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リューイとの出会い(ティーナ目線)?

よろしくお願い致します。




今日は森にキノコ狩りに来ました…。


ウチの村は貧乏です。食べ物は自己責任!


とはいえ、狩に出られない子供や老人も多い。


少しでも多く取れれば、みんなに分けられるから、がんばらなくちゃ!




ここは迷いの森の入り口付近。


たまにグールという魔物も出ますが、森の恵みは豊富です!


グールくらいなら、わたしにもなんとかなります。


グーウルフは群れでくるからやっかいですけどね!




「今年は森の恵みも豊富ね」


持って来たカゴもそろそろいっぱいです。一度村に帰りますか!



「ザザザッ、ザザッ」



茂みから生き物の気配、それも複数?


「普通、森の生き物は群れないのに、これは?」


そう言うが早いか、茂みから二匹の魔物が飛び出してきた!


「グーウルフ、それも二匹!」


ティーナは後ずさった。


二匹ならなんとかなる。


しかしグーウルフは群れて行動する。


二匹を相手にしているうちに集まってきたら分が悪い!




「ここは、逃げが最適ですね!」


踵を返すと、ティーナは走り出した。森の入り口側からワーウルフが迫ってきたので、その反対へ走り出した…。





「これは失敗しましたね…」


かれこれ二時間はグーウルフと追いかけっこ。


群れも八匹に増えており、最悪なのが森の奥に追い込まれている!



樹々の間をすり抜け、枝を飛び移り、グーウルフの追撃を避けている。


さすがに対立する必要もあるかな? と思った時、突然森が開けた。




ティーナの背中を冷や汗が流れた…。


開けた先には、一匹の魔物がいた!


グーウルフの群れなど比べ物にならない!、最悪の魔物、森の主グリーズベアーがそこにいた!




「一かバチか…」


ティーナは踵を返し、グーウルフの群れの中に突っ込んでいった!


グリーズベアーに比べればグーウルフの群れの方がどれほど生き残れるか!


グーウルフ達もグリーズベアーを見て怯えいた、その合間をティーナはかけ抜けて行った…。




「これでグーウルフが引きつけてくれれば…」


そう思ったティーナだが、そうは甘くなかった。


グリーズベアーは、普段から食べ飽きているグーウルフより、滅多にないティーナがご馳走に見えたのだ。




グーウルフなど歯牙にもかけず、グリーズベアーはティーナを追いかけて行った。


今度こそ生死をかけた鬼ごっこが始まった……。





ティーナは疾走した、グーウルフの群れから逃げる時の比では無い!


それでもグリーズベアーは振り切れなかった。



何時間逃げ続けただろう。


さすがに体力も限界、もう足が動かない!背後にグリーズベアーも迫ってきた、もう終わりだと思った時、森が開け遠くに川が見えた。


そして、川の前には銀髪の男の子が佇んでいた…。


「はっ…」


人がいる! 気が緩んだその瞬間、グリーズベアーの三本の腕に吹き飛ばされました…。





「きゃあっ!」


グリーズベアーに吹き飛ばされ、木に叩きつけられました。 もう、逃げる事は叶わないでしょう…。


男の子は私を見て、少し寂しそうな眼をすると、次の瞬間こちらに駆け出して来ました…。


グリーズベアーと私の間に立ちはだかり、私に逃げるように指示すると、あのグリーズベアーに立ち向かったのです!



私はびっくりしました!


その後、私と同じくらいの、人族と思う男の子がグリーズベアーと対等に戦っているのだから!



それもグリーズベアーに何度も吹き飛ばされて、生きているどころか、すぐ立ち上がるから更にびっくりです。





龍人族は頑強です、人族など比べようもありません!しかし、グリーズベアーには村の大人たちでも倒せません!



昔、村に現れた事もあったと聞きました。


その時は、村の三分の一が犠牲になったと聞いています…。


それを、私と同じくらいの男の子が、グリーズベアーを翻弄しているのです!


白髪をなびかせ、優しい眼差しで(竜人比較です)、ゆかりもない私を助ける為に!



