閑話 この広い世界で
閑話一旦終わります。
早くしないと本編で海蛇があばれちゃうので
構想は、あるのですが眠気が
後で大幅に加筆訂正します。
1
「どーしてこうなった」
アーモンドは、毎日そればかりだ。
従者兼御者兼副官リーセルスは時折眼鏡を気にしながら、上官とは正反対に痩せた体で馬を巧みに操りる。そんな【イケメン】とは反対にアーモンドは、馬車に揺られながら、床に臥せって手を伸ばしている。
学園騎士軍部学科を卒業した、序列三位の秀才リーセルスは平民出身ということもあり准尉、序列一位でありいつの間にか聖なる騎士となった剣帝は王族ということもあり、大尉の位を下賜された。
学園卒業と同時に、〖猫の郷〗に向けて出発した二人は既に旅の工程を七割、約四十日を過ぎ、四ノ月も終わろうとしていた。
 
今回の旅はグルドニア王国南西部の山を越えるルートで、時間は約60日程度と時間はかかり、山越えではあるが「白線流し」といった両国を繋ぐ貿易路である。
山をくり貫いた道は、古代に整備された道であり、ウェンリーゼの技術によって当時と同程度までとは言わないが、【舗装】された道で馬車の揺れも余り感じずに、馬にも人にも優しい。
 
「またですか?もうなん回目ですか全く」
リーセルスはため息をつく。
「一体私が何をしたというんだ、ラザアには「さよなら【狼少年】さん」なんていわれるし、あのポンコツ人形は無表情……しかもやっと春がくると思ったら、さらに雪が積もった猫の郷だと!
なにより、いきなり顔も知らん姫君との婚約等、何が狂った!神は私を見捨てたか?」
アーモンドは、床に伏したままだ。
「まあ、アーモンド様がどうこうというより国同士、周辺諸国に隣国同士仲がいいですよ。我々の友情は固いみたいな意味合いですから、個人の感情はあまり関係ないでしょうね」
リーセルスは遠くの山に見える雪化粧を見ながら言う。
「それに一度は猫の郷に行ってみたいなんて、仰っていたではないですか。良かったですね。夢が叶って、それに猫お好きでしょう? 確か、幼少の頃に猫飼ってましたよね」
リーセルスは呆れ顔だ、何回同じ会話をしたか分からない。
「行ってみたいとは、いったが住んでみたいとはいってないぞ」
アーモンドは、相変わらず床に伏している。
「えぇっと、確かホーリーナイトでしたっけか?白い可愛い猫ちゃんでしたよね。「ホーリーナイト行くなぁー! 一生私の側ににいると約束したではないかぁー!」あんなに泣きじゃくるアーモンド様は、後にも先にも始めてでしたよ」
「くっ!昔のことを!いつまでも」
アーモンドは少し恥ずかしそうだ。
 
「ちなみに後少しで白線流しも終わりますよ。一気に雪も相まって寒くなりますよ。そろそろ鎧脱いだほうがいいですよ」
リーセルスはアーモンドの鎧を見ながらいう。
「これは騎士誇りだから易々とは脱げん! 」
アーモンドは若干小刻みに震えている。
「だいたい、今回はその婚約を破棄しに行くのですから、しかも王宮の許可もなく。先触れの手紙は出しましたが、許可なく勝手に来たんですから【風邪】なんて引いたら、西の姫君にも会わせる顔もありませんよ。だいたい、さっきからそのポーズは何ですか? 」
リーセルスは心配してるようで実は上の空だ。
「これはラザアがあのポンコツ人形から教えて貰った【土下座】という許しを乞うための最上級の礼儀だそうだ、これをやれば古の神々ですら、全てを許して頂けるようだ! これならば、西の姫君も恥をかかずに済むそうだ!」
アーモンドは根拠のない自信に満ちている。
「一応、姫に配慮しているのは、評価出来ますがそう上手くいきますかね」
リーセルスは、1人だけ寒さ対策を始めた。
「待っていろ、猫族の姫よ! そして、我が最愛のラザアよ! 」
アーモンドはいよいよ寒さで頭がおかしくなりつつある。その土下座はまるで、丸々とした猫のようであった。
2
『西の姫君』、『西の姫巫女』である。婚約者は、一年の大半を神殿にて祈りを捧げており滅多に人前には出ず、非常に無口で愛想の欠片もない。感情のない『人形姫』等といわれていた。
 
