閑話 呪い呪われた未来へ
閑話がいつの間にか本編になってないか?
オッサン達元気かな?
明日は時間あったら、オッサン達助けに行く予定です。
猫って可愛いよね
1
「執刀・開始・消毒・処置《治癒》…今日もボロボロですね」
リーセルスは、両手から全身包帯だらけのアーモンドの身体を温めるように、詠唱をし回復系統の魔術《治癒》をかけながらいう。
「ラザアの宿題が思いの外、難しくてな」
「ウェンリーゼ様の研究論文は、私も拝読させて頂きましたが実に興味深いものでした。教授受けは良くなかったようですが」
アーモンドは魔術を使えない。
そもそも魔術が使える魔術師は、グルドニア王国比率で一割~二割程度である。それは、生まれもっての才能か、血統か、後天的な環境によるものか、それぞれの要因が関係するか、研究者の間でも幾つか見解が別れるところである。
アーモンドの祖先である初代国王アートレイ・グルドニアは「国崩し」の厄災と同じと恐れられていた。右腕を振れば空が裂け、左腕を振れば海が割れ、右足を出せば大地が割れ、左足を出せば草木を枯らし、天を仰げば雷が鳴き、その視線は生命を奪う、覇道を極めし大陸の覇者であった。
一説には神々が地上に怒りを伝えにやってきた「代行者」、「神々の落とし子」、「神の血筋」等、記録や言い伝えに誇張はあるだろうが、恐らく魔術や人種にはおよそ不可能であり、奇跡と言われる「魔法」を使うことが出来たのではないかと推察される。
アーモンドは、魔術が使えない。
しかし、王族なだけはあってか自身の魔力保有量は王国魔術師の頭一つ二つ抜けている。
近年では、魔導具による補助を受けて魔術に似た現象を発現することができる。しかし、どの時代も魔術師とは憧れであり、人々の尊敬と名誉を受ける存在だ。
アーモンドが身体を酷使する訓練は、現状の魔術術式の詠唱を破棄して魔術を発現するものだ。無詠唱での魔術の発現は、熟練の魔術師でも難しく、通常の魔力消費量の五~十倍の魔力を消費し精神的な負担も大きい。
ましてやアーモンドは魔術師ではない。身体の負担が大きいのは火を見るより明らかである。
2
「アーモンド様、リーセルス様よろしければ私の秘密基地にいきませんか」
猫の郷に来て早三週間が過ぎようとしていたある日、姫君から二人は誘いを受ける。
「秘密基地とは、なんとも良い響きですね」
リーセルスは食い付きがいい。リーセルスはいいカモだ。
「秘密基地といっても、私の仕事場で【駅】っていう神殿なのですが、私はいつもそこで獣神様に祈りを捧げているのです。私にしか出来ないお仕事なのです」
姫君は【ドヤ顔】だ。
「いや、私は今日も宿題をだな」
姫君の猫耳と尻尾が分かりやすく垂れる。
「アーモンド様、恐れながらアーモンド様の御身体は既に私の《治癒》でも再生が追い付かないほど限界な状態です。
それに魔術による治療は本来であれば応急的なものであり、身体にはいずれも負担となります。遠回りかもしれませんが、本日は、皆で獣神様にアーモンド様の魔術成功を【祈願】することが最も近道であると具申致します」
リーセルスは眼鏡ごしに、姫君に瞬きをする。やることがイチイチ【イケメン】だ。
「わかったわかった、お前には口では叶わんからな」
「やった!やりましたわ!さぁさぁアーモンド様、私の巫女姿をみて今日こそ惚れに惚れるのです」
姫君の尻尾が分かりやすく左右に揺れている。
3
「こういってはなんだが随分と年季がはいっているな」
「私は趣があって非常に良いと思いますが…」
【駅】なる神殿は見るからにボロボロだ。
隙間からは風が吹き、床は雨漏りの後であろうか、腐りかけている場所が所々である。
「これでも、お二人が来ると思って掃除したんですよ」
「これが獣神様か」
アーモンドの前には不格好であるが、木彫りで彫られた全長二メートル程度はあるであろう、狼の獣人像がある。決して綺麗とは言えないが、その彫り方には何とも無骨で味があり、胸当ての部分鎧に【刀】を持ちただ立っているだけであるが今にも動き出しそうな雰囲気がある。
「獣神様が狼人種であったとは、始めて知りましたね」