男の子は、再三グリーズベアーの六本の腕に吹き飛ばされていました…。


しかし、恐れるどころか、グリーズベアーに強い視線を向け立ち向かいます!


ただ、少し寂しそうな眼差しを浮かべながら…。




グリーズベアーの猛攻の中、男の子は立ち止まると、不意に剣の柄を強く握りました(本当は柄の突起を押してました)。


すると、剣の先から槍が出てきました。


聞いた事があります、形が変わる剣の事を!


世界に数えるほどない剣ゆえに伝説級と呼ばれる剣です!



なぜそんな剣を?


伝説級の剣は迷い人がもたらすと言われています。


ではあの方は迷い人なのでしょうか?


グリーズベアーの攻撃を避け飛び上がると、その顔面に剣を突き刺しました。


そしてグリーズベアーはゆっくりと倒れていきます…。


そう、あのグリーズベアーを倒したのです!






今にも泣き出したい気持ちを抑え、男の子の前に駆け寄りお礼を言いました。


男の子はおごることなく、安全な場所に行こうと言ってくれます。


優しくて、他人を思いやる気持ちも持っていて、とても強い!


ただ、戦いが終わった後、また少しだけ悲しそうな眼をしていました。




男の子の名前はリューイ様とおっしゃるそうです。


大変失礼な事に、すでに成人されていました。


出で立ちもしっかりされており、この世界の方では無いと直感しました。




実は、私は迷い人を知っています。


半年前に亡くなりましたが、迷い人のおじいさんが、親代わりに私を世話してくれました…。


自分は言語学者? だと話していました。


よく身一つで旅に出ていましたが、帰って来るとどこから持って来たのか、たくさんの本や石碑を広げて調べていました。


なんでそんなに持ち帰って来れるのか聞くと、


「ワシはアイテムバッグを持っているんじゃよ」


と、笑いながら話してくれました。おじいさんの鞄にはいっぱい入るそうです! ただ、限度もあるって言ってました。


他にも、戦い方や生きるすべを私に教えてくれました。


そして、


「ティーナよ、強く生きるんじゃよ!」


半年前に、おじいさんは亡くなりました…。


そして、亡くなる時にアイテムバッグ等は村に、迷い人への手引書は私にくださいました。


私は迷い人を知っています…。





リューイ様はすごい方です。


お世話になった迷い人のおじいさんでも、この世界の言葉を理解するのに相当な時間をかけたと話してくれました…。


なのにこの若さで流暢に話されるのです!



リューイ様に迷い人の手引書を見せると、とても悲しそうな顔をされました。


きっともう戻れない故郷を思い出されたのでしょうか?



グリーズベアーとの戦いの後の、悲しそうな顔とは、比べようもない表情でした。


私は、配慮が足りないことを恥じ入りました…。


この方の悲しみを、少しでも和らげてあげられれば、その時私はそう思ったのです!




私は野ウサギを解体しました。


これはリューイ様が伝説級の剣で仕留めた獲物です。



私はまたびっくりです!


剣から槍が飛び出したのです!


こんな話は聞いた事がありません。




それよりも、リューイ様は「僕が料理するから」と言って野ウサギを受け取ると、見た事も無い方法で野ウサギを料理していかれました。


出された料理を食べましたが、口が止まりません! 何度目かのびっくりです!


とても美味しいのです。


私達は普段、肉は焼いて塩だけです、不思議な感覚でした。





そのあと、リューイ様と色々なお話をしました。


この世界の人達の話や、世界の成り立ち、竜人族の境遇を話すと、私も少し悲しくなりました。


改めて人に話すと、悲しくなりますね!


少し涙が出ました…。



リューイ様は優しく話を聞いてくれました。


話が終わると、ゆっくり寝るように言ってくれました。


しかし、ここは魔物の住む森です。


私が寝ずの番をと申し上げると、一言「大丈夫だよ、僕も一緒に寝るから」と諭すように話されるのです!


