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ひとつ目のお話(プロローグ)
真っ暗な世界。何処までも広がっていて、黒く塗りつぶされたような空。
私は椎名心。つい先日、誕生日を迎えて19歳。私は来年にははたちになっている。大人だ。
おとちゃんは何処かへ行ったきり帰ってこない。
そういえば、音ちゃんは今年に既に、はたちの誕生日を迎えた。懐かしいな。私たちはここで出会ってもう3年ほど経つ。
この空は、明日に世界が終わってもおかしくないものだと悟った。風が19,000hzを観測している。
「神様、私は何も知らないまま生きているのが正しかったのでしょうか。何も知らないまま、大人になれないことも知らないまま、ただ未来を夢見て、友達、家族と楽しく過ごすことが多分私にとっての幸せな生き方だったのかもしれない。今までありがとう、さようなら。」
風が吹き荒れる。
私の心が黒い空に吸い寄せられているような気がした。そして何処か安心する悪魔としか形容しようがない風の甲高い音が耳元で、脳内で響いてくる。その中で微かに聞こえたような気がしたんだ。おとちゃんの声が。