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20 双子の騎士の一振り 絶剣〖満天〗


 双子の騎士


 昔、昔、暴炎竜バルドランドという。欲深い竜がいました。バルドランドはこの世の全てが欲しいと、世界中を焼き払いながら暴食の限りを尽くしました。

人々は困り果てました。厄災としてただ暴炎が過ぎ去るのを待つか、死の業火に炙られるのを涙するしかなかったのです。その時に、笑う二つの剣を持った剣士が現れました。剣士は勇敢にもバルドランドと戦いました。

天は吼え、地は割れる壮絶な戦いは三日三晩続き、永遠に続くと思われた戦いは剣士の勝利で終わりました。

暴炎竜バルドランドは最後に「かなしいね」といって遥か高みへと昇っていきました。


 その竜殺しの英雄を皆はこう呼びました。


「剣帝」、「双子の騎士」、「ホーリーナイト」と、双子の騎士は今日も皆を守ります。いつまでも、皆を守っています。




2


 剣帝が剣を抜く。


 戦闘はもう避けられないようだ。


 ゾクッ


 ユーズレスは寒気を感知した。機械が寒気を感じるなど馬鹿げた話に聞こえるかもしれない。熱感知センサーと冷却ジェネレータは正常だった。ユーズレスは補助電脳ガードが《高速演算》で剣帝の動きを予測する前に自立運動をした。


『《防御》、《器用》』


 剣帝が迫る。

ユーズレスはクーリッシュの盾を構えた。ユーズレスは、自身のターンで仕留めるつもりだった。盾で攻撃をいなして、体勢の崩れたところを拳による《物理攻撃・極》で決めるつもりだった。ユーズレスの拳は下手な近接武器より攻撃力は高い、軽量の革鎧であれば本体ごと砕くことができる。【コマンド】の「極」を使用することで大幅に魔力を使うが、出し惜しみして勝てる相手ではないと判断した。


 剣帝の一撃がユーズレスの盾を襲う。ユーズレスがコマンドを発動する。しかし、剣帝はユーズレスの重心のおもきを認識して攻撃の【タイミング】を一瞬ズラした。ユーズレスが刹那の戸惑いを感じた瞬間に……ユーズレスの盾が弾け飛んだ。ユーズレスの体勢が崩れたところに蹴りが決まり地面に大の字になる。数百キロの重量があるユーズレスが剣帝の手玉にとられる。ユーズレスの頭上に剣帝の剣が振るわれる。


「メェェェメェェェメェェェメェェェメェェェ! 兄上メェェェ」


 グリッドは動いた。クリッドはビビっていた。クリッドは叫んだ。クリッドは自分を奮い立たせた。以前のクリッドであれば、剣帝の武威に触れただけで羊に戻っていただろう。しかし、クリッドはもう泣いてばかりの羊ではない。色彩の真紅、真なる悪魔クリムゾンレッドなのだ。


キャハハハハハ


クリッドが素早く前に出て高速の一閃を放つ。剣帝が一歩下がりクリッドの一閃を避ける。剣帝が重心を前に置きクリッドに向けて垂直に剣を振る。


「メェェェ」


 クリッドが返しの剣で、剣帝の剣を受け止める。首のない剣帝が「ほう」とクリッドに関心を示す。クリッドは手に痺れを覚える。まるで、魔界の鋼鉄に勝る硬度の巨大な岩を叩きつけているような絶望感を味わう。グリッドはハッキリと剣帝が自身よりも剣士として上の位にいることを悟る。ユーズレスが素早く起き上がり、バックパックの四次元から流体金属を取り出す。


パリン


 流体金属が体積を減らしながら、〖雷槍ラース〗を形成する。魔力を通すことによって先端に《雷撃》を発現できる祝福の槍である。ユーズレスが《雷撃》を纏った槍の鋭い突きを放つ。剣帝は溜息でもつくようにまるで興味でもないようにもう一本の剣を抜き、槍を弾く。


キャハハハハハ


 その時、不思議なことが起こった。

雷槍ラースの《雷撃》が消失したのだ。雷は絶縁体や純度の高い水以外には物質を通して瞬時にダメージが通る。弾かれたとしても触れれば高い確率で感電する。


「メェェェ」


 剣帝の意識の隙をついて、クリッドがつばぜり合いからスッと、力を抜き、剣を滑らせるようにして剣を振る。しかしそれを予測したようにクリッドのみぞおちに剣帝の膝蹴りが入る。ユーズレスが弾かれた雷槍とクーリッシュの盾を拾う。ユーズレスが再び《雷撃》を纏わりつかせて槍を投擲する。


『《演算》、《必中》』


 補助電脳ガードも投擲の刹那、《補助》をかけて狙いを補正する。剣帝は身を屈めて、床を蹴りユーズレスに接近しながら、あらかじめ槍の射線を予測していたかのように躱す。


パリン


雷槍ラースは部屋の壁に当たり、雷撃を発現させた後に流体金属に戻った。


ユーズレスが盾を構える。剣帝が盾に向けて二刀流からの二連撃を放つ。その衝撃は神速で同時に盾に衝撃が入る。ユーズレスが吹き飛ばされ壁に打ち付けられた。剣帝が追撃をかける。どうやら、盾を切り裂くつもりだったようだが、物理耐性大の〖クーリッシュの盾〗を切れなかったことが気に食わない様子だ。


「はあ、はあ、はあ、メェェェ! 《強奪》」


 床にうずくまったクリッドが制御できない独自魔法《強奪》を発現する。

クリッドの影から山羊の形をした漆黒の影が生成される。影なる山羊から十を超える漆黒の腕が剣帝に向けて襲いかかる。

以前の《告解》をかけられた状態での暴走状態とは違い、対象を認識した《強奪》が剣帝を囲むように襲う。


 キャハハハハハ


 剣帝は二刀流の剣の片方を鞘に納めて、もう片方の笑う絶剣〖満天〗を漆黒の手に向けて振る。

魔力で出来た《強奪》の漆黒の手が絶剣に魔力を喰われた。剣帝は素早く、伸びてくる漆黒の手をあらかじめ順番を決めていたかのように切り裂く。斬りながら、時には避けて、影なる山羊に近づく。クリッドは恐怖でしかない。独自魔法《強奪》は、対象に触れた瞬間に奪う魔法だ。防御は不可能であり、触れれば飲み込むのだ。しかし、その剣は笑いながらクリッドの魔法を食い散らかしていく。まるで「美味」とでもいうようにおかわりを求めて迫ってくる。


「ああああああ! メェェェ! 」


 クリッドは恐怖のあまり気絶した。


 キャハハハハハ


 対となる二振り、夢剣と絶剣が()()()()とクリッドを見て笑った。




今日も読んで頂きありがとうございます。

作者の励みになりますので、いいね、ブックマーク、評価★★★★★頂けたら作者頑張れます。


絶剣については、外伝「モブ達の救済」のギンのパートでも活躍しています。

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『機械人形(ゴーレム)は夢をみる~モブ達の救済(海王神祭典 外伝)』 https://ncode.syosetu.com/n1447id/
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