私はリューイ様を信じて寝る事にしました。




正直、相当疲れていたのでしょう。


リューイ様が寝たら、私が起きて寝ずの番をするつもりでした。


しかし、なぜか安心感からか(これでも近くに魔物が来たらすぐ目覚めます!)日が昇るまで目覚めませんでした。




身支度をし、枯れ枝に魔法で火を起こして体を温める準備をしました。


夏とはいえ、森の夜は冷えます。


しばらくしてリューイ様も起きて来ました。リューイ様は、鍋に水を入れ火にかけました。


しばらくして水が温まったら、それを器に入れて私に差し出しました。


あったかい!冷えた体があったかくなりました。


村の中ならともかく、野宿で白湯が飲めるのは嬉しいです! 日が昇っても、火は魔物を寄せ付けますからね!




その後、リューイ様から食べるようにと白いものを渡されました。


パンと言うのだそうです。


これはびっくりです!


柔らかく、甘い!そして上に乗っている卵がしょっぱく、口の中で混ざって至福です!


もう、夢中になって食べました!




リューイ様は私に服を脱いで寄こすように言いました。


昨日はグリーズベアーに追われて服はボロボロです。


脱いで渡そうとすると、リューイ様は慌てて毛布をかけてくれました。


貧相な身体つきの私を気遣ってくれたのでしょう…。



驚く事に、ボロボロの私の服をリューイ様は繕ってくれたのです!


また、後で水浴びもしようとおっしゃるではありませんか!


竜人族は水浴びが大好きなのです!




昔は、料理や入浴の文化もあったと聞きました。


しかし隠れ住むようになり、その文化や技術も潰えたと言われています。


しかし、竜人族は綺麗好きです。


水浴びは唯一の楽しみ!


あとキラキラしたものも大好きです。




日も高くなり、水浴びにはちょうどいい感じです。


私の事より、リューイ様のお背中を流さなければ!



背中を流すのは竜人族の親交の証なのです!



そう言うと、リューイ様は丁寧に断られました…。


そうですね、竜人族の親交の証とはいえ、異世界から来られたリューイ様とは文化が違います、反省です…。




茂みからイノシシが出て来ました!



リューイ様にお会いして、助けられてばかりです。


お背中も流せませんでしたし…。




少しは役に立たなくては!


イノシシを仕留める事をリューイ様に告げると快く返事を頂きました。


少しこぶりですが、二人分なら十分でしょうか?



イノシシに走って飛び乗り、首を仕留めます。イノシシは仕留めやすいんです! なかなか現れないのが残念ですが…。


後は解体、持ち運ぶにはちょうどいい大きさです。



作業が終わるとリューイ様がやって来て、アイテムバッグにイノシシを入れると言いました。


私の村にも迷い人が残したアイテムバッグがありますが、リューイ様のは相当入ると言っていました。


村のアイテムバッグはせいぜいこのイノシシ三頭分くらいでしょうか?




夕食は仕留めたイノシシです。


これもリューイ様の技で、素晴らしい仕上がりになりました!


一つの鍋で作っているのに、中身がそれぞれ味が変わるのです!


もちろん一心不乱に食べました!






リューイ様は竜人族の事を聞かれました。


実は竜人族はシッポを褒める事イコール求婚です。


リューイ様にシッポを褒められて、ドキドキしました。


しかし、リューイ様は異世界人、それに成人前の小娘に情けをかけたのでしょう。お優しい方です!




明日には村に着くでしょう。


村の人達も優しくて大好きです。


しかし、リューイ様のように、こんな小娘を、命を顧みずグリーズベアーから救って、そして親身に付き合うなんて…。


こんな強くて優しい方が他にいるでしょうか!




私はリューイ様に自分を捧げようと決めました!


こんな方ですからきっと素敵な方が現れるのでしょうけど、私はリューイ様に救われた命を捧げたいと思ったのです!



成人前の小娘ですが、親身になってお世話をしようと思い、滞在先を自分の家(これでも小綺麗にしてるんですよ!)をすすめました。


リューイ様は快く受け入れてくれました。精一杯尽くしたいと思います!


ただ、リューイ様の料理が、また食べられるかもと思った事はナイショですよ!




ありがとうございます!

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