賢き竜の心臓(限りなく不吉な魔石)
久しぶりに、オッサンパートです。
何だかんだ頭が回りませんね。
〖地震〗というキーワードがあります。
 
会話パートの繋ぎなのでちょっと切れが悪いです。
 
1
「三男坊君とアルは何だかんだいいコンビになるんじゃないですか、ボールはだいぶ警戒しているようですが」
ランベルトは、眼鏡の位置を直し再びペン回しを始めた。
「本人は、自覚してはいないが父親によく似ている。欲しいものはどんな手段を使ってでも手に入れる、あれはアートレイの血だ」
ボールマンは、物思いにふける。
「だから、アルを残すのですね」
「今までは、悪く染まらなかったが、今後は分からん、アルのような真っ直ぐな背中を見ていれば、婿殿はこのままでいられるだろう。ラザアにとっての最愛の夫であり、ウェンリーゼの領主代行としてな」
「心は既に決まっていると、確かに我々の背中は見せるべきではありませんね。意地の悪い姑を持つと三男坊君も苦労しますね」
「ふっ!それに保険の部分もあるさ、最終的にはラザアとユーズがいればウェンリーゼは【復興】できる。優先順位で言えば、最重要がユーズ、時点でラザアとお腹の子だ。
最終的には、ウェンリーゼを一時的に捨てることになるかもしれないが、後の孫やユーズ、婿殿が何とかしてくれるだろう。そのために、王室から血を受け入れる覚悟をしたのだ」
「まさかこんなに早く海王神がくるとは思いませんでしたからね、意図的なものを感じるのは私の思い過ごしでしょうか」
「婿殿の線は消えたとして、王宮も今は我が領を取り込む体力はない。だか、如何せん確証はもてないところだ」
「「「………」」」
モブ達には、難しすぎて会話についていけない。神々は飽きてきた。
「新王になってまだ一年ですし、元々の評判も良くはありませんでしたからね。誰も〖賭け狂い〗が玉座に就くとは思っていなかったでしょうね…あなた以外は」
「あやつは、本当に勝てない賭けはしないタチだからな。正直、今回は私も読みきれないさ」
「「「……」」」
モブ達は眠くなってきた。
「だか、今回はやるしかないだろう、後手に回ることが悪いことばかりではない。ハイケン」
「了解致しました。優先順位上位お三方は、《転移》によって王宮に避難して頂きます。計画の一部を報告したことを終わります」
「《転移》? シェルターの奥にある儀式魔方陣ですか?ですが、あれは一級人工魔石を二桁使用しても稼働は無理だったはずでは」
ランベルトのペン回しが再び加速する。
皆の視線は、ペンの軌跡を追う。
「これを使う、ハイケン」
 
ゴトッ…
ハイケンは直径二十センチ大のどこか刺々しい魔石を円卓に置く。
「限りなく透明に近い玉虫色だ」
 
 
円卓に心臓のような鈍い鼓動がする。
決して世に出してはいけない、代物だ。
2
ボールマン以外の皆が玉虫色の魔石から目が離せない。
「これが伝説の〖神の卵〗、〖悪魔の目玉〗、〖建国王の心臓〗といわれている魔石ですか」
ランベルトのペンが宙を舞いクロの鼻に刺さる、まるで矢だ。
「「「……」」」
モブ達は、動けない。
「王族が血眼で探している代物さ」
「ちょっと不味くないですか」
ランベルトはペンが翔んだことにすら気付かず、指を動かす。指が止まる気配はない。
「不味いも何もユーズからの貰い物だからな。昔に賢き竜でも退治したのかもしれないな。ユーズは絶対に使うなといっていたが」
「貴方って人は……これ一つで下手したら国が買えますよ、よく魅入られませんでしたね」
ランベルトの指がようやく止まった。
「ウェンリーゼ以外に興味はない、それに我等の姫に比べればただの石ころだ」
ボールマンは、多少名残惜しそうだ。だか、その目は何処までも澄んで見える。
「「「ちげえねぇ」」」
モブ達も同意した。
「それもそうですね、お嬢の魅了と比べれば確かにただの石ころですね」
ランベルトはやっと調子を取り戻した。
  
「ハイケン」
「了解致しました。この皆様がおっしゃる石ころの魔力を使用しても神代魔法《転移》を王宮まで使用できるのは、二回であると推測します。情報の一部の報告を終わります」
「ウェンリーゼの一族は、代々魔を払う巫女の一族だ、魔石に魅了されることはない。極端な話、ラザア以外にあの魔石は使えないのさ」
「使えなければ価値がないなら、使ってしまえば分からないと」
「何より、現王はああ見えて私以上に身内に甘い。ましてや、自分の孫がいるのだ。存外には扱えないし魔石にしても箝口令が敷かれるだろう」
「どっちにしろお嬢たちに実害はないと」
「ダイスの目がどちらに出てもなるようになるさ、それにユーズがいる。やつは、ウェンリーゼ以外の血筋を主として認めない。あれは、王宮には過ぎたものだ」
「我々にもですがね、王宮も完全には気付いてはいないと思いますが、お嬢と御子を三男坊君がどこまで守れるかですかね」
「おそらくあちらには〖ブレーン〗がいる。何かしらの取り引きをしたんだろう。現王にしては些か、力業が過ぎるしな。やつは、勝てるときにわざと負けるが勝ちたい時は負けたように見せて、自分の利を手に入れている。私の代までは、ただの旧式人形で騙せると思っていたんだがな」
「「「………」」」
モブ達と神々は眠くなってきた。
 
「やはり魔力濃度が濃すぎるな、ハイケン」
ハイケンは、〖水の毛皮〗で魔石を包む。
ガタガタガタガタガタガタ
ウェンリーゼ領を二回目の《地震》が襲う。
「皆、五十年分の借りを返しにいくぞ」
 
モブ達は、難しい話を分からないフリをしていたが、神々は飽きて神界に【一時帰宅】してしまった。
 
神々の代わりにラザアが、ドアごしで彼らの感情に当てられて、声にならない泣き声と涙を流していたことを彼女以外は誰も知らない。
 
ナポレオンさんやい、本当に伏線回収できるのかい?
「一生かけて回収します 笑」




