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今日日の不良はカードからビーストを召喚するんだぜ?  作者: スカッシュ
第1章 召喚系ヤンキー、矢崎永一参上! 編
6/112

第6話

「あんたが吉岡?」

 教室に入った俺は机の上に足を乗せてふんぞり返っている一人の男に注目した。

「だったらなんなんだよ?」

「いやなに。なんかこの学校に通っている奴の知り合いの知り合いに頼まれてさ、お前をぶっとばしてほしいって言われたからちょいと顔を見に来たんだ」

「……ほう?」

 こっちはきっちり喧嘩しに来ました宣言をしたのに対して吉岡の奴はこれといって態度に変化はない。

 代わりに周りの連中は「命知らずが……」とか「殺されるぞ……」とかぼそぼそと何か話している。まぁシンプルに俺の心配をしてくれているのだろう。

「お前が俺のことを倒すのか? お笑いだな。骨の一本や二本で済むとでも思っているのか?」

「いーや。俺は骨を一本も折られることなくお前を倒す。ところでさ」

「なんだ」

 俺はこの吉岡という男を一目見た時から一瞬で思ったことをそのまま口にした。


「お前って、デブっちょだな」


「あ!?」

 その瞬間、吉岡の後ろから何かが伸びてきた。長くて、しなりのある何かが俺の目の前に飛び込んできた。

 これは、かわせない……!

「ぐっ!」

 腹部に強烈な衝撃が走る。足が空中に浮いて後ろにぶっ飛ばされる。くっ……壁に激突して背中が痛いぜ。

「あいつ馬鹿だぜ。吉岡さんに『その手のセリフ』は禁句だっていうのによ」

「知らなかったじゃ済まされないよな?」

「ああ。これは間違いなくあいつの責任ミスだぜ」

 周りの不良共が俺のことを悪く言ってやがる。まぁ初対面の人間に「デブっちょ」なんて言ったらイカンよな。ああ、これは俺が悪い。

 だがな、いきなり得体の知れない攻撃を仕掛けてくるなんて、そいつは不意打ち以上に卑怯なことじゃないんスか?

「ほう? 俺の攻撃を受けて平気でいられるとはな」

 立ち上がった俺は服の中に隠していたグラビア雑誌を取り出した。

「グラビア雑誌シールド。こいつを腹の中に隠して置いて正解だったぜ」

「ふんっ。くだらんことを。ところでお前、俺のことをさっき何って言ったんだ?」

「は?」

「は? じゃねぇよ。お前はさっき俺のことを何て言ったんだって言ってんだよ! 俺のことを侮辱するような発言がしたような気がしたんだけどなぁ!?」

 やっこさん、かなり頭にきているな。どうやら俺のさっきの言葉が気に入らないようだ。

 ここでもう一度さっきの言葉を発すればさっきと同じ攻撃を繰り出してくるだろう。腹のあたりがジリジリと痛みやがる。ここは相手の言葉に乗らず忘れたふりをしたほうがよさそうだ。

「デブっちょって言ったんだよ! デブデブのデブっちょがぁ!」

 まぁ言っちゃうんだけどね!

「……殺す!」

 吉岡の顔がトマトのように真っ赤になっていやがる。このまま破裂して自爆してくれればありがたいが、そんなギャグ漫画みたいな展開はありえないな。

「てめぇらは手を出すなよ。この男は俺がギタギタにしてやる!」

 吉岡は俺とのタイマンをご所望のようだ。周りの不良連中は最初ハナから俺を相手にするつもりはないらしい。吉岡の攻撃の巻き沿いに食らいたくないのか、それともただのビビリなのか。

「やれぇ!」

 吉岡の背後から数本の「何か」が飛び出してきた。まるで鞭のようにしなりながら飛んでくるその「何か」を反射神経でかわす。

だが数本の内の一本が俺の眼前に迫る。このままでは鼻と歯が同時に折られてゲームオーバーだ。

「ちっ!」

 俺は手の内にカードを出現させた。カードを前にかざしてフェンリルを召喚する。フェンリルは「フェェェェェン!」と吠えながら自らの爪で前方から迫りくる攻撃を真横に切り裂いた。

「な、なんだあいつ!」

「狼だ! なんで教室狼がいるんだ!」

 俺と吉岡のバトルを傍観していた周りの連中は俺が召喚したフェンリルに注目し始めた。まぁどこからともなく大きめの動物が出てくれば人は皆マジックかトリックだと思ってびっくりするだろうさ。

「あれは……」

 それに対して俺が注目したのはフェンリルの爪によって切り落とされた部分だった。

 切り落とされたにも関わらずその先端はバタバタと浜に打ち上げられた魚のごとく暴れている。

「ほう……お前もビースト使いか」

 フェンリルの姿を見ても吉岡は驚いた様子はない。

「お前もってことは、やっぱりお前もビースト使いなんだな?」

「ふっ。せっかくだからお前に見せてやるよ」

 吉岡の後ろに隠れていたその存在が姿を現す。

 うねうねと気持ちの悪い八本の触手。その触手を操っている胴体は丸々としている。金色に輝く二つの眼、そしてその両の目の間には筒のような口があった。

 その姿はまさしく……蛸。

「これこそ、俺が最強である証明! 蛸のビースト・クラーケンだ!」

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