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魔人族との戦い?

長い時もあります…。


翌日、ついに魔人軍は竜の村に流れる川沿いの対岸に到着し、陣を張った。前衛を歩兵で固めて、後方に騎馬隊が布陣している。


「はっはっは、竜どもにしては中々な砦ではないか!ヤツらは、逃げるか守るかしか知らんからな。少しは楽しめよう」


領軍長のギャバンは、そう言うと前進の指示を出した。そう、三日前に着いていたなら、ギャバンの思う通りになっただろう。


しかし、もはやかつての竜人族ではない。そのことをこの後、ギャバン自らが知ることになる。


偵察隊によると、騎馬隊に速度を合わせた為(歩く馬に合わせるだけでもかなりのスピードだ)、歩兵達はかなりの強行軍だったとの報告を受けている。

先鋒の歩兵達の様子を見ても疲れきっているのは明白だ。


「まずは.出来るだけ数を減らしたいな」


勝つ算段はしてある。要はいかにして竜人族の被害を少なくするかだ! さすがに被害ゼロとはいかない…。


あちらは1000人以上、こちらは500人しかいない。数の差は勝敗を決める、数をイーブンにまで持っていきたい。


「仕掛けよう、罠を効率よく使う為に」


そう言うと、僕は遊撃隊に指示を出した。


遊撃隊は三つの門から出て、魔人軍を迎え討つ陣形をとる。手にはさまざまな石の武器を握っている。


「バカな、竜人族が戦おうとするなど聞いた事がない!」


副長が唸った。はぐれの竜人は、逃げようとはするが、捕まえれば抵抗した事がない。


過去の文献にも「竜人族は神殺しゆえ、その罪により他者を傷つける事を禁じられた」とあり、副長もそれを信じていた。


「何か、気になります。一旦進軍を緩め、様子を見た方が…」


副長はギャバンにそう進言した。ギャバンは、

「数にして100程度、どうせヤツらを囮りにして逃げる算段でもしておるのだろう。全軍進撃だ更に速度を速めよ!」



ギャバンの指示に従い、歩兵は速度を上げ川の中腹に進む。


今は真冬で乾季だ。川の水位も低く、流れも緩やかなので進撃は容易だ。


副長は罠の可能性を示唆するが、ギャバンは一気に歩兵を前進させた。



歩兵が川の対岸を上がり出した頃、それは起こった。


「鉄砲水だ、にげろ!」


副長は叫んだ。しかし、幅広く先行した歩兵達のうち、およそ200人は川に流されて行く。


「悪辣な!」


ギャバンは唸った。さすがにギャバンでも分かる、このタイミングで鉄砲水は人為的な物だと…。


戦闘不能の歩兵がこれまで300人、今の鉄砲水で200人、残ったのは半分。騎兵は無事だ!


「まだ問題ない、進むだけだ!」

ギャバンは叫んだ!


対岸にたどり着いた歩兵は、ざっと200人はいるだろう。鉄砲水が引くまではまだ少しかかる。


「今のうちにヤツらを片付ける。遊撃隊、行くぞ!」


僕は遊撃隊に指示した。中央は僕、右の隊はティーナ、左はリプトンさんが指揮をとる!


相手は倍だが疲労の色が見える。こちらは精鋭だ。

今まさに竜人族が受けて来た不当な境遇を晴らさんと、魔人達に襲いかかる。


「恨みは何も生み出さないというけど、ちゃんと生み出してるな。自分達の誇りを取り戻す為の、狂気を超える熱意を感じる」


そう、僕は感じた。倍の数をものともせず、竜人達は押し返している。


相手は鉄の剣と鎧で襲って来るが、こちらは石の武器だけ。


しかし、膂力は疲労した魔人軍とは違う上、重い鎧もないので相手の攻撃は簡単に避けられる。それと遊撃隊には必ずツーマンセルで敵に当たるように言ってあるので、お互いをカバーし合い致命的な失敗は犯さない。


石の武器は殺傷力は低いが、打撃力は高い。

なので、死者は少ないが戦闘不能が続々と生まれる。

対岸の魔人軍はそれをまざまざと見せつけられるのだ!


「おのれ、水さえ引けば!騎馬隊、用意しろ」


ギャバンは唸った、それに副長が進言する。


「落ち着いて下さい、どうもおかしい。あの竜人族が戦っているのです!まだ何か…」


そう進言する副長をギャバンは殴り飛ばした。


「お前のような腑抜けに用は無い!見ろ、水も引いた。今こそ蹂躙してやる!お前は歩兵の再編成でもしていろ!」


そう言うとギャバンは騎馬隊を連れて駆け出した!


