撤退戦開始?
撤退戦開始します。
頑張って欲しいです!
僕らは撤退戦を開始した。
僕が竜の村を旅立つ前に、もう一つリプトンさんにお願いしておいたことがある。
それは緊急脱出経路の設置だ。
竜の村は絶壁で出来ている、竜人族の大人なら容易くよじ登ることができる。
しかし、子供達には素早く登る事は無理だ、どうしても時間がかかる。
もし魔物が大量に押し寄せてきたら?そう思って、村の反対側に出られる通路を作らせたのだ。
通路は村を守る壁より低い場所にあるので外からは見えない。
まず、壁を守護していた竜人達が潜っていった。日が暮れて遊撃隊が去っていく。
「分かっているな、ポチ!」
ポチはうなずいた。夜半過ぎに僕らも通路から去る。
去る際に、ティーナが土魔法で入り口を塞いで行く。ポチには、もうこの通路は使えない。
ポチは、僕らが去った後、一晩中焚き火に薪を足していった。
いかにもそこに竜人族がいるのだと思わせる為に。
「夜が明けたら、俺も逃げ出すか!」
そうポチは呟いた。
周りには誰もいないが、ポチは楽しそうに笑った。
頼りにされたのが嬉しい!そんな感情は、ポチが故郷にいる時には味わえなかったものだ。
「あそこは桃源郷だったが、生きている気がしなかったな。ここは何もないが、生きる為に支え合う仲間たちがいる」
そう独り言を言うと、朝まで充分に燃え盛るだろう薪を焚べ終え、ポチは瞑想を始めた。
夜が明けた、四日目の戦いだ。
昨日は消極的な戦いに徹して、ようやく自軍を掌握したワルターだった。
引き分けは勝ちではない、何もないでは領主ゲルヒに言い訳が立たない。悪くすれば戦犯だ!
ワルターは朝早い時間に軍を率いて、少しでも油断を誘おうと考えた。
休みが取れた兵達の士気もまずまずだ。
「打ち合わせ通り行くぞ、突撃だ!」
その時、砦の方から大地を震わせるような雄叫びが聞こえた。
巨大な茶褐色の竜が砦の中から羽ばたき、舞い上がった。
なんだあれは!とワルターが思うと、茶褐色の竜はちらりとワルターの方を振り返り、踵を返すとライオネ山脈の方に飛び立って行った。
「あれらと闘うのか…」
今更ながら、ワルターは竜人族が竜人化する事を思い出した。
魔人軍は一方的に竜人族に叩かれているのに、竜人族はまだ力を出し切っていないのだ。
魔人軍の進軍は明らかにスピードを落とす。
しかし、この時彼らは知らなかった。砦の中にはもはや、竜人は一人としていないことを…。
茶褐色の竜はポチだ。
囚われの身となった時は、強制的にエネルギーを注ぎ込まれて、膨大なエネルギーに耐えられず竜化していた。
そうしなければ自分が壊れていただろうと思う。
リューイに解放されて、自我を取り戻した。
自我を取り戻した自分なら竜化が出来るとポチは考えていた。
しかし、竜化するにはエネルギーを蓄える必要があった。
なので戦いに参加せずにエネルギーを蓄えていた。そして今、ポチは竜化することに成功した。
「さて、リューイ様達は森を進むと言ってたな、俺は川沿いを進むとしよう」
レッドドラゴンになったポチは、女子供達が進んだであろう道の上を飛んで行った。
そして、ライオネ山脈を越える手前で人の姿に戻って着地した。
「ありゃ、考えてみたらリューイ様達より早く着くじゃん!ここは一発、朝寝かな?」
仕事をやり終えたポチは、近くの草原に横たわると、イビキをかき始めた…。
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