女神に異世界に飛ばされる?
続きます!
大震災が起き、やっとの思いで家族を見つけた。
海辺に打ち上げられた家族を乗せた車を覗いたら、中でみんな死んでいた……。
希望を失った僕は力尽き、瞼を閉じた。
このまま僕も死ねば、また家族に会えるかな…
意識を失って、どれくらい経ったのか?
僕は、目を覚ますと、あたり一面真っ白な場所にいた。
「ここはどこ…」
そう口にすると、目の前に人の大きさくらいの、白いモヤが出て来た。
「お目覚めですね…」
白いモヤが話しかけてきた…。って、幽霊?
そのモヤはだんだん濃くなっていって、最後は人の形になった…。
「この方が話しやすいでしょう…」
モヤは美しい女性になって、僕に話しかけて来た。
「ここは天界です。私は地球で言う神と呼ばれる存在です。あなたには頼みたいことがあるためここに呼びよせました…」
あー、僕は死んだのか…。
「あなたは死んでいませんよ?」
女性は優しげな声で言った。
「だって、死んだからここにいるんですよね…」
たしか、最後は疲れきって倒れたはず、だからここにいるんじゃないの?
「呼び寄せたと言いましたよね、あなたは死んではいませんよ。まぁ、こちらを見てください。」
そう言うと、僕の前に楕円形の鏡のようなものを用意した。
「今、見ているものは、あなたのいた場所です。4つの肉体の内、三っは亡くなっていますが、ほら、あなたは息をしてるでしょう? 幽体だけをこちらに呼んだのですよ…」
鏡の中では両親と妹、そして僕が映しだされていた。 かなり弱っているが、まだ息をしているように見える…。
「理解して頂けましたね。このままだと、あと数時間もすればあなたも亡くなるでしょう…」
確かに虫の息だ、あんなところでは助けも来ないだろう…。
「そこで、これからあなたにとってプラスとなるかもしれない話をさせていただきますね」
そういうと、女神様はテーブルと椅子を用意した。
「ではお掛けください。
現状を説明させて頂きます。現在、あなたの地で言われる南海トラフ沖地震というものが発生し、死者100万人、負傷者200万人が発生しております。あくまで概算ですが…。
問題は、一瞬で100万人の死者が出たことです。
これは増える事はあっても、減ることはありません」
そりゃ、負傷者が、亡くなったら増えるよなぁ…。それにしても100万は桁が違う!
「そんな大規模な震災になったのですか!」
「そう、大規模なのです…。通常は、大きくても5千人前後の被害なんですがね」
そう言うと、女神は深くため息をついた。
「そこで、異世界の神の力を借りてでも、早急に対処したいのですが、見返りを求められましてね…」
神の世界もビジネスライクだなぁ…。
女神はため息をつきながらお茶の用意をした。
「僕に何かしろと言う事ですか?」
さすがに話の流れで分かる、女神は言い辛そうに話した。
「他の神の世界に行ってもらいたいのです!
その世界では種族差別が激しいらしくて、でも神が直接関与もできないし…。
それで、それを解決まで行かなくとも緩和する役目を持つ人物を斡旋してほしいと、それが今回手伝う条件になったのです」
けど、それって…。
「なぜ僕に…?」
そう問われて、女神が首を捻っている…。
「そうですね、生きている人間で、それなりに頑丈! べつに居なくなっても問題ない人! 条件的にはあなたがピッタリなんですよ。」
ちょっとイラッと来たが、そんな僕を他所に、女神は更に続けた…。
「ほら、今、魂の選別に忙しくて、他の地を探してる余裕がないじゃないですか、だから近場で手っ取り早く調達しようと思ったら、ちょうどあなたがいた訳です!」
えらい言われようだわ! 更にイラッと来たけど、ほっといてもその内僕、死ぬらしいし…。
けど、言われっぱなしもなぁ…。
「明らかに僕にメリットありませんよね」
女神はすまなさそうに話した。
「そうね、あなたにとって申し訳ないことだと思うわ。
けど、誰でもいいというわけではないの…。
さっきは言い過ぎたけど、ある程度の資質がないと色々と問題が生じるのよ!
