プロローグ
機械と悪魔 中編のプロローグからの続きです。
クリッドが地上の嗜好品を皆に振る舞い、ガチャのプレゼンテーションを行うところからです。
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魔界晩餐会 ガチャの資料
「このガチャが、悪魔遊戯に代わるとな……ゲフゥ、失礼した」
クリッドの父である魔界大帝が爆裂黒炭酸を飲みながらいった。どうやら、この黒い至高の飲み物をお気に召したようだ。
「いえいえ、お気になさらずに生理現象なるもののようですから、美味なるものを味わう対価でございます。お手元の資料とこちらの映像を持って説明させて頂きます。ああ、遠慮せずに濃いぃミルク氷菓もお飲みください」
クリッドの許しを得てそこら中で、悪魔たちによるゲップと「ウンメェェェェ」の叫びがこだまする。
「まずは、百聞は一見に如かずですからお見せしましょう」
クリッドは燕尾服の懐から一枚のカードを取り出す。そして、微量の魔力をカードに通す。カードが光り輝き実態を伴う。
「ギィィィ」
皆の前には魔猿が出現した。
「ほう、これは、使い魔か」
魔界大帝が濃いぃミルク氷菓を飲みながらいう。どうやらこちらもお気に召したようだ。
「十位階中の一番下の十位階の魔獣です。私の微量の魔力と精神力で召喚しました」
「精神力だと……」
「ええ、初めは魔力だけで召喚するように作ったのですが、それでは生まれで不公平があるので、精神力、集中力とでもいいましょうか。召喚時は、精神力をベースにしています」
「なるほど、確かに感じる魔力は召喚者由来でなくその使い魔のものだな。んッ! 待てよ、今、創ったといったな」
「ええ、この魔猿は私が創りました。なので、生きていれば再びカードに収納可能ですし魔力と精神力は必要ですが随時、召喚しておくことも可能です。実際にお見せしましょう」
クリッドがテーブルに中型の魔石とカードを置く。
「《強奪》……」
クリッドの手から黒い影が伸びて魔石を飲み込む。
その時、魔界大帝と古くからの高位悪魔は恐怖した。クリッドは幼き頃に《強奪》が暴走してしまい城ごと少なくない悪魔を飲み込んだことがあったからだ。
「皆さま、ご心配なくそれなりに扱えるようになりましたので、ではここが本番です。……《生命置換》」
クリッドはカードに何かを流し込む。カードが光る。
「出来立てのほやほやです。中級の魔石を使用したので第七位階程度の魔獣が召喚できるはずです」
クリッドが魔界大帝にカードを渡す。
魔界大帝は恐る恐るカードを取る。
「召喚と念じてみてください」
ゴクリ
魔界大帝は喉を鳴らして緊張したようにカードに魔力を注いだ。カードが光る。
「ブギィィィ」
カードから魔猪が召喚された。
「なんと、これは誰でも召喚できるのか……なっ! 」
魔界大帝は集中を解いた瞬間に魔猪がカードに戻る。
「精神力が必要ですから集中が切れるとカードに戻ります。戦闘をさせるときはなおのことですよ」
「これは、一番強いのでは召喚も難しいのではないか」
「そうですね。だから良いのですよ。生まれながらの魔力の格差がないように皆が平等に楽しめます」
クリッドが一枚のカードを取り出す。カードが光り、機械の竜が召喚される。
「「「オオオオオッ! 」」」
皆が声を上げる。
「これは、鉄骨竜といって地上でも最強クラスのゴーレムです。位階は第三位階~第二位階に成りえるポテンシャルがあります」
皆が鉄骨竜を見る。全身が鋼で出来た竜から感じられる魔力や風格は、そこらへんの中位悪魔と同格かそれを凌駕する。
会場の悪魔たちはカードに興味津々だ。
一部の高位悪魔は恐怖を感じた。これだけの使い魔たる存在を当然のように使役して、まるで息でもするようにその場で創ったクリッドは既に神に近しい存在だ。
「これを、皆様に初回のみお配りしようと思います。ランダムのクジのようなものですので、良い引きを願っております」
クリッドがニヤリと笑った。
魔界の神々と悪魔の秩序が崩れようとしている。
次回からフィールア戦始まります。
今日も読んで頂きありがとうございました。




