3 僕の考えた最強武器
1
「ガララララララララララァァァァッァ」
シーランドがトンファーより射出された【パイルバンカー】の重い衝撃に痛みを叫ぶ。
『ちょ、なんだぁぁぁあぁぁ』
ボンドは射出したトンファーのギミック【パイルバンカー】の固定が不十分でその威力によって後方へ吹きとばされた。ボンドがウェンリーゼ砂浜に転がる。この自爆技めいたギミックはボンドも予想だにしなかった。
〖トリニティ・エンド=ブンブン丸〗
〖種類〗トンファー(小型パイルバンカー内臓)
〖効果とストーリー〗
「ジャンクランド ボンド様の武器を考えよう杯」両手武器部門の敢闘賞作品。近接武器のトンファーに小型のパイルバンカーを仕込んだ夢のある武器。考案者は、若手のお手伝い機械人形達が頑張って作った「僕が考えた最強武器」で非常に斬新でデンジャラスな暴発なんて待ったなし。正直、欠品であったがボンドはその気持ちがとても嬉しかったようだ。一応、実用できるようにレング、フェンズで改良はしている。通常使用の護身用ととしては超優秀だが、固定が不安定な【パイルバンカー】ギミックは射出しながら、いい意味で距離を取れる。状況によっては、かなり尖った性能を生かすも殺すもボンド様次第である。
崖の上では木人が、非常に渋い顔をしている。ホクトが嬉しそうにキャンキャン鳴いている。
「ぶぶっつ、どうなってんだ。こりゃあ、レングとフェンズの野郎、ちゃんと調整できてねぇじゃねえか」
自爆したボンドが逆に意表を突かれた。シーランドのブレスが迫る。シーランドはボンドを強敵と認識した。先ほどの攻撃は、不完全なものであるがシーランドの胸部に十分なダメージを与えた。シーランドは油断しない、一歩間違えれば自身を食い破るということを十分に理解しているのだから……
「くっ! ルーレット」
ドッゴォォォン
シーランドのブレス勢いのままにボンドに着弾し砂埃を巻き上げた。
視界の悪い中でシーランドが視たものは……ブレスを間一髪躱し、 羽のようなもので、空を飛翔しているボンドであった。
「ふうっ、今度こそ、当たりだぜぇ」
〖為虎添翼〗
〖種類〗飛行バックパック、ボンド専用換装装備
〖効果とストーリー〗
「ジャンクランド鳥機械人形コンテスト」の優秀作。作成者は機械学生団体によるもので、作成理由は古代語の「為虎添翼」のようにただでさえ強いボンド様に翼を着けたらマジでハンパないをコンセプトに開発されたバックパック。
普段はフルアーマーによる重量オーバーで飛翔することが出来なかったので、四次元にお蔵入りとなっていた。
大型魔石を使用して、通常で三時間の飛翔が可能である。
飛翔時の助走の代わりに、ボンドは、もう片方のトンファーの【パイルバンカー】を噴射してその勢いのままに飛翔した。
「ほう、やるもんだねぇ」
「キャン、キャン」
木人とホクトも感心したようだ。
戦いで敵より上方からの攻撃は、それだけで有利である。視野も広くなれば、三次元の攻撃が展開でき攻撃の幅も増える。さらには、敵はほぼ下からの攻撃一択である。ましてや、ボンドは鳥のように自由自在に動き回れるはずだった。
「はっはっはっはっは! 見たか、木人! これがジャンクランドの皆の力だぜぇぇぇぇ、ええええええええ」
ボンドは墜落した。
ボンドはウェンリーゼの砂に埋もれた。どうやらここの砂がお気に召したようだ。木人とホクトの視線は冷ややかだ。
「うぶっ、げは、げは、どうなってんだこりゃあ」
ペラペラ
装備には注意書きが書いてあった。
〖魔石節約のため、テスト用の小型五級魔石を使用していますので、テスト飛行のみよろしくお願いいたします。飛翔時はご注意下さい。レングより〗
ジャンクランドに限らず、どこの国も領地も魔石不足は深刻でウェンリーゼの人工魔石はそれはそれは喉から手が出るほど欲しい。特に、機械帝国であるジャンクランドでは魔石価値は他国よりも基準が高いのだ。
「ガララララララララララァァァァッァ」
そんな魔石事情などシーランドの知ったことではない。シーランドはボンドの摩訶不思議な行動にも油断しない。《水球》の嵐がボンドを襲う。
「ちょっと、ちょっと、タンマ、タンマ、なにかなにかねえかぁ! これは!」
古代魔法《停止》はボンドですら発現できない。ボンドは砂の中からユーズレスが使い潰した流体金属のカケラを発見した。
2
「これは! 流体金属じゃねえか! これなら! 」
医療用ユニットであるボンドは本来、戦闘用の機械人形ではない。その本質は、名前の通り繋ぐこと〖結合〗を司る。
ボンドが右腕に流体金属を掴む。大気中の魔力濃度は、先ほどの人工魔石作成炉の暴発で、非常に高い。
「魔力も申し分ねえ! 《コネクト・オン》」
ボンドが流体金属と魔力を結合した。それは、偶然か、神々の悪戯だったのだろうか。流体金属は本来その形状を場面によって変化させて、その場の最適な武器を使用するオールラウンドな武器だ。過去に、ボンドもユーズレスに〖巨帝〗を真似されて苦汁を舐めた。良くも悪くも、ボンドは流体金属の性質を理解していなかった。
「こっつ! これは! 」
ボンドが魔力と結合した武器はなぜか……
「なんで、柄杓なんだぁぁぁあぁぁ」
何の変哲もないどこにでもある柄杓であった。
柄杓、水をすくうためのお椀に長い柄をつけた道具である。
薄暗くなってきた夜空に北斗七星が輝いていた。木人とホクトの視線も別の意味で妙に冷たく輝いていた。
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ボンド様がお助けサポートキャラになってますね。喜劇は正義ですね。