海王神祭典 戦闘記録 前編
第一部と外伝のダイジェストです。
1
グルドニア王国歴509年
ウェンリーゼを海王神シーランドによる《地震》が襲った。ウェンリーゼ領の当主代行ボールマン・ウェンリーゼを含めた十一人の騎士たちは、五十年前のカリを返すべく海王神シーランド討伐へ向かった。
次期当主であるラザア・ウェンリーゼを魔道機械人形ユーズレスと、王国からの婿養子であるアーモンド・グルドニアに託して……
2
海王神シーランドは岸から約四キロ地点で、厄災級魔法《地震》を連発した。機械人形ハイケンの《演算》による作戦は、ボールマンの切り札であるディックの杖による厄災級魔法《竜巻》による高威力の力技であった。しかし、その作戦には海の王者を陸へおびき寄せる必要があった。八人の騎士たちの犠牲によって……
3
海王神シーランドとモブ達の戦闘記録(外伝参照)
〖左眼〗
一番槍は、自警団団長クロは海王神シーランドの挑発に成功した。シーランドは、沖から岸へ向かう。獲物を追いかけて…クロの捨て身の「玩具似る」による《雷撃》の一撃は自身を焼きながらも、海の王者の左眼を傷つけた。クロは満足そうに逝った。死神の鎌が振られた。時の女神が赤いレンガを積み始めた。
〖牙・劇薬〗
沈着冷静なウェンリーゼの白い死神付与術師シロは怒った。弟であるクロを殺され腸が煮えくり返りそうだった。シーランドは左眼の傷で距離感が掴めずに遠距離での魔術攻撃をシロは軽快に躱した。最後には遅効性の劇薬を自分で飲み、シーランドに食われた。自身の命を対価として《花火・七色》を発現した。その花火は冬の終わりを告げ、神々の心に切なさを残した。シーランド自慢のノコギリ歯がボロボロになった。
〖一角のヒビ〗
狩人のジョーは距離を取り、魔道具「筒」での遠距離攻撃を繰り返した。寸分違わぬその狙いはシーランドの魔術発現の起点である一角を狙った。付き人であるレフティとニートの助けを借りて、ジョーは近距離からの攻撃を一角に放った。海のグングニルといわれたシーランドの一角にヒビが入った。ジョーは最後までハンサムだった。
〖背鰭〗
ウェンリーゼのおやっさんベンは、シーランドを迎え撃つ。シーランドはベンのただならぬ気に気圧される。ベンは息子であるクロとシロ、甥のジョーを殺され怒れる化身となる。ベンは、シーランドの尾鰭をむしり取り、一角に大きな傷をつけてウェンリーゼの海に散った。
〖内臓の傷〗
狼獣人三兄弟末っ子のスイ、漁師である海の狼は水中での勝負を挑んだ。死の淵でスイの人魚の血が目覚めた「獣神変化」で海の人魚となる。最後は、《水爆》による水圧でシーランドの臓腑に大きな爪痕を残して逝った。遥か西の沼では人魚が涙を流した気がした。
〖首筋の鱗〗
狼獣人三兄弟次男のレツ、「獣化変化」で孔雀へと獣化したレツは得意の炎を駆使してシーランドに挑む。「獣神変化」により火喰い鳥となったレツは、激闘の末、神の盾といわれた鱗を破壊した。
〖一角〗
狼獣人三兄弟長男のヒョウ、自身の怪物に翻弄されながらもボールマンに導かれて「獣神変化」した魔天狼となる。神獣なるヒョウは理に反した存在でありウェンリーゼの砂となった。シーランドの一角を切り落として……
〖目標地点〗
ボールマンの弟であるギンは愛剣である絶剣でシーランドを翻弄する。シーランドは自身の左眼を魔力媒介として厄災級魔法《津波》を発現した。ギンの命を懸けた剣は、《津波》を切り裂いた。アーモンドのアシストもあり、ギンはシーランドを目標地点までおびき寄せた。ギンは敬愛する義兄ボールマンに見守られながら逝った。絶剣がカタカタと泣いた。
4
目標地点まできたシーランドにランベルトの複合上級魔術が発現する。動きを止めたシーランドに、ボールマンの切り札ディックの杖による厄災級魔法《竜巻》がシーランドを襲った。
5
シーランドは《竜巻》により全身を切り裂かれる。シーランドはダメージを喰らいながらも、再び《津波》を発現する。ウェンリーゼに二度と悲劇を、過ちを繰り返してはいけない。ボールマンは《竜巻》で《津波》を相殺した。
6
ボールマンは自身の魔力を対価にディックの杖で再び魔法の準備をする。ランベルトと意識を取り戻したアーモンドがシーランド相手に時間を稼ぐ。ボールマンから劣化厄災級魔法《暴風》が放たれた。
7
ディックはコマンド、《必中》、《捨て身》を使用してシーランドに照準を合わせた。様々な事象が重なった。海の王者シーランドは砂浜でスリップした。ウェンリーゼの希望は途絶えた。
8
フラフラとアーモンドがやってきた。アーモンドはシーランドに勝負を挑む。己の命を引き換えに義父であるボールマンを永らえさせるために。アーモンドの全身の魔力が練られる。アーモンドが命を懸けた特攻を仕掛ける。
9
ボールマンは祈った。自身は地獄の業火に焼かれようがどうなろうと構わない。ウェンリーゼを、アーモンドを、助けて欲しい。ボールマンの祈りは通じた。ボールマンが振り返った先には……「オトサン」
ボールマンのオトサンであり最愛の友である魔道機械人形ユーズレスがいた。
第一部 完
執筆休む予定だったのですが、筆が進んだので明日から更新予定です。
良かったら、第一部と外伝「モブ達の救済」、第二部、気になるパートだけでも再度読んで頂けたら第三部楽しめると思います。