あらかた敵をなぎ倒して、遊撃隊は中央の僕の元に集まった。これは事前に打ち合わせてある。


中央の門は開けたまま、その前に100人が陣形を組む。

僕は先頭に立ち、ティーナとサム、カイの兄弟が僕の後ろに控える。

ちなみにポチとヴァルちゃんは第二陣で砦に待機中です!


ギャバンを中心(先頭では無い)とした騎馬隊が傘形に僕らの元に向かって来る。


「頃合いだな」


川を越えたあたりでティーナに指示を出す。


ティーナを除いた竜人達が、騎馬隊に火の魔法を山なりに打ち出す。

それを防ごうと騎馬隊は防御魔法と盾で防ごうとする。その隙にティーナが土魔法を使った。


もともと僕らの布陣している前には大きな落とし穴を作ってある。

それを竜人族が蓋をして土魔法を使って強化してある。


その強度は人がその上で戦ったところで、落とし穴に落ちたりしないが、ティーナが魔法で蓋を弱くした。


その上、馬と魔人の重みを持つ騎馬隊が殺到したのだ。蓋は簡単に壊れ、騎馬隊は穴に飲み込まれて行く。

幅は10メートルはあるだろう、そこに将棋倒しに騎馬隊が落ちて行く。


「おのれ、おのれ〜!」


赤い顔をした、ひときわでかい軍人が叫んでいた。あれが司令官なのだろう。


「布告も無しに攻めて来たのはそっちだ。降伏するか?もし撤退するなら追撃はしない。軍をまとめて帰るがいい!」


ここまではうまくいった。出来ればこれ以上のことはしたくない。僕がそう言うと、


「我らに降伏?笑わせるな!お前らは我らの富だ、我らの物だ!貴様らこそへりくだって我らに従え、そうすれば死ぬまでは生かしてやる。死んだ後も我らの役に立たせてやるがな!さもなければ蹂躙し尽くしてやる」


そう言うと指揮官らしいヤツが下卑た笑いを見せた。


ヤツが言うのは死後も宝珠として使ってやると言っているんだろう。仕方ない、そう思って僕は右腕を上げた。


砦の壁の上に一斉に竜人達が並ぶ。手には石の槍を持っている。


「まだこんなに?」


騎馬隊の中から言葉が漏れた。僕は右腕を下ろした。相手の思惑とは逆になるが、騎馬隊の蹂躙が始まった。


落とし穴の前に急停止した騎馬隊は密集している。

そこへ壁の上から石の槍が降り注いだ。ギャバンの周りの騎馬隊が次々に倒れて行く。


「くそ!こんな事になるとは!」


周りを見渡すと、無事なものはいない。馬は暴れて逃げ出す、乗っていた兵士は地面に叩きつけられるか、引きづられて行くかだ。


そこにまた石の槍が降り注ぐ。


ギャバンの周りの騎馬隊は全滅していた。他の騎馬隊も槍の攻撃を恐れて近寄ってこない。


「一度、撤退だ…」


踵を返そうとするギャバン。自分が何故無傷だったのかなど、思いもしない。


「逃げるのか?部下を死なせて」


不意に声がした。ギャバンは振り返ると、そこに銀髪の少年が立っている。


「貴様はさっきの…」


そう言うと、ギャバンは獰猛な笑みを浮かべて剣を抜いた。さっきまでとは違う、手の届くところに敵がいるのだ!



