こんな夢を見た/誰も知らない森の池
こんな夢を見た。
* * *
私は、とても楽しく充実した時を過ごしていた。
いったい何をしていたのかは思い出せない。
どこかのパーティーに呼ばれ、楽しいひとときを過ごしていたような気もする。
突然、フッと、深い森の奥にある小さな池(あるいは沼)のイメージが、脳裏を過った。
それまでの楽しい気分が吹き飛んで、突然、憂鬱になった。
私は昔その場所で、ある男を殺して池に沈めた。
あれから数年が経過しているが、まだ発覚していない。
日常生活の中で、自分自身の犯行を思い出すことも殆どなくなった。
それでも何かの拍子に、突然、犯行の記憶がよみがえる。
これがフラッシュバックというやつか。
一度思い出すと、しばらく気になってしまう。
今のところ、私の犯行に気づいた者は無い。
しかし未来永劫、絶対にバレないという保証も無い。
滅多に人も行かない深い深い森の奥の、誰も知らない小さな池(沼)のほとりで男を殺して沈めた。
だから大丈夫だ、誰にも見つからないさ……と自分自身に言い聞かせてみるが、それでも不安は拭えない。
山菜とりの老人たち、あるいは猟師、あるいは林業関係者が死体を発見するかもしれない。
誰かが池の水を抜くかもしれない。
異状気象で水が干上がって死体が露出するかも知れない。
何がキッカケで犯罪が露見するか分からない。
そう思うと、憂鬱で憂鬱で仕方がなくなった。
憂鬱に囚われながら、こんな風に思った。『自分は生涯、真に生活を楽しむことは出来ないのだ』と。
どんなに楽しい時間を過ごしていても、突然、犯罪の記憶が甦って私を憂鬱で不安な気分にさせる。
そんな風に自分の人生を思ったら、ますます憂鬱になった。
* * *
ここで夢が終わり、目が覚めた。
早朝だった。