「さぁ、アーモンド様!捕まえましたわ! 今日こそはこの【婚姻届】なるものに、サインをし私に惚れて貰います」
今日も、今日とて西の姫君は、非常に元気である。
「なんでだ、なんでこーなった! 」
アーモンドはこの一週間未だに必殺の【猫のポーズ】がとれずに、姫君の押しの強さに翻弄され続けている。
族長の宮殿までは順調だった。王国には、報告していない秘密裏の訪問ではあったが、先触れも出しており、猫の郷族長への謁見もついて次の日には可能であり、慣れない寒さをかんがみても、国賓に近い待遇である。
謁見の席には長や参謀数名に、姫君本人までおり、リーセルスが見守る中アーモンドは、挨拶を済ませて、落ち着いたところでこの六十と三日、決めに決めた【土下座】をする予定であった。とにかく【ゴリ押し】押して押して押し倒す、ダメといわせない【追い込み漁】だ。
相手が少しでも、雰囲気に飲まれればこちらの勝ちである。
 
「お待たせ致しました。アーモンド様、長の謁見でございます」
(よし! 足を踏み入れた瞬間が勝負だ)
「失礼致します。グルドニア王国、王室よりアーモンド・グルドニア様でございます」
扉が開いた瞬間だった。
目の前には猫耳がアーモンドの顔にタックルしてくる。
その拍子にアーモンドは、床に倒れこむリーセルスは間に合わない。
猫耳の少女は、アーモンドの銀髪【天パ】の頭に顔を埋め、クンクン匂いを嗅ぎながらとても幸せそうにいう。
「アーモンド様! アーモンド様アーーーモンドサマー! ずっーーーっと! お待ち申し上げておりました。お風呂にしますか? ご飯にしますか? それとも、色々省いて子作りにしますか? あぁ、早く私に惚れてくださいましてよ」
アーモンドの秘奥義【スライディング土下座】は、見た目十歳の白猫猫耳少女に、あっさりと阻止された。
「なんでこうなった」
アーモンドは、機先を制された。
3
「銀の豚」「ままごと剣術」「コネ騎士」アーモンドは、この一週間でまた二つ名が増えた。
この獣人が住む郷で、純血の人種は珍しく王族であれば尚更だ。
 
グルドニアの王国騎士はどのくらい強いのか?
強さを売りにする獣人達にとってアーモンドは、興味の対象であった。
「勝負あり 勝者 ラギサキ殿」
「くっ!また負けた」
アーモンド・グルドニアは王国の誇りを十二分にみせつけていた。
絶賛、13連敗中である。
「アーモンド様アーモンド様、私のアーーモンドサマー!お怪我はございませんか?」
姫君の猛攻も止まらない。
アーモンドは、聖なる騎士でありグルドニア代100期卒の代表であり、騎士科の序列一位であり「剣帝」である。
グルドニア王国基準であれば、エリートであり、王国内騎士の中でも上位に位置する。
しかし、それは重量のある鎧を着て木剣での決闘が主であり、アーモンドの磨き上げた剣技は対人種戦を想定している。
獣人の戦闘は、種族毎に千差万別だ。なかでも、猫の郷の戦士たちの闘い方は、その敏捷性に特化している。人種では、到達しきれない、反射神経に、道場の中での慣性を無視したような上下左右からの縦横無尽な高速戦闘、木剣を使ってくると思いきや、爪や牙を武器に、格闘術、四肢の筋肉を柔軟かつ最大限に使用した、初動の速さ、全てがアーモンドには始めての世界であった。
グルドニア王国騎士三人で魔獣一匹分
獣人傭兵一人で魔獣一匹分
アーモンド・グルドニアは世界の広さを知った。
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