閑話 聖なる騎士 アーモンド・グルドニア 壱
作者の悪い癖でリフレッシュで書いてるので、とばして頂いても大丈夫です。
題名はアーモンドですが、リーセルス視点です。
1
グルドニア王国歴495年 離宮「レート・グルドニアの庭園」
リーセルス・オリア、父であるバーゲン・オリアは剣術で名高いオリア伯爵家の次男であり、リーセルスは四人兄弟のうちの次男である。
ただし、母は平民であり王都の平民区のパン屋の娘であった。そのパン屋は貧しくもなく、王都では贅沢は出来ないがそれなりに幸せな笑い声のある家であった。年に数度、父と名乗る冒険者風の男がやってきて、旅の疲れを癒すといったことが恒例行事であった。迷宮探索で得た稼ぎは多く、パン屋には過ぎたるものだった。その日はいつも忙しそうにしている母も非常に機嫌が良く。祖父と四兄弟は、父であるバーゲンの迷宮での冒険譚に胸を躍らせた。子供達はまさか父が貴族とは思いもしなかった。自身に貴族の血が流れていることも。
噂と秘密とはすぐに広まるものだ。幸せの終わりが突然であるように……
パン屋は特別贅沢な暮らしをしていたわけではなかったが、高位の冒険者が年に数回といえどパン屋を訪れるのはやはり不自然であったのだろう。オリア伯爵家に情報が売られるのは早かった。貴族からすれば、平民の血など下賤なものでしかないのであろう。
特に王室の剣術指南役であり、王都の迷宮を管理する伯爵家からしたら、次期当主を支え、次期迷宮監察官の立場にあるバーゲンに【オフィシャル】ではない家族がいるのは汚点以外のなにものでもない。
そこそこ美味しいパン屋はあっけなく王都から消えた。
2
バーゲンが迷宮探索より帰ってきた時にはもう遅かった。彼の憩いの巣は、既になかった。唯一の救いは、四人の子供たちが貧困外の孤児院に逃げて難を逃れたことだった。
長男のセールは当時十二歳であったが非常に勘のいい子であった。読み書きや三桁の足し算引き算も可能で、経理の一端を担っていた。これは、平民では非常に高い算術レベルであり、同年代の貴族と比較しても優秀な部類である。セールは、危険を察知したのか速やかに孤児院へと逃げた。
孤児院は神殿の管轄で、六大貴族家の序列第一位であるダイヤモンド公爵家の管轄である。そこは、どのような勢力も不可侵な領域で、神々の信仰が根強いグルドニア王国切っても切れない関係である。
母と祖父は、見えない貴族たちの悪意から逃れることができたが、心労が祟ったのか四人の子供たち残して逝ってしまった。この状況にセールは非常に落ち込んだ。
それは、迷宮探索にも大いに支障をきたした。そこで、「賭け狂い」パーティーリーダーであり、セールの主であるグルドニア王国第六王子ピーナッツ・グルドニアは、王室に特例を要請した。
離宮にいる会ったこともない自分の息子アーモンド・グルドニアに従者としてセールの四人の息子を付けた。流石の貴族達も王室には手は出せない。これは、異例の事態であった。いかに、伯爵家のセールの血筋といえど半分は平民の血である子を王族の従者にするなどもっての他であった。
しかし、ピーナッツは強行した。一つに、ピーナッツのパーティー「賭け狂い」は数年前から大陸を代表する金級冒険者パーティーだ。迷宮とは危険と死を対価に、数々の「迷宮品」なる貴重な装備や武器、アイテムをドロップし各地の迷宮を踏破しているこのパーティーはグルドニア王国に多大な貢献をしており、毎回王宮にも多くの「迷宮品」を献上している。
たまに、国を傾けるほどの負債も抱えてくるが……
最も、ピーナッツの追い求めている秘宝は、今だに手に入っていないようだが……
加えて、ピーナッツの母はオリア伯爵家が実家であり、自身の従者もオリア家次男、その息子達の世代も同じ家というのは、体面的には悪いものではない。
また、ピーナッツの妻であるレートは西部最大勢力で穀物地帯のズーイ伯爵領が実家であり、自身も元「賭け狂い」パーティーに属していた。レートに多少の同情もあったのは間違いないが、元パーティーメンバーであるバーゲンの子たちが気にならない訳はない。
さらにいうのであれば、第六王子であるピーナッツは既に公の場で王位継承権を破棄しており、そこの三男坊アーモンド・グルドニアは王位継承すらない序列では今後、王の芽がない王族の最底辺である。
まして、当時のアーモンドは丸々と太った。物覚えの悪い、運動はできない、なぜかいつも転ぶ、トコトン運のない、母親に甘えてばかりで、魔力量は膨大であるが魔術も発現できない非常に能力の低いお荷物のような存在だった。王室は、それなら半分平民の従者もお似合いであると……リーセルス達は、オリア家からは関係のない存在、奴隷と変わらぬ存在として最低の王様の元にやってきた。
3
グルドニア王国歴495年 アーモンド幼少期
「本日から、アーモンド・グルドニア様にお仕えすることになりました。リーセルスと申します。誠心誠意努めさせて頂きます。よろしくお願いいたします。得意なことはすべて得意です」
「よろしくな。リーセルス、おぬし面白いやつだな」
「ニャース」
「恐悦至極にございます。我が主よ」
リーセルスと兄弟がアーモンドに臣下の礼をとった。
アーモンドとホーリーナイトに妙に大人びた従者とその兄弟が仲間に加わった。
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