3 ユーズレス
1
「ヒィィィィン」
フィールアの前に魔法陣が出現する。
ダン、ダン
フィールアが石畳に地団駄瞬間に、石畳より植物の蔓が出現してユーズレス目掛けて伸びる。
『なっ! これは古代魔法! 《演算》』
『《補助》、こちらでも《演算》処理する』
ユーズレスは姿勢制御を保護者達に託し、伸びる蔓を避ける。
「ブルブルブルブルブル」
ダン、ダン、ダン、
フィールアは更に追加で蔓を発現する。先ほど避けた蔓も生き物のようにユーズレスを追尾する。
『テンス! これでは後手に回ってジリ貧です』
『……』
ユーズレスは赤色の瞳を三回点滅させた。
ユーズレスはバックパックより大鎌を取り出す。
〖死神の鎌〗
〖種類〗 大鎌 呪いの武器
〖効果とストーリー〗
かつて処刑人が幾重もの罪人を処刑した大鎌。効果としてこの大鎌により傷を負った場合は回復系統の魔法・魔術は効果を成さない。
『《敏捷性》、《器用》、《魔法抵抗》』
ユーズレスが保護者達の《補助》を受けて大鎌を振るう。
ザシュ、ザシュ、ザシュ
魔法の蔓は大鎌によって草を刈るように刈られた。
「ヒィィィィン」
フィールアの嘶きが轟く。
ニュル、ニュル、ニュル、
死神の鎌によって刈られた蔓が再生した。
『再生不可の呪いの大鎌ですよ』
補助電脳ガードが驚愕した。
『ビィー、恐らく、この蔓は魔術ではなく、神々の魔法なのだろう。根源たるものの格が上のものには死神の大鎌の効果も無意味なのだろう』
チルドデスクが冷静に解析する。
ビュン、ビュン、ビュン
フィールアが前脚で空を蹴り《壁蹄》を放つ。無属性の衝撃波がユーズレスを襲う。《演算》、《解析》の結果ではその威力は一撃でユーズレスの装甲を破壊する攻撃だ。
ニュル、ニュル、ニュル
蔓の一つがユーズレスの大鎌に絡みついた。
『……! 』
ユーズレスが大鎌を手放し蔓を避ける。ジリジリと追い詰められている。
『テンス! 』
『ユーズ、一旦距離をとるんだ』
保護者二人が距離を取るように指令を出す。確かに現状では最適解だ。
現状においては……
(このままじゃダメだ)
ユーズレスが今の状況を打破しなければと思考した。
キュイィィィィィン
冷却ジェネレーターを最大稼働させる。
『《魔法》、《魔法》、《魔法》、《魔法》』
それはユーズレスのブラックボックスが囁いたのだろうか、それとも超大器晩成型による進化だったのだろうか。
ユーズレスは、コマンドを複合するのではなく、同一のコマンドを多重発現した。
『『なっ! 』』
これには、補助電脳ガードとチルドデクスも驚いた。
ユーズレスは他のコマンドを複数同時発現したことはあるが、同じコマンドを重複発現したことはなかった。しかも、全て《魔法・極》である。
『神殺し(グングニル)』
ユーズレスは赤色の瞳を何度も点滅させた。
バチバチバチバチバチバチ
ユーズレスの両腕がオーバーヒート寸前である。
補助電脳ガードとチルドデクスが仕方なしと、情報処理と冷却の効率化を図る。
(これで決める)
ユーズレスは両腕を合わせた。ユーズレスから部屋を覆うほどの特大の赤い魔法の矢がフィールアに向けて放たれた。
2
ユーズレスから部屋を覆うような赤い光の矢が放たれた。
「ヒィィィィン、ブルブルブルブルブル」
フィールアは魔法で発現した蔦を前方に集結させた。
さらには、身体を震わせながら多重魔法障壁を発現した。先のユーズレスの一撃も防いだ障壁である。フィールアは思考した。地上の攻撃であれば、これで防げると。この防御を敗れるのは、神か悪魔以外は数千年でいなかったのだから……
ゴゴゴゴゴゴゴッ
特大の光の矢が迫る。速度は決して早くはない。
ジュワッ
蔦が溶かされて再生が出来なかった。
「ヒィィィィン! 」
フィールアは驚愕した。神なる魔法である《生命讃歌》は大地の恵みを促進させ意のままに操る魔法である。フィールアは実在する全ての植物を自身の魔力を土台として再現可能で、欠点としては核がない魔力で創った植物は『事象の改変』のため世界の修正力が働き、約十分程度で消滅してしまうことである。豊穣の司る神馬フィールアならではの独自魔法であった。格としては最上位の魔法が地上の機械人形の魔法に飲み込まれたのである。
ゴゴゴゴゴゴゴッ
ゆっくりと光の矢がフィールアに迫る。
パリン、パリン、パリン、パリン、
フィールアの多重魔法障壁が薄いガラスでも割るかのように破壊されていく。
ゴゴゴゴゴゴゴッ
「ヒィィィィン! 」
ドッガーン
フィールアがユーズレスの赤い光の矢に包まれた。
部屋一面に赤い閃光が弾けた。
明けましておめでとうございます。
ゆっくり更新していきます。