「最後通告をしよう。捕虜か死か、好きな方を選んでいい、その為にお前だけを残したのだから。貴様らに虐げられて来た竜人達の気持ちを味わうがいい」


リューイはそう言ってオーガソードを突き出した。ギャバンは、


「そっくり返してやる。我の前に姿を現した事を後悔させてやる」


リューイとギャバンは向かい合う。リューイは手にオーガソードを握り、ギャバンは馬上で大剣を構える。


「もらった!」


そう言うとギャバンは馬で突っ込んで来た!それを避けるリューイにギャバンが切りかかる。


両者の剣が重なり、鈍い音が響く……。


馬が過ぎ去り、ギャバンが呟く。


「粘るな、そう来なくては」


リューイは、ギャバンの本質を感じた。ただのバトルジャンキーかよ!と、


「あんたに従った部下は、すでに壊滅状態じゃないか?あんた、他にやる事あるんじゃないか?」


そう言うとギャバンは、


「お前らや部下が何人死のうが関係ない、俺の楽しみの為だ。強者が弱者を蹂躙する、この楽しみを奪うヤツは許さない、お前もな!」


そう言うと、ギャバンは足元で呻く歩兵を馬の脚で踏み付ける。


ちょっと見ない、腹立たしい光景だ。コイツは生かしてやる価値がない、僕はそう思った。


「馬から降りろ、対等に潰してやる」

そう言うとギャバンは、


「ゴミが対等だと?身分の差を教えてやる。馬上から切られて、這いずるがいい」


そう言ってギャバンは僕の方に馬で突進してくる。僕は槍モードにしたオーガソードを馬の後ろ足に突き刺した。


ギャバンは馬に振り落とされた。勢いよく振り落とされたので、剣を手放し転げ落ちた。



ギャバンの首元にオーガソードを突き立てた。


「犬のようになって剣を拾ってこい、それとも、今死ぬか?」


ギャバンは真っ赤になりながら、這いつくばって剣を取りに行った。


「千載一遇のチャンスを逃したな…」


ギャバンはそう言って立ち上がる。しかし、何故か僕は負ける気がしない。


渾身の力を込め両手で剣を振りかぶり、渾身の一撃を加えようとするギャバンをかいくぐった。そして、僕は真下からギャバンに向かってオーガソードを振り上げた。


ギャバンの両腕が吹き飛んだ。


「腕がぁ、俺の腕があああっ」


ギャバンはのたうち回りっている。僕はサムとカイを呼んだ。



「けじめをつけさせてやる」


サムとカイに向かって、僕はギャバンを指差した。


サムとカイは自分の村を目の前で蹂躙された。悔しかっただろう、一矢報いたかったに違いない。それでも掟に従ったのだ!だとしたら、トドめは二人の役目だろう。


二人はヤリを構えてギャバンに近づいていく。


「来るな、助けてくれっ、」


ギャバンは無い腕を前に出しながら後ずさろうとしている。


「父さんや姉さん、村のみんなの仇だ!」


そう言って、二人はギャバンにヤリを突き立てる。しばらくしてギャバンは息絶えた…。


「一旦、砦に戻る」


僕がそう言うと、遊撃隊は砦の中へ帰って行った。


この戦いで、敵の半数と指揮官らしい人物を倒した。しかし、まだ敵の方が数は上だ。それでも、今の戦いを見れば簡単には攻めて来ないだろう。


「リューイ様ありがとうございます。家族や村のみんなの仇が打てました。これでみんなも浮かばれると思います」


サムとカイだ。目に涙の跡が見えるが、顔は晴れやかだ。僕は二人に近づいて頭を撫でてやった。


「敵はまだ残っている。これからも手を貸してくれ」


そう言うと、二人は笑みを浮かべながら頷いた。


砦の壁の上に哨戒を立てて、僕たちは休憩を取る。


季節は日本でいう年末に差しかかっているだろう。温暖な気候とはいえ夜は冷える。


僕らは大量の鍋料理を作り暖をとる。


鍋料理とは言っても、ここは戦場だ。ただ栄養価の高いものを煮込んで味付けしたものだ、それでも充分に美味しい。


敵はこの寒空の下でも火をおこしていないようだ。食事も味気ないだろう。


僕たちは、これでもかと言うぐらい焚き火を焚いている。


こうすることによって、後ろの住宅兼ガケに明かりが反射して、壁の向こうを照らしてくれる。哨戒も篝火要らずだ。


哨戒は遊撃隊以外が三交代制にして行う。遊撃隊は撤退の際しんがりを務めるから、休めるときに休ませる。


「リューイ様、今日はお見事でした。皆も溜飲が下がったと喜んでいます」


そう言ってティーナは僕の横に座った。アメジストの瞳が焚き火を受けてきらめいている。


「皆のおかげだよ、それに始まったばかりだ」


そう、始まったばかりなのだ…。


僕たちは三日間ここを死守しなければならない。

先に逃がした竜人族が安全を確保する為に必要な時間だ。

今も彼らは休むこと無く進んでいる事だろう。


「油断はできないが僕たちも休もう。まだ戦いは続く、休めるときに休ませてもらおう」


そう言うとティーナと二人で家に帰って行った。たぶん、この戦いが終わったら二度とは帰る事のない家へ……。



読んでいただきありがとうございます。

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