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第八話

「っへ?

 ああっ!

 発電()、1基ですね?

 ええ、我が社(ウチ)でも扱っておりますよ」


「いや、そうじゃなくて。

 発電()じゃなくて発電()1基です。

 あっ、でも発電機も幾つか買っておいた方がいいかな?」


「は、発電所ですか。

 発電所………

 木原、とりあえず発電機のカタログを持ってくるように伝えて!」


あまりの注文に、一瞬思考が停止しかけるが、すぐさま持ち直し、指示を出す林原女史。


「申し訳ありません。

 発電機の方は、私でもどうにかなりますが、

 さすがに、現地に発電所の建設となりますと、私では取り扱えません。

 石橋の案件になってしまいます」


「いや、とんでもない事を言っている自覚はあるから、

 別に謝る必要はないです。

 逆に言えば、石橋さんならどうにかできそうなんですよね?」


「はい、石橋なら可能かと」


ちょっと悔しそうな林原女史。


そこに、発電機のカタログが届けられる。


それを元に検討しようとすると、ケーキを全て食べ終わった(早!)姫様が声をかけてくる。


『これがあれば、電気の問題は解決するのか?』


『ええ、とりあえず電気が使えるようになります』


『そうか!それは良い。

 で、何を決めようとしているのだ?』


『一口に発電機といっても、いろいろと種類があるんだよ。

 AV機器に使えるかどうか、大きさ、重さ、稼働時間など

 いろいろと決めなくちゃならないんだ』


『だったら、全部買って実際に使ってみればいいじゃない?』


ま、まさかの大人買い。


子供が買っても大人買い。


あれ、姫様は成人しているのか?


日本なら間違いなく未成年だが…


いや、姫様が大人かどうかは置いておいて。


まさか、発電機を大人買いする日がこようとは、誰が想像できただろうか?


『全部買ってしまっていいんですか?

 結構な金額になりますが……』


『金ならある!』


はい、本家来ました。


「姫様の鶴の一声で決まりました」


「あら、随分と早いですね。

 では、どちらの機種を購入なさいますか?」


「全部ください!」


「はい、かしこまり………って、ぜ、全部ですか?」


「はい。全部です。大丈夫です。(ラバハキア王国に)金ならあります」


何だろう、今日一日で一生分の[金ならある]の台詞を使ったかもしれない。


「…お買い上げありがとうございます?で宜しいのかしら?」


トゥル、カチャ


「はい、応接室です」


はやっ、内線が鳴ったかと思った瞬間、木原さんが受話器を取る。


「かしこまりました。応接室でお待ちしております」


木原さんと、林原さんがアイコンタクト。


「どうやら、石橋が到着したようです」


「えっ、もう?」


「屋上のヘリポートに到着したので、すぐにやってきます」


コン、コン、コン


木原さんが扉を開ける。


これまた、昨日ぶり。


オッサンズの一人こと、石橋さんの登場である。


ああ、こっちのオッサンが石橋さんだったのか。


いまの今まで知らなかったのはここだけの秘密だ。


だって、一切自己紹介してないしね。


まあ、そう誘導したのは俺だけど。


「大変お待たせして申し訳ありません」


いや、東京からここまで、驚異的な早さですよ。


「林原も、対応ありがとう」


「いえ、どういたしまして」


「改めまして、こんにちは。

 [松田くん]

 私が石橋です」


そういって名刺を差し出してくる。


そうだよな。


メールを送ってくるくらいだ、


こちらの名前も調査済みですか。


「何やら、受付で揉めたらしいけれど、

 今後は、この名刺を受付で見せてくれれば、すぐに私に連絡がつく。

 できれば、メールでいいから事前にアポとってくれると嬉しいけどね」


「すみません、こんな状況になっているとは思っていなくて……

 あっ、名刺は結構ですよ。

 もう、会いに来ることもないでしょうから」


「そう言わずに、受取っておいてくれよ。

 そんなに嵩張(かさば)るものでもないし。

 もしかしたら、必要になるかもだし」


だめだな、口調は軽く言っているが、名刺を渡す気満々だ。


プロ相手にこのような駆け引きで勝てる気はしないし、ここは引いてもいい場面だ。


「わかりました。

 使うことは無いでしょうが、

 受取っておきます」


「うん、そうしてくれると嬉しいよ」


([使う事は無い]はスルーか…)

 

「そもそも、今日だって受付で、僕からのメールを見せてくれたら、

 揉めずに済んだのではないかな?」


「あっ、その手があったか!