それにあなたにも、最低限の助力はさせてもらうし、そう、あとあなたに関わる人たちの魂を最優先で対応させてもらうわ」
メリットは無いわけではないらしい、あと関わる人って?
「関わる人ってどういうことですか?」
「あなたのお父さん、お母さん、妹さん、すでにお亡くなりになっている方々を、最優先で天国にご招待させていただきます!」
うーむ、ある意味人質取られた感じがするなぁ。
とは言え、このままだとどうなるんだろう。
「もし、僕がこの話を受けなかったら家族はどうなるんですか?」
「ご家族の順番は、妹さん、お母様、お父様の順で、94万8531番から33番の順で采配する事になります。
ちなみに天国の枠が約15万人、輪廻転生の枠が少なく10万人、地獄の枠が約50万人、75万人が地球で処理できる限界です…」
あんなに面倒見てきたのに、徳を積まず地獄行きばっかり…! と、女神がぶつくさ言っていた…。
「後は最後の手段として、手伝ってもらった神々の世界に転生枠10万人、これが手配可能な限界です。今の所85万人が手いっぱいですね!」
「うちの家族はその枠から外れます、どうなるんですか!」
「あぶれた魂は一週間で対処できなくなります!
まぁ、そうならないように、ほかの神々を説明して転生枠を増やすつもりではいますが…、魂だけだとその内消滅するか、地縛霊になりますかね…」
このままだと家族の魂は消滅するか、地縛霊って嫌すぎる!
「わかりました、その条件を受けましょう。
ただし、先に家族を天国に送ると言う約束を形で証明していただくということは可能ですか?」
「それは、もちろんお約束致します。よろしければ書面も交わしますよ!
万が一、履行されない場合には地球の神の名にかけて賠償をお支払いします。」
「お役所かっ!」
つい、勢いで突っ込んだ!
「ごめんなさいね、こんなケースは初めてなのよ。
死者の数もそうだけど、この事態に対応できない私が不甲斐ないわ…」
責任感か、それとも罪悪感か、女神はとても辛そうな顔で呟いた…。
「それはともかく、了承いただいたと言うことでよろしいですね! ご両親と妹様は当方が責任を持ってお預かり致します」
「そこまで言っていただけるなら、恐縮です。」
まぁ、両親も妹もこのままでは消えてしまうし、飛び越して天国入りなら親孝行になるだろう!
僕もどうせあと数時間で死んで魂も消えてしまうはずだし。
まぁ、家族の天国行きが決まるならいい話だね!
「では、こちらにサインをお願いします!」
おもむろに女神が一枚の紙を取り出した。
「内容は、ご家族の魂を優先して天国に送る事! ただし、あなたの命の保証は致しません! なぜなら管轄外の世界に行くので、私には責任取れませんから!
分かったら、さっさとサインしてね!」
う〜ん、言ってる意味は分かるけど、またイラッと来た!
「分かりました、他に選択肢もないし…、これでいいですか?」
サインした紙を女神に渡す…。
紙を受け取ると、女神が改めて頭を下げた…。
「ありがとうございます!リンネ、リンネちょっと来て頂けますか!」
地球の女神は「リンネ」と言う異世界の女神を呼んだ…。
「はーい、なんですか〜!」
リンネと呼ばれた女性がやってきた。ツインテールになぜかメイド服? 少女、いや美少女といってもいいだろう。
髪はブラウンでツインテールに纏め上げ、まつ毛はクリッと長く、その瞳は金色に輝いていた。
「この方が、あなたの世界に行く候補の方です。いかがですか?」
地球の女神はリンネにそう伝えた。
「う〜ん、良いですねこの物件! これなら私も気に入りました。奮発しちゃいますよ!」
「物じゃ無いんですから」
地球の女神はそういうと肩をすくめた。
「悪い子じゃないんですけど、言い回しがちょっと気になるところはご容赦ください」
そういうと、地球の女神が軽く頭を下げた。 お前の言いようも大概だけどなっ!
