ライオネ渓谷?
よろしくお願い致します。
「これがライオネ渓谷!」
渓谷の中を覗くと、僕は唸りました。
ライオネ山頂は、山頂でくっきり二つに分かれてつ、そこに渓谷があると聞いていましたが、山と谷では大違い!
渓谷を一目覗けば、山頂までは可愛い魔物と戯れるだけのピクニックです!
「この渓谷を渡るの?」
渓谷の中には、巨大なムカデや、壁をハイスペック巨大いも虫(あの体でマジ俊敏です)が蔓延ってます!
異様に脚が長い蜘蛛(蜘蛛って通常タイプより脚が長いタイプの方が気持ち悪いよね!)が巨大な巣をつくって、右手を上げてウェルカムしてるよ!
なにより、台所が大好きなあのGが、渓谷を我がもの顔でを飛びかって、いも虫やムカデを捕食してる…、あれはカオスだね!
某アニメの腐海の森? 生優しいわっ!
あれだけの害虫、蠱毒でも造ってるのかって言うくらい気持ちの悪い渓谷でした……、ティーナのおじいさんこそ最強なのでは?
「今日はもう休もっか…」
僕は現実逃避しました、すいません…
山頂を少し降りたところに岩がでっぱって窪みが出来ている場所があったので、今夜はそこで夜営です。
標高三千メートルの山頂、丈の低い植物しか生えていませんから周りは殺風景です、その分…
「リューイ様、星がきれいですね…」
そう、空を見上げれば満面の星空、星に手が届きそうだ…、そう錯覚させるほど星々が強い光を放っている!
ここでティーナの肩に腕を回せれば…、左腕が疼く……、そんな左腕を右腕で押さえる…、そんな僕はチキンです……
そんなこんなで、星空の下で僕達は夕食を取った、今夜のメニューは鍋です。 山頂だから寒いんだよねっ!
ひと心地つきました、左腕も落ち着きました…
さて、蠱毒渓谷の攻略法の打ち合わせです。
それにしても、よくティーナのおじいさんはこの渓谷を渡って生き残ったもんです、それも往復二回ですよ!
手記には「大変だった…」とだけ書かれていました…
それはそうでしょう、そうですとも!
攻略法を教えてなんて言えません。アレ見たら僕だって一言で終わるわ!
「さて、ライオネ渓谷の攻略法を考えようか」
ティーナと攻略会議です。
「さすがにアレは厳しいですね…」
ティーナがげんなりしながら言った。アレと言うのは虫達の群れのことだろう、僕も同意見です!
「見る限り、何故か虫達は渓谷の外に出ようとしない。と言う事は、出られない理由とかがあるのかな? まぁ、渡る方法は三つしかないけどね、大きく渓谷を迂回するか、又は虫達と直接対決! 後は、これが一番なんだけど、対岸まで橋を作る!」
「ハシとは?」
ティーナ達の概念に橋はない…
だって竜人族にとって、川は橋を架ける物ではなく、渡るか飛び越えるか、そもそも川に落ちて濡れるのが嫌って概念が無い!
川に落ちたらそのまま水浴びし出すしね!
「橋とは、渓谷の向こう側とこちら側を真っ直ぐに結ぶものだよ、下に降りられないのなら上を行けばいい。この渓谷を向こう側まで渡るための道を作ると思えば良いよ」
そう言うと、僕は橋の概念とこれからの計画を話した。
渓谷の間は、この付近で最短が約200メートル(ちなみに全体では、最長は2キロに及ぶ。全てナビさん情報)。
ナビさんの試算では、対岸まで僕かティーナなら2キロの重しをロープに付けて投げれば届くとの事。
この付近は丈夫な葦が取れるので、それでロープを作れば可能だとナビさんが計画を立ててくれた。
翌朝、さっそくロープ作りに取り掛かった。
安全性を考えて、二本のロープを渡す。
対岸の何かに重しを絡ませてロープを張り、向こう側に渡る計画だ。
葦は山脈を少し降った森の中に、大木に巻き付いていたのですぐに見つかった。
その中で太く丈夫なものを選んで二本作る。
おもりは、硬い石をティーナが鉤爪状に加工してくれた。さすが竜人族!
鉤爪と言うよりは指を軽く曲げた手のようなものだ。手首の部分をリング状にしてロープを結ぶ、これを二本作った。軽く曲げた手のような鉤爪が交互に噛み合ったらロックして外れないような仕組みも施してある。
準備が整ったので、ベストポジションに向かう。渓谷の間隔が短く、かつ対岸に丈夫な突起物がある場所だ!
