イキルシルシ
今日は更新出来ました。
いつもお読み頂きありがとうございます。
1
「ラザア、君が好きだ、私と結婚して欲しい」
アーモンドは、いってやった。人生で最高の【タイミング】だ。
アーモンドは、時の女神に感謝した。
次の瞬間
「ボッぶぇぇぇーーッー」
アーモンドの左頬に強烈な衝撃が走る。
アーモンドは、右に転がる。必殺〖肉車輪〗は時を経ても健在である。
「はぁ、何が今さら結婚してくれですって!ふざけてんの!こっちはあんたの子供お腹にいるんですけどー、あんた責任とるの当たり前でしょうが!」
ラザアはさらに、アーモンドを足蹴にする。
【ラッシュ】【ラッシュ】【ラッシュ】
ラザアの追撃は止まらない。アーモンドの【ダウン】などお構い無しだ。
武神は【カウント】をとるが意味がない、【タオル】も投げるがまるで意味がない。
『………』
「………」
ユーズレスとリーセルスも至極全うな答えだと思う。
「ちっ違う、違うんだ!ラザア落ち着け」
愛を囁いたアーモンドは、浮気の冤罪を裁かれているようだ。
「はぁー何が違うのよ!本当あんたっていっつもいっつもよく分かんない奴ね!いきなり、ユーズに決闘しかけるわ、獣人のお姫様と婚約するわ、皇太子になってるわ、太ったり痩せたり繰り返すわ、おまけにこっちに来て半年も経つのにプロポーズの一言もないわ、王族っていったいどんな教育うけてるわけ!」
『………』
「………」
改めて聞くと、とんでもない奴だと二人は思う。
「ラザア、ラザア、頼む、頼むから私の話しを聞いてくれ」
アーモンドは、古の奥義【土下座】を発現した。
雪国での特訓の成果を遺憾無く発揮している。
古の神々さえもお許しになるその【土下座】は、月の女神の化身に届くのか………
アーモンドは、目をつむり恐る恐る顔をあげた。
アーモンドの唇に優しい感触が触れる。
月の女神の祝福だ。
『………』
「おや、おや」
ユーズレスの代わりに、リーセルスが合いの手を入れる。
天上の月と時の女神が微笑んでいる。
海と水の女神も釣られてやってきた。
天上の神々は黄色い声援で盛り上がっている。
なにあともあれ、アーモンドの願いを神々は聴き入れたようだ。
「いかないでよ……でも、行くんでしょう」
ラザアはそっと祝福を離す。
古来より女神の祝福は一瞬と相場が決まっている。
「すまないな、これも私の選んだ道だ」
「貴方は昔からそう、その真っ直ぐな瞳で、いつもみんなの【アンラッキー】を背負ってく、いつも何でもないような顔して本当に【裸の王子様】よ」
「そんな道化を許して欲しい」
アーモンドは、そっと我が子に触れる
「止められないよ…もう…決めたんでしょう」
アーモンドはラザアを、ラザアはアーモンドを抱きしめる。
「いつもみたいに帰って来るんでしょう」
ラザアの手に力が入る。
「私の帰る場所は君たちの隣だと決まっている。これからもずっと…貴方の涙を拭かせて欲しい。
それに【婚約指輪】もまだ渡していないしな」
アーモンドは、女神に跪拝する。
「ラザア・ウェンリーゼ、東の姫巫女よ、私の剣を捧げたい」
一呼吸置き
「そして君の願いを叶えたい、私を本当のパラディンにしてくれ」
2
「聖なる騎士、〖銀狼〗汝は我に何を捧げるか」
東の姫巫女は厳かに問う。
「我が心を、剣を捧げたいと存じます」
アーモンドは刀を捧げる。
「〖銀狼〗よ、汝は信ずるものはあるか」
「地図も無いのに、貴方と巡り逢えた奇跡を下さった運命神に、我が主神である土の神と西の姫巫女の涙に」
アーモンドの〖猫啼のブーツ〗が鳴いている。三匹とも今日も元気だ。
「それは善きかな、我は海と水を司りし巫女、汝に海と水の女神の祝福を贈ろう」
東の姫巫女は、穴の空いた【柄杓】を取り、アーモンドと刀に人種には視認出来ない想いをかける。
「海と水の騎士アーモンドよ、汝にこのマントを贈ろう」
東の姫巫女は、ユーズレスより〖水の毛皮〗を受けとる。
「このマントは、代々巫女に仕えし騎士が受け継ぐもの、アーモンドよ。汝はこの地に愛された」
アーモンドは、マントを受け取った。東の姫巫女公認の浜ッ子になった。
「汝、その刀とマントに何を誓う」
アーモンドは、東の姫巫女を見上げる。
「自分自身の信ずるものに、我が覇道と愛しき人の願いを遮るものを貫く刀となりましょう。ウェンリーゼの宝を守りましょう」
ラザアとアーモンドは、熱も無いのに頬が熱かった。
二人は、ウェンリーゼのすべての風を感じた。
二人とお腹の愛しき子は、〖生きる印〗を手に入れた。
アーモンドは、ラザアの左薬指のまだはまっていない指輪に優しく口付けをした。
グルドニア歴509年
東の姫巫女に愛されし未完のパラディンが誕生する。
魔道機械人形ユーズレスは、騎士の誓いと東の姫巫女の涙を記録した。
海と水の女神の祝福は、同属性の眷属にはあまり意味がないので、気が気でない。
神々が未完のパラディンを応援したがっている。
だが、アーモンドが〖アンラッキー〗なのは、いつものことだ。
彼の横顔はいつにも増してとても清々しかった…
やっぱり喜劇は正義ですよね。
騎士の誓いは自分なりの解釈なので、ご勘弁を多分色々間違ってるんでしょうけど
東の姫巫女VS西の姫巫女 対決したいので次はちょっと早いですが閑話予定です。
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