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閑話 人魚の涙 後編

残虐な描写あります。

「ガルルのくせに調子に乗りやがって! 」

「ガージャ、お前の手を煩わせるまでもねぇ」

「人魚と一緒にゴミみたいに扱ってやるよ」


白猫獣人や鳥獣人、象獣人達がガルルに襲い掛かる。速さのある白猫に、制空権の鳥、膂力の象と三者三様の強者たちだ。


「あびあばばばぁぁあ」

ガルルは、舌を出しながら楽しそうに壊れている。

ガルルが腕をふった。

その風圧が飛翔しようとした鳥獣人にあたる。

「なっ! 」

鳥獣人は機先を制され、ガルルが体勢を低くして四肢に力を込める。隆起した筋肉は収縮しバネのようにしなやかに四足で地面を蹴った。


ガブリ


「がぁぁぁぁぁあ、俺の羽がぁぁ」

「あびあばばばぁぁあ、ああああ、不味い、不味い、鳥肉は不味いんだよぅぅぅぅう」

ガルルが鳥獣人の羽を食いちぎる。

蹴った瞬間に距離は失くなっていた。見るものが見れば《転移》のようであった。


『ガルル、後ろだ』

「ああん」

アギールが警告してガルルは面倒そうに声を出す。

「わざわざ来るとはバカな犬だ! 潰してやるー! 」

ガルルの上には、象獣人が一トン近い体重で踏み潰そうとしている。


ガシッ!


