に入れたのだから…ならば私のすることはただひとつ、主が乗った舟が沈まぬように、舵をとることだ。



「こい、【サンタクロース(親衛隊)】」

リーセルスは小声で二つの影を呼ぶ。

「………」

「今回は、黒服だ最優先事項は、主の女神だ」

「………」

影は喋らない、あくまで影は影でしかないのだ。

「今回は、抜かるなよ!私も含めてだが」

影は去った。

『………』

「出来れば内緒にしといて頂けますか」

ユーズレスはエメラルド色の瞳を一回点滅させた。

「ご協力感謝致します」

リーセルスは眼鏡の位置を直してからいう。

案外この二人は馬が合うようだ。


リーセルスは、浜ッ子ではないが昔から()を読み、舵をとるのが非常に上手い。











「副官リーセルス、私の今後の予定はどうなっている」

アーモンドの顔は未だに清々しい…

「領民の避難誘導終了後に、【地下シェルター】最奥の転移の間にて、ラザア様、ユーズ様、アーモンド様を最優先として王都まで《転移》する予定でございます」

リーセルスは、元帥閣下の【プラン】を暴露する。

「それは元帥閣下のご命令か」

「いえ、元帥閣下の正式なご命令は、ウェンリーゼ全領民の避難誘導でございます。これは、アーモンド様にではなく、私に対しての個人的なご命令でございます」

「本任務の遂行状況を報告せよ」

「現時点での避難状況は、九割九分完了しており、東の姫巫女様、並びに従者であるユーズ殿を誘導し次第、任務完了となります」

「つまり、元帥閣下の正式なご命令は、避難誘導完了までということか?リーセルス中尉への個人的な命令以外は…」

「左様でございます」

「リーセルス中尉、軍部での上位者は誰だ」

「ボールマン・ウェンリーゼ元帥閣下でございます」

「そうか、ではこの現場での上位者は誰だ」

「アーモンド大佐であります」

「そうか、では臨機応変な対応として、ここでは私の命令が優勢される訳だな。リーセルス中尉、現時点をもって任務遂行したと判断し、私は元帥閣下とともに海王神シーランド討伐へ向かう、異論はないな」

アーモンドは、ラザアに【ウインク】する。今度こそ決まった最高の【タイミング】だ。


「アーモンド大佐、恐縮ではありますが、現在任務は滞りなく進み、人命の危険や不測の事態が起きたとは判断できません。その場合の命令違反は、規定通り軍規違反となります」

リーセルス中尉はいたって真面目に軍人としての仕事を全うする。


「……え………そっ…そうなのか…」

海と水の騎士は、【マニュアル】や【説明書】等そういうものに滅法相性が悪い。


『………』

「………」

ユーズレスとラザアの視線は滞りなく冷たい。

ユーズレスのエメラルド色の瞳は光さえしない。


リーセルスは、とても悪い顔している。

「ただし、それは軍部の規定でございます」

「え……」

アーモンドは、リーセルスに期待の目を向ける。二人の視線の冷たさにもはや耐えきれず、藁をも掴む思いだ。


「アーモンド大佐は、王宮管轄の懲罰委員会での監視官も兼任されており、軍とは別の系統に属しております。さらにいえば、皇太子()()であり、現在王位継承権一位のアーモンド様には公爵であるウェンリーゼ卿ですら、ご命令することは出来ません」

「なっ…なんと!そうなのか」

アーモンドは、いったいどうやって軍に入隊出来たのだろう。


「あら!でも、貴方ってうちに婿に来たんだから【戸籍】変わってるはずじゃあ?」

呆れに呆れていた東の姫巫女がようやく口を開く。

「はっ!申請は出しておりますが、王宮での書類審査がまだ通っていないのです。ご存知の通り昨年の王都奪還の際に一度、各種機関が凍結され再編成されているので、王都の文官はまさに火の車と申しますか、政務をこなすのが精一杯なようです」

リーセルスはアーモンドに話しても理解されないことは、自己完結している。

従者としては、主の心労を増やさないように配慮した結果だ。

「そのような経緯もありまして、アーモンド様の申請は未だに受理されておらず、所属としては皇太子候補のままなのです。おめでとうございますアーモンド様、貴方様を縛り付けれるものは、国王様か神々か、ラザア様位です」