ベストポジションに到達。対岸には大きな岩、こちら側には僕達を支えるのには充分な大木がある。
「二人一緒に投げて、岩の向こう側で交差させる。引っ張って、鉤爪がうまく引っかかればOKだ。後はこちら側の大木に結んで橋の完成だ!」
二人で息を合わせてロープを投げる。対岸の岩の後ろまで届いたようだ。
ゆっくり引っ張る。
急に手ごたえを感じた! 「カチッ」って言う手答えも感じた、仕掛けが作動したのだろう。
何度もやる事になると思っていたが、まさかの一発成功!
あとは、こちら側の大木にロープを括り付けた。簡易橋を作ることができたんだ!
橋は出来た…。
しかし、この後に一悶着があった。どちらが最初に橋を渡るかだ。
「私が渡ります、リューイ様は道を作るって言いましたが、これは歩けません! 魔物が襲ってきたらどうするんですか、私が渡って安全が確認したら渡って下さい」
僕がどんだけ説明しても、ティーナは頑として先行を譲らなかった。
これはダメだ、目がマジだ!
実は今回の件、どちらをとっても危険です。
先行した方は無事渡れるか?
後から渡る方は、蔦の強度が落ちるので、最後まで無事渡りきれるか?
「わかったよ、ティーナに任せる…」
実は最初からティーナに先行は任せるつもりだった。
日本のロープなら僕が最初に行くが、強度が不安だった。
ナビさんも強度に関しては、
「やってみないと分かりません。十分に強度はありますが、渓谷の下にいる虫達という不確定要素がある場合は保証できません」
と言っていた…
僕がティーナに先鋒を任せると、ティーナは嬉しそうに渡る準備をし始めた。
僕が教えた通りに、腰のベルトを外して、一方のロープを中に入れてベルトを閉じる。
少し空間を開けておく。カルビナ代わりだ。
ティーナはロープを渡り始めた。
順調だ、200メートルの距離をものともせず、10分程で渡りきった。
たどり着いたティーナは笑顔で手を振った。
次は僕の番だ。
同じように、ウエストポーチのベルトを外してロープを通して閉じる、そして渓谷を渡った。
渓谷の途中まで届いた時、真下から炎弾が飛んで来た。!
「何だっ!」
魔物は魔法を使えない、僕と同類だ。
だから安心していた…
しかし、まさか火を吹く魔物がいるとは! それもGのヤツがだ!
確かに、地球では別名「油虫」だっけ? そいつが火を吹きやがった!
「不味いっ、火はやばいっ!」
そう、火は不味いのだ。
いくら耐久性のある蔦とはいえ、所詮は植物。
それも青々していた頃ではなく、カラカラに近い時期だ、だからこそ固くしならないから橋としての役割を果たすんだが、火がついたら、簡単にファイヤーロープです!
Gの炎の一発が蔦に着弾成功!
いとも簡単に、そこから燃え広がります。
僕は必死になってロープを渡りますが、ついにロープが耐えられず、嫌な音と共に切断! 渓谷に真っ逆さまに落ちていく…
渓谷に落ちていきながら、ちょっと安堵している自分がいた…
「ティーナじゃなくて良かった…」
絶体絶命の中、それとは別に安堵感を感じながら、僕はライオネ渓谷の中に吸い込まれていった…。
ふと崖の上を見上げると、真っ青なティーナの顔が見えた…
「リューイさまぁ!」
そう叫ぶと共に、渓谷に自らダイブするティーナ!
この現状で何ですが、ティーナさんちょっと自制して下さい。
あなたがついてきたら意味がありません!
そこは、崖の上から僕を心配して震えてるシーンでしょ、なぜ自ら飛び込む?
渓谷を落ちながら僕はもがく、ムカデの牙を躱し、Gの炎をすり抜け落ちていく…、たまに飛び込んで来るいも虫を蹴飛ばしながら、しかし落下は止まらない…
「まぁ、このままだと墜落死だな」
妙に楽観的な自分がいる。そうか、僕は死にたいんだな…
死ねば家族のもとに行ける…
あぁ、何故か納得した…、震災前の日常にはもう戻れない…、けど、やっぱり家族と一緒にいたいんだ…
落下の加速は早まるばかり、周りにはムカデやGが集まって来ている…
まぁ、墜落死もムカデやGに喰われるのもそう変わらないか…、僕は虫達に囲まれながらそう思った……
「リューイさまああぁっ!」
今にも虫達に食べられそうな僕を、一陣の風が救った。ティーナだ!
ティーナは僕の頭を胸に抱えると、そのままかばうように虫たちの群れを躱して落下していった。
何故か背中に光る羽が見えた気がした、気のせいか?
さっきまで死を納得していたのに、ティーナに抱かれ、安心している自分がいる…。矛盾だな…
安心したせいか?落下の衝撃で脳に血が廻らないせいか、僕はそのあと意識を失った……
ありがとうございます!