「なっ! 」

ガルルは左手でまるで投げられた玉をつかむかのように象獣人の足裏を防ぐ。


ボリボリボリボリ


「不味い、不味い、不味いまっじぃぃぃぃ」

ガルルは不味いといいながらも、羽を貪る。象獣人の攻撃などまるで意にかえさない。

「なにを遊んでるんだ! 」

「俺の羽ー! 」

白猫獣人と鳥獣人がガルルに迫る。


「がああああ、バカな! どうして潰れないんだ! がひゃぁ」


象獣人が一トンの重みに加えて下に向かって、力を加えるがガルルの左手はピクリとも動かない。

ガルルが、羽の骨を吐き出す。本当に不味いようだ。

ガルルは左手を振ると横に象獣人はバランスを崩した。


そのまま、象獣人はガルルに長い鼻を掴まれてガルルは象獣人を円を描くように振り回す。

「ぐわぁぁぁ、一トンはある俺の体重だぞ」


「あびばらばらははぁ、回れ回れ回れ回れ回れ」

ガルルが象獣人を武器のように使い、迫り来る白猫獣人と鳥獣人に叩きつける。


「「「がふぅ」」」


三人はぶつかり、叩きつけられた衝撃で全身の骨が砕けた。もはや戦闘不能である。

「はっしゃぁー」

だが、ガルルにそのような道理は通じない。

ガルルは象獣人に馬乗りになり、左右の象牙を掴んだ。


ギリギリギリギリギリギリ


ガルルの万力のような握力で象牙にヒビが入る。

「待っ! 待て! 悪かった悪かった! 止めてくれー! ああぁぁぁぁあ」


バキバキ


左右の象牙が折られ、象獣人は気絶した。

「「あぎゃぁぁ」」

ガルルは左右の象牙の先端を、動かなくなった白猫獣人と鳥獣人の肩に突き立てた。


「あびばらばらはひ、あそあそあそ遊んで遊んであびあばばばぁぁあ」


三体の玩具は壊れた。


ガルルの神経は正常に壊れていた。


「かわんねぇなあ、化け物が」

ガージャが苦笑いしながら過去の恐怖を思い出す。

かつて、ガルルが今のように内なる怪物を目覚めさせたことを。

百近くの人種の騎士団を壊滅させて、血の海を作り、現在の戦争の原因を作った怪物のことを。

何も出来ずに、血に染まったガルルを見てションベンを漏らした日のことを。


ガージャの強さはガルルの恐怖を振り払うための、かつての情けない自分を殺すための強さだった。


「あん時の俺とは違うぞ! ギャース、ギャース、獣化変化! 」


ガージャも『獣化変化』した。


ガージャの全身の毛が逆立ち筋肉が隆起する。


「獣化できるのはお前だけじゃ、あぶあぶぶぁ、ガビュゥ」


ガージャが一瞬目を離したスキに、ガルルは最速最短で距離を縮めガージャの頭を掴む。


「犬! 犬! 犬! あびあばばばぁぁあ」

ガルルは右手でガージャを玩具のように振り回す。ガージャは地面に顔を付けられながら、引き回しのようにされた。

悲しいことに狼獣人の命ともいわれる牙が数本折れた。


「がふぅ、ガルル! 調子にのるなよ! 」

ガージャは引きずられながらも、身体をバネのようにして脚を地面につけて、跳躍するようにしてガルルから距離を取った。


「あびばらばらはひ」

ガルルは玩具が離れて悲しそうである。


ガージャが体勢を低くして脚に力を込める。

牙を折られた今のガージャ最大の武器は爪である。爪牙が鈍く光る。

「死ねぇ! イカレやろう! 」

ガージャは自慢の脚で最大最速するないなや、右手の爪牙をガルルに向けて突き刺そうとする。その速度たるや光の矢のようだ。


ザシュ


鮮血が舞った。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」


「あびびびぁばぁぁぁ」


ガージャの右手がガルルの爪牙によって切断された。

ガルルは楽しそうに嗤った。ガルルの狂気は終わらない。

ガルルは、すかさずガージャの両脚の腱を爪牙で斬りつけた。

「ぎゃぁは、がはぁ」

ガージャが膝をつき痛みに支配される。ガージャは既に戦意喪失している。


ガルルがカクカクと首を揺らしながら、楽しそうにガージャの絶望する顔を覗き込む。


「がじゃ、がじゃ、がじゃ、がじゃあぶっしゃーハッハッハばっはぁ」

ガルルが満足そうに嗤いながら残虐な笑みを浮かべる。


「やめろ! お願いだぁもう止めてくれー」

ガージャはお漏らしをした。最早、そこには次期獣王といわれた戦士の姿はない。

ただの命乞いをするションベン漏らしの犬だった。


にへらぁ


ガルルは「ダメだよぅ」とでもいうように右手を上げた。まだまだお楽しみはこれからだとでもいうように……



『止めろ! ガルル! 《敏捷》』

アギールがガルルに突っ込む。


二人は地面に転がる。


『ガルル! ダメだ! 兄弟なんだ! 血の通った兄弟なんだぞ! これをやったらお前は本当にケダモノになってしまう。戻れなくなるぞ』

「アギル、アギル、アギル、アギル」


『そうだ! ガルル、アギールだ! お前の友達だ』

アギールの捨て身がガルルの心に扉を開こうとしている。


たが……


「怪物だぁ! もう、もう、みんなやられちまう」

錯乱したガージャが辛うじて動く左手で、懐にある魔笛を吹いた。


ピュー、ピュー


「この音は魔笛! あなた自分が何をしたのか分かってるの」

傷ついたミーシャの顔色がさらに悪くなる。


「もうダメだ! もうダメだ! 」

錯乱したガージャは恐怖により自分が何をしたのか理解出来ない。


少しの静寂の後に……


ドドドドドドドド


「「「ギィィィィィ」」」


地鳴りと共に、魔獣の鳴き声が聞こえる。


『魔笛』

それは不幸を呼び寄せる笛。

希に幸せを呼び寄せる笛である。

ただし、幸せは滅多にやってこない。


ドドドドドドドドドドドド


魔獣大行進が獣人連合国を飲み込もうとしている。


今日も読んで頂きありがとうございます。


作者の悪いクセで『後半』と書いたくせに終わりませんでした 笑

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