僕とティーナと二人旅?
よろしくお願い致します!
僕らは村を出た。
実は、龍人族の村からライオネ山脈(龍人族の故郷に向かう道)へは、道が無い!
なぜなら、より凶暴な魔物がいるから、侵入させなくしているんだ。
ただ、魔物は水が苦手のようで、川と絶壁に囲まれた地に村を作ったのは、それが理由だってリプトンさんから聞いた。 もちろん、村長になる人に伝わった話だから、事実は分からないけどね!
魔物が出にくいと言うから、僕達は川沿いを上流に進む。竜の里に向かうには2ルートある。
一つは迷いの森を抜けて、魔人族、亜人族、人間族、そして迷い人達の街を通って竜の里に向かうルートだ。
この世界は4分割されている…、されたと言った方がいいらしい…。 神の怒りによって!
田の字にして、左下が魔人族、左上が亜人族、右上が人間族、そして右下が龍人族の故郷になる。
今、僕達は魔人族の領土にいる、そこから多種族の道を通るんだけど、一番安全らしい…。 ただし、これは大きく逆Uの字を進むルートだ。
正直、どれだけかかるか分からない!
なぜそんな手間をかけるかと言うと、魔人族の領土と竜の里のある土地にはライオネ山脈という険しい山脈がある。
そして、その山頂を起点に山脈がぱっかり二つに分かれて深い渓谷が出来ているのだ。
ちょうど、田の字の十の部分が深い渓谷だね!
深い渓谷が出来た理由は、女神を亡くした竜の神が、その哀しみから慟哭し、山を割いたと言われている。
ただ、魔人族と龍人族の故郷の間にある渓谷は魔物がとても多くて道のりも険しい。 次に険しいのは人間族と龍人族の故郷の間らしいけど、魔人族側に比べればマシだって!
他の種族間ルートは魔物も少なくて、行き来がしやすいらしいって話。
龍人族の故郷だけが他種族との間に厳しい壁が
ある。
だから魔人族は昔、竜人族に攻め込む際に、亜人族と人間族(当時、迷い人の街は無い)を経由して、まだ入りやすい人間族方面から軍を進めたと言われている(ナビさん解説)。
もう一つのルートは簡単だ。ライオネ山脈を縦に最短で突っ切るルートだ。
魔人族から龍人族の故郷に渡るルートだね! そこが険しい山脈で、更に山がパッキリ二つに割れて、深い渓谷が出来たんだって…。 標高三千とか、渓谷深さ1キロとか(ナビさん調べ)って、キリマンジャロが遠足登山に感じるわ!
でも、言語学者のおじいさんはこのルートを使ったと手記に記されていた。
このルートは最も過酷だ、竜人族ですら途中で断念したと村長は言っていた。おじいさんの手記と合っている。
ティーナと話し合った結果、僕らは最短ルートを選択した、おじいさんの選んだルートだ!(おじいさん、一体何者? 龍人族すら忌避するルートを単独でって!)
ティーナは拒んだが、ティーナを人前に出させない事も一つの理由だ。
しかし、おじいさんに出来たのだ!!
僕らに出来ないはずはない! 後はおじいさんの味噌への情熱と、僕の米モドキへの情熱。
どちらが勝るかだ!
負けてるような気がします…。
川沿いを進み、僕らは山脈に入る手前で最初の野宿をした。
周囲の警戒はナビさん任せ、久しぶりに登場したナビさんは、ブツブツ言っていた。
「最近、出番が少なかった…、ようやく出番が来たら地味な仕事… 、夜には話相手もいない…、むしろ魔物呼んだろか…」
物騒な事言わないでください!
確かに竜の村ではあまり使って無かったけど…、だって村長やティーナ、村の人達が居たから、話相手に不自由しなかったんだもん!
火をおこし、簡単な料理を作る。
4次元ポーチからイスを取り出して火を囲む。今夜のメニューはシシ肉のシチューとナンみたいなもの、二人でそれを食べた。
今は二人だけ、僕はティーナに聞いた。
「そういえば、村長から何か受け取っていたね」
そう言うとティーナは腰に刺した二振りの剣を見せてくれた。
ティーナは僕が知る限り、素手の戦闘スタイルだ。
「村長から受け取りました。おじいちゃんから預かっていて、私が成人になったら渡して欲しいと頼まれていたそうです。見ますか?」
そう言うと、ティーナは二振りの剣を僕に渡した。
おじいさんは、これを頼りに旅をしたのだろう。
僕はティーナに手渡された二振りのうちの一つを、鞘から抜き出した。
枠曲した幅広い刀身、アラビア映画に出てきそうな剣だ。
「これは、いわゆるサーベルってヤツだね! それが二対、どちらも切れ味は良さそうだ。」
久しぶりにナビさんが説明してくれた、久しぶりだからか、ちょっと長い…
「これは、迷い人がもたらした伝説級の品ですね。迷い人は何かしら恩恵を受けて現れると言われます。
この、迷い人がもたらした剣は、効果として切れ味が高く、自己修復機能を備えておりますね…。
ご主人様がお持ちのオーガソードにも同機能が備わっております。
しかもこの剣、魔法伝導率が高いようですね。これは最近になって後付けされた機能のようです…、前の持ち主がその能力を持っていたのでしょう、龍人族には無理ですから」
きっと、残したティーナの為におじいさんが付与したものだろう。
僕はそう思いたかった…、それにしてもおじいさん何者?
