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今日日の不良はカードからビーストを召喚するんだぜ?  作者: スカッシュ
第1章 召喚系ヤンキー、矢崎永一参上! 編
7/112

第7話

 ここ最近までスクールカーストの中では最下位に位置していた男が、下剋上のごとくカーストトップに君臨したきっかけが俺の目の前にいた。

「蛸のビーストか……うねうねして気持ち悪いな」

 今まで攻撃してきた正体はあのクラーケンっていうビーストの触手だったのか。どうりで鞭のようにしなるわけだ。

「そんな口を叩けるのは今のうちだぜ? 俺はこのクラーケンの力で今まで俺を足蹴にしてきた連中を返り討ちにしてやったんだ! そんな俺に喧嘩を売ったことを後悔させてやる!」

「へっ! それはどうかな!?」

 先手必勝。俺はフェンリルを一気にクラーケンの間合いに近づけた。

 ビーストってのは基本自分勝手に行動する存在であるが、自分の意思で動かすこともできる。

例えるなら、ビーストってのは基本的には自動的にまっすぐしか動かないラジコンのようなもんだ。この状態では自分の意思で止まることも曲がることもできない。

だがビースト使い、つまりコントローラーが右へ曲がれと指示を出せばその通りに動いてくれるのだ。

今だってフェンリルは自動的に自分の近くにいる敵だと思うものを自分勝手に攻撃してくれるが、俺が心の中で「吉岡を狙え」と命令すればその通りに動いてくれる。

 これが結構神経使うんだよなぁ。これはビーストを扱う際に気を配らねばならないポイントだ。

「ビースト使い本体を攻撃すれば、この戦いは一瞬で終わる!」

 もちろん吉岡を真っ二つにする。なんてスプラッター映画みたいなことはしない。俺はフェンリルを使用するにあたって絶対にやらないこと。それは殺人の道具にしないということだ。殺人は十年前のクソ親父を殺した時だけでこりごりだ……だから、殺さない程度に吉岡を倒す!

「ふっ。そうはさせるかよ!」

 吉岡の周りにクラーケンの触手が集まってくる。

「なっ!」

 あの野郎、クラーケンの触手を重ねて壁のようにして身を守りやがった!

 この男、ただ単純にクラーケンをイジメ返しの道具にしてきただけじゃねぇ。自分のビーストの能力をよく理解して、かつその力をぞんぶんに活かしてやがる。

「今度はこっちから行かせてもらうぜ! やれ、クラーケン!」

 吉岡の盾となっていた触手が、フェンリルの体を狙う。

 八本の鞭のような蛸の足が隙を与えることなくフェンリルにダメージを与えている。

「……くそ!」

「ふははははは! 手も足も出せないようだな! そのクソ狼は!」

「ま、負けるな! フェンリル!」

「バーカ。応援なんかでビーストが強くなったら苦労しねーよ」

「……くそぉ!」

 俺は自分のビースト、フェンリルのもとへ走った。

 フェンリルは今もなお攻撃を受け続けている。その渦中に俺はつっこんでいく。

「今助けるぞフェンリル!」

「グハハハハハ! こいつアホだぜ! 自分のビーストを自分で助けにいくなんてよぉ! ビーストなんて所詮は道具! 道具のことなんか無視してさっさと降参しちまえばいいのによ!」

「なんてな」

「え?」

 俺はフェンリルを助けにつっこんだ……ふりをした。

 今俺は吉岡が座ってる場所の前に立っている。

「な、なんで俺の前に……?」

「お前のビーストは確かに強力だ。俺のビーストじゃあ手に負えないのも大体理解した。だからクラーケンの持ち主であるお前を先に叩きのめすことにしたのさ」

「ひ、ひぃ!」

 急に弱気な態度を見せてきた吉岡。やはりな。こいつはクラーケンの力に依存しすぎていた。クラーケンは確かに強力だが、それとは逆に吉岡本人が強くなったわけでもない。喧嘩の技術が皆無に等しいんだ。

 周りの連中はそれに気づいていなかった。クラーケンという驚異の存在が目立ちすぎて「吉岡本体を倒せばいいじゃないか」という発想には至らなかったのだろう。まぁそれに気づいたとしてもビーストを持たない一般の人間に吉岡にダメージを与えることなんてできないだろう。クラーケンの餌食になってしまうからな。

 だが、ビーストを持っている俺なら可能なことだ。フェンリルをおとりに使用する、という行為は少し気が引けるが、この戦いに決着をつけることができる。

「歯ぁくいしばれやぁ!」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!」

 必要以上にデカイ声を上げる吉岡の顔面に、俺の右ストレートが炸裂した。

 鼻から真っ赤な血を吹き出しながら後方へ吹き飛ぶ吉岡。教室の床に叩き付けられたと同時に、俺のフェンリルをいたぶっていたクラーケンの動きが鈍くなった。

 フェンリルに対して一点集中の攻撃をしていたが、それを操っていた吉岡がダメージを受けたことでコントロールが効かなくなくなったのだろう。

「反撃だ! フェンリル!」

「フェェェェェェェン!」

 さっきまでさんざんやってくれたな! と言わんばかりにフェンリルは自慢の爪をクラーケンの体に切り刻み始めた。

 気持ち悪く動いていた鞭のような触手を一本一本切断していく。胴体から離れた触手は切られてもなお蜥蜴の尻尾のようにびちびちと踊りながら教室の床の上で跳ねている。

 八本あった触手はすべて切り落とされ、クラーケンは胴体だけの存在となってしまった。

「ラケェェェェン……」

 悲しそうな声を上げながらクラーケンは光の粒となって俺の目の前から消えていった。

 勝利だぜ!

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