遺書未完成
遺書を書こうとした。
何も無い自分が惨めだった。
この先の未来、
救いたい人や守りたい人が現れたとしても、
その資格すら、
自分には無いように思えてしまったのだ。
そんな自分が、何よりも嫌いだったのだ。
だが、遺書にはただの一文字も書けなかった。
あまりにもこれまでの人生は空白だった。
誰かへの感謝も、別れもなく、
ただ、後悔と妬みが溢れてきた。
自分自身に失望した。
こんな自分でも、遺書くらいは書きたかった。
だから最期に、
綺麗な思い出を作ろうと決めた。
せめて、それを書き残したかった。
どうせ自分は、大した価値も無い人間だ。
もう少しくらい生きてみてもいい。
ただ、死んでみてもいい。
それくらい、どうでもいい人間なんだ。
それから、やりたいことは何でもした。
欲しいものは無理矢理にでも奪って、
気に入らないものは全て壊した。
そうして作った綺麗な思い出で、
すぐに遺書の空白は無くなった。
しかし、既に生きる事が
楽しくて仕方がなくなっていた。
迷うことも無く二枚目を書き始める。
空白が生まれた。
どうせ自分は、大した価値も無い人間だ。
もう少しくらい、生きてみてもいいだろう?
死んだら、何も残らないのだから。
連載小説「機械少女と怪物」加筆修正中です……!