 ん、でもメールを偽装する輩も居たのではないですか?」


「おっ!

 鋭いね。

 実は、何件かあったらしいよ。

 でも、この件関連でメールを送ったのは君だけだから、

 本文の内容を確認すれば、すぐに君だとわかった筈さ!」


試されたか?


そういえば、あのメール、数箇所おかしい所があったような…


気になったので、携帯を取り出し、本文を確認してみる。


「本・物・で・す

 なるほど、

 句読点が、カンマになっている所のカンマの次の文字を順番に読むと、

 わかるようになっていたのですね」


「ほう、それに気付いたか!

 うん、やっぱり君いいね。

 どうだい、我が社(ウチ)に来ないか?

 いい待遇を期待していいよ」


「微妙に就職をほのめかしつつも、

 どうとでも誤魔化せる言い回し、

 この時期の大学生に声をかけるのは、

 ルール違反ですもんね」


「そうそう、決して青田買いではないよ。

 もっとも、君相手なら、青田刈りしてもいいかもね。

 どうでもいい人材という意味ではなくて、

 (ライバル会社)に渡したくない的な意味で」


[青田買い]と[青田刈り]では意味が違う。

これを混同して使っている人が結構な人数いるんだよな。


「いや、自分にそんな価値はありませんよ。

 それに、今は就職を全然考えていないので」


(ええ、[就職]は全く考えてませんよ)


「そうですか、まっ、気が変わったらいつでも連絡してください。

 それで、本日のご用件なのですが」


「それですが……」


今まで木原さんと相談していた林原女史が、今までの話を石橋さんに伝えてくれる。


発電所辺りのくだりで、少しぐらい慌てるかと思ったら、

もともとレアメタル発掘関連で、インフラを整える事になっていたので、問題ないとの事。


また、AV機器についても、専用オーディオルーム担当をつける事が決まった。


あっという間にどんどん決まっていく。


これが一流企業戦士(エリートサラリーマン)の戦闘力か!


であるからこそ、解せない。


何であんな店で、商談したのだろう。


「石橋さん、一つ個人的な質問いいですか?」


「えっ!別にいいけど…

 もし、愛の告白なら僕には愛する妻と子供が居るから無理だよ」


「そんなBL展開、誰得だよ!

 ちゃうわ!」


一瞬、木原さんの目が獲物を狙う目になったような気がするが、

見なかった事にする。


「はは、冗談だよ。

 オヤジギャグってやつだよ」


「………まあ、いいです。

 聞きたいのは、何であんな場所(パンケーキ屋)で交渉したのですか?」


「あれ?

 メニア姫から聞いていないのかい?

 姫様の希望だよ。

 あのパンケーキを、あの店で食べてからでないと、交渉はしないと。

 いやぁ~大変だったよ。

 本当は、店を貸しきりにしたかったのだけれど、

 オーナーから、わざわざ遠くからウチのパンケーキを食べに来る人がいるので、

 他のお客が入れないのは困ると。

 それで、折中案として、本来予約席などないのに、

 予約席を用意してもらったんだよ。

 おまけに、あの場に居たから君もわかるだろう。

 客層が客層だから、俺みたいなオッサンには、な…」


な、なんだってぇ~!!!!


姫様の名前[メニア]っていうのか~!!!


じゃなくて、そんな理由だったのかぁ~~!!


まあ、俺としてはある意味助かったのだからいいけどね。

 

「質問はそれだけかい?」


「ええ。そうです」


「こちらから、一つお願いがあるのだけれど……」


お願い?


本当にお願いか?


嫌な予感しかしない。

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