リーセルスの舌は回る回る、忙しいほどに心地よく回る。その舌は忙し過ぎて火の車だ。 武神はリーセルスの舌が火傷しないか心配だ。


「リーセルス、最初から知っていたな」

「聞かれなかったもので」

リーセルスはとても悪い顔だ。

二人の掛け合いはとても心地よい。

なんとなく、ラザアは羨ましそうだ。

武神はこんな友を欲しいと思う。


「早馬を二頭用意しております。

ウェンリーゼの馬は王宮に負けず劣らず一級品ですよ」

リーセルスはやはり優秀だ。優秀で…行動に味わい(気遣い)が出てきた。

「いってらっしゃいリーセルス、締まらないからサッサとそこのエセ王子連れてって下さる」

『………』

ラザアはリーセルスに最愛の夫を託した。

ユーズレスはエメラルドの瞳を一回点滅させる。

「了解致しました。ウェンリーゼの女神の加護があらんことを」

リーセルスはラザアに初めて臣下の礼をとる。


「ラザア私は!私は!」

「さぁ、早くしないと元帥閣下がお先に海蛇を退治されてしまいます。行きましょうアーモンド()()

リーセルスは、主を猫でも連れていくかのように引っ張っていく。

「ラザア、ラザア! ちょっ、リーセルス引っ張るな」

ラザアは後ろを向いてしまった。



「アーモンド」

ラザアは、再び後ろを向きアーモンドに

「私、【狼少年】は嫌いなんだからね」



ちゃんと帰って来なさいよといった。



魔道機械人形ユーズレス、彼はこの『猿芝居』よりも茶番ともいえる大人のおままごと(リーセルスのイタズラ)を記録した。




パカラ、パカラ、パカラ

馬は走る、軽快に走る、楽器が鳴るかのように走る。


「なぁ、リーセルス、意地悪なドラゴンって知ってるか?」

「アーモンド様が昔よく読んでいた絵本の賢き竜ですね」

「お前ってあの絵本に出てくる、意地悪なドラゴンってお前のことなのではないか」

「賢いはあっていますが、意地悪ではありませんよ」

「お前ってさぁ、友人少ないだろう」

「あぁ、私の半生は既にアーモンド様に捧げておりますので私の友人関係はアーモンド様と同じ程度と重々ご存知かと」

「やはり意地悪なドラゴンではないか」

「はぁ、私がドラゴンでしたら、聖なる騎士に退治されてしまいますよ。何ですか、私を退治したあとに国でもお作りなるおつもりですか」

リーセルスの唇の裏側は相変わらず忙しい。


パカラ、パカラ、パカラ

リーセルスの舌に合わせて馬のリズムが乗ってきた。


「冗談はよせ、お前を退治したら私の国は全く回らん」

リーセルスは目を見開く。全く困った御方(ひとたらし)だ。

「残っても良かったのだぞ」

「死んでも御免ですね、まぁ死んでも友人少ないので対して問題ありませんが」

相変わらず口の中は火の車だ。

不思議と火事にはならない。


パカラ、パカラ、パカラ


リーセルスの意地悪な舌は…先ほどより、ずっと嬉しそうだ。


「絵本の伝説をお作りになるのでしょう」

「バカいうな、こっちには意地悪なドラゴンと、東と西の姫巫女の祝福があるのだぞ、勝てない道理があるまい」

「ついでに、なんちゃって聖騎士もいましたね」

「お前、年々いうことが結構えげつないぞ」

「主をお諌めするのが仕事なもので」


パカラ、パカラ、パカラ

馬の走る音色に美の女神が釣られてやってきた。

その音色に隠れて、ラザアの唄が聴こえる気がする。


「賢き竜でも、お前には口では勝てなそうだな」

「私が口で勝つ前に、倒して下さるのでしょう。竜殺し様は」

リーセルスは本当に楽しそうだ。

アーモンドは臣下に恵まれたと思う。


「リーセルス、必ず勝つぞ」

「仰せのままに」







昔、昔のドラゴンと名無しは仲が悪かった。


だが、新しい時代の意地悪なドラゴン(リーセルス)聖なる騎士(アーモンド)は、とても()仲良し()のようだ。


パカラ、パカラ、パカラ

馬は走る、ドラゴンと騎士を乗せて


ドラゴンと騎士はニコニコしている。


馬と神々もニコニコしている。


二つの月が上ろうとする今宵

美の女神は、二人のハーモニー(友情)を心地よくお聴きになった。









よくよく見直したら、猿としか戦ってない。


バトルパート本編で、ないですね(笑)


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『機械人形(ゴーレム)は夢をみる~モブ達の救済(海王神祭典 外伝)』 https://ncode.syosetu.com/n1447id/
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