「では、私は席を外しますね。今、本当に忙しいので」
そう言うと、地球の女神はリンネを残しその場で消えていった。
「自己紹介がまだでしたね。
私はリンネと申します。この星とは別のある星の臨時管理者になります。
あくまで臨時ですので権限は少ないのですがよろしくお願いいたします」
そう言うと、リンネはエプロンドレスをちょこんと持ち上げた。
「で、僕に何を望むのですか」
そう言うと、リンネはうーむとうなづきながら答えた。
「そうですね、あなたには私の管轄する星に、とにかく居て欲しいんです。
理由は地球の神が話した事くらいしか、今は話せません。何故なら、知らない方がいい事もあるでしょ!
俺TUEEEEEEE! 女神様に認められちゃったしね!俺って○○だから!ってフラグ立てて、周りからボコられて死にたく無いでしょ!
コッチの仕事が終わって戻ったら、ちゃんと教えます。
てか、仕事多過ぎ!」
そう言うとリンネは肩で息をしていた。
「要するに、あなたが戻ってくるまで僕はそこでとにかく生きてろと」
そう言うと、リンネはにこやかに微笑んだ。
「そう、とにかく生きててね。
あなたが居てくれるだけでも特異点の発生が遅れるから重要な事なのよ! ほら、私もいないから色々とヤバくてさぁ〜!
戻るには時間がかかるかもしれないけど、こちらの仕事が終わったら必ず行くから。
それまではあなたが思うように生きていてね。
ただし、名前は伏せておいて。龍はまずいから、そうね「リューイ」はどうかしら、前の名前に近いし」
いきなり改名か、
「なんで龍の名前はまずいんですか」
そう言うと、寂しそうにリンネはつぶやいた。
「これは、行けばわかるわ……」
何やら事情があるようだ、行けば分かるという事は、そちらではポピュラーな話しということか!
「あと、あなたには加護を与えるわ。
そうね、今の私にできる事は3つかな。
1つは「フィジカルブースト」
2つ目は「ナビゲーター(案内人)」
3つ目は「異世界グッズ」
です。
フィジカルブーストは、貴方の精神力によって、身体能力が向上します。あとは、あちらの世界でナビゲーターに聞いて下さいね!」
リンネから加護をもらえるらしい。しかし、「異世界グッズ」って、略しすぎだろ…。
「…分かりました、向こうで聞いてみます」
「ありがとうございます。あと、これが「異世界グッズ」よ、中身は開けてのお楽しみ!」
そう言うと、リンネは麻袋を僕に渡した! よく肥料とかが入っているヤツだ!
…麻袋は無いだろう……。
「では、あちらに送るね。
基本的に安全な所に送るから……。最後に一つ話しておくわ。
私はそちらの世界にいっても、世界に干渉する力がないの、地球の神も言ってたでしょ!
だからあなたに行ってもらうの、私と違って二本の足であの地に立てる!それだけでもあの世界に干渉しているわ!
ごめんなさい、私に出来る事は、あの世界では少ないのよ……。」
そうつぶやくリンネは少し寂しそうだった。 ごめんなさいは誰に向けたものなのか…?
ツインテールをなびかせて、何かしらの言語をリンネが呟く…。
「じゃぁ、行くよー!」
その瞬間、僕の視界は白く包まれた。
「行きましたか!」
地球の女神は呟いた。
「えぇ、彼は行きました。
彼は、異世界人の多い街に転移させましたから安心でしょう…。
彼があの世界で良い影響力となってくれるはずです…。
地球の女神よ、ありがとう。」
そう言うと、リンネは今までが嘘のように、凛とした佇まいを見せた。
「そうですね、彼の旅が幸多からんことを」
と、地球の女神は呟いた。
女神の部屋で、リューイがあちらの世界に送られている画像が流れる…。
「あ、弾かれた、やべ!」
リンネは呟いた。
リューイが大気圏で弾かれた画像が流れる…。
何者かに転移を邪魔されたらしい。
「ヤツだよね〜、気づくの早いよっ!」
どうやらリューイの転移は何者かによって邪魔されたらしい…。
地球の女神が心配そうにしていると、
「とりあえず、あの星には着きそうだからなんとかなるっしょ!今からじゃどうにもならんし、ドンマイドンマイっと」
リンネはテヘペロしながら言い切った…。
よろしくお願い致します。