「巫女の祈りで、〖大神〗をオオカミと読むそうで、それで狼人種を奉ること多いようですが、正確には先ほどの〖大きい〗とか〖多くの〗等だと、二代目永久名誉巫女であります「愛」様がおっしゃっておりました」
「ほう、姫君の割には【古代語】の意味が分かるとは勉強しているようだな」
「これぞ愛の力ですわ」
猫耳がピーンと立つ、尻尾は箒のように床を掃いているようだ。
ガシャ、バキバキ
アーモンドのブーツが床を突き破った。
「なっ!あっ! しっ…しまった」
「あー、アーモンド様やってしまいましたね」
「アーモンド様、アーモンド様、床と私には優しくしないと獣神様のバチが当たりますよ、
あっ!」
姫君は、おもむろにアーモンドが突き抜けてしまった、床にめり込んだ焦げ茶色のブーツを見つめる。
「この靴は…」
「あぁ、随分くたびれてしまったが、最高の魔導技師ボールマン・ウェンリーゼ殿がオーダーで作ってくれたものでな、私の成長に合わせてサイズが変わるブーツでな、〖猫啼のブーツ〗というのだ。少量だか、猫の一部をつかっている私の相棒だ」
「ゴッ…ゴホン、アーモンド様、その今のは少しだけ、その王国紳士たるもの如何なものかと」
アーモンドの顔は壊した床よりも今にも壊れそうである。
「もし、よろしければ、その靴にさわらせても…」
姫君は、猫啼のブーツにそっと手をやり額をつける。アーモンドとリーセルスには、見えない涙がブーツを伝う。
「ニャー、ニャー」
姫君がブーツに鳴く、心なしかブーツも泣いてあるようだ。
「ひっ…姫君」
アーモンドとリーセルスはどうしていいか分からない。
「さあ、さあ、アーモンド様、床を壊したのですからその分今日は、片付けを手伝って頂きますわよ!そして今日こそ惚れて貰います」
アーモンドからは実は、西の姫君涙が見えていたことを姫君は知らない。
4
「この胸当ては鏡みたいだな」
アーモンドは丸い部分鎧を磨きながらいう。
「実は鏡がなくて、その代わりも兼ねてるんですよね、私は〖パーシャルデント〗って呼んでいます」
「何か意味がおありで?」
リーセルスは、床の補強中だ意外に手際が良い。
「うーん、そうですね。巫女の鏡は本来そこにいるはずの神様に代わって自分自身を視る、見つめる、見つめ直すなんて意味があるんです。時の大賢者様が魔法を唱える際に非常に役に立った【薬】の名前だそうです。
後は、部分的に未来を視るとか確かそんな意味があったような、無かったような?」
「ほう、非常に興味深いが要は詳しくは知らんということか」
「そうともいいますかね、あー、手を止めないで下さいね【おにオコ】しちゃいますよ」
「何だ玉ねぎか?確かにあまり好きではないが」
「あー、アーモンド様」
「リーセルスどうした?何か変か?」
「いえ、なんでもありません。ところでこちらの【刀】というものは?ロングソードみたいですが、レイピアとも違いますね。獣国の細剣ですか?」
「あー、これですか?昔話の中にでてくる伝説の刀の一本っていわれている〖白橙〗のレプリカで模造刀なので刃は潰してありますから本当に神事用ですかね。まぁ、神事っていっても私と族長と数名程度ですけど」
「ほう、供える剣か騎士としては剣を神に捧げるとは名誉なことではないか」
「ちなみに、この祭壇の【御神酒】が〖コッケン〗といって私の生まれたといわれる〖ランデン地方〗のお酒です。この三つが我が【駅】の三種の神器でなのですわ」
アーモンドは、姫君の話を聞きながら、〖パーシャルデント〗を見つめ意を決したように口に力を込める。
「姫君実は折り入って話があるのだが」
次の瞬間、ピィーーー
人種には感知できない音を姫君が拾う
「なっ!魔笛、そんな〖パーシャルデント〗にはこんな未来は写ってないはず」
姫君は酷く動揺している。
バキバキバキバキバキバキ
床ではなく、壁から紅い瞳の魔獣が三人を見つめていた。
騎士達と姫君の命をかけた実戦が始まろうとしていた。
獣神の像はこれから起こる結末をとても哀しそうに見つめていた。
バトルパートってどう書いたらいいんだ。
本編で修行してから出直します 笑
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