一通り特長をティーナに説明し、僕は言った。
「この剣はティーナを守ってくれるだろう、だっておじいさんの思いがこの剣の中に宿っているのだから。
ティーナはこの剣を大切にしないとね!」
おじいさんの気遣いを聞いて、ティーナは涙を流しながら、二振りのサーベルを抱きしめた。
「まずは使い方を知らないとね!僕にも少しは使い方がわかるから、明日から少しずつ教えてあげるよ」
僕は多少、刀が扱えます…。
僕には祖父がいました。 気難しくて、頑固な祖父でしたが、それでも僕は可愛がってもらいました。
ただ、道場の師範なんかやっていたので、人に厳しく教える事は出来ても、「甘やかす」と言う単語は祖父の辞書には記載されていませんでした。そんな祖父でも僕は孫です!心から可愛がってやりたいと思っていました…
両親は共働き、僕は祖父に預けられていましたが、祖父は孫の扱いに困ってました…。
「どうすればよいかのぅ? 儂には刀を振ることぐらいしか能がないからのぅ…」
そんな三歳の時、たまたま竹刀を転がして遊んでいる僕を見かけて、
「そうかそうか、刀が好きか、ワシも大好きじゃ! そうじゃ! 刀でならワシも言葉を交わせるのぅ!」
そう、孫とのコミュニケーションの手段として祖父は刀(剣術)を選んだのです! 孫を可愛がってやりたい気持ちは分かりますが、その方向が斜め上に突き進んで行きました…
そして、僕は三歳の頃から祖父に剣術を叩き込まれることになったのです!
三歳児なのに、最初から真剣を使いやがって!
「やはり、竹刀ではいまいち言葉が伝わりづらくてのぅ」
小学校で剣道の授業を習った時、みんな竹刀を使ってたので、祖父に聞いてみると、「真剣の方が孫の気持ちが伝わるんじゃ!」と、大笑いして話してくれました。
三歳児にポン刀使わすなよ!
小さい頃から、剣術の基本やら心得やらを祖父に教えてもらったからだろう。
グリーズベアー戦の時も、自然に体が動いたっけ、今なら祖父に感謝もできるかな?
ちなみに祖父は今でもピンピンしてるはずです! まぁ、僕が異世界に行っちゃったので祖父が今どうしているかは分かりませんが…
遠くから元気でいることを祈ってます…、なんせ肉親はもう祖父しかいませんしね…
さて、翌朝からさっそくティーナと剣のおけいこです。
ティーナは魔物の皮と裏地を麻で出来たファーフード付きの白に近いハーフコート(グリーズベアーの皮で丈夫です)
その下には同じく皮のスリムパンツに絹製のシャツを着ています。
もちろん僕のお手製ですよ!
そして、腰には二対のサーベルを下げており(鞘とベルトもあります)、なかなかの出立ちです。
まずは剣に慣れる為、サーベル一本でおけいこです。
祖父の教えに従い、僕とティーナは互いに真剣で斬り合います。
もちろん技量が違うので、ケガなどそう簡単にはしません。祖父の時と同じです!
しかし、真剣の恐怖は伝わります。
「今日はここまで」
まだ十数分しか経っていませんが、体力があるはずのティーナでも今は肩で息をしています。
真剣の恐怖と、いつ切られるかという緊張感は、案外体力を削ります。また、龍人族はずば抜けた体力がありますが、真剣での勝負は精神も削ります、精神が削られると体力の消耗も激しい…
これは自分の格上と戦う為の訓練にもなります。
それでも初めての打ち合い、十数分持ったティーナは凄い。普通なら数分持てば良い方だからね!
「お疲れ様、朝食にしよう」
ティーナは枯れ木に魔法で火をつけます。僕はそこに鍋をかけました。
今日の朝食はパンとスープです。
パンと言ってもアレしかありませんが、スープはちゃんとつくりました。
実は祭りや普段の生活で大量の骨やクズ肉、野菜クズが出たので、それを煮込んで大量にスープのベースを作ってあります。
それが異次元ポーチに大量に入っている訳ですわ!後は具材を鍋に入れて火にかけるだけ。
ティーナはアレのパン(もうラピ○タパンって突っ込むのがめんどい)が大好きです!
今日も嬉しそうに、はむはむしています。
僕はとっくに飽きています、しかし食べない訳にはいかない。いつかパンの発酵も出来るようになれば良いんだけど、昨日のナンみたいなのが今は精一杯かな?
なにより、僕は朝食は米派です!
お米モドキへのモチベーションが上がります!
食べながら今日の予定を決めていきます。
「まずはライオネ山脈の山頂を目指すとして、どうしようか?」
「そうですね、山脈から川が流れてます。それに沿って進むのがいいかと」
ティーナは、川沿いを進めば森の中より視界が確保できるし、魔物が出ても準備の時間が持てると話した。
その通りだし、ティーナのおじいさんもそのルートを選んだと手記には書かれていた。
もともと僕もそのルートを選ぶつもりだった。しかしお互いの同意は大切だよね。
「うん、そのルートで行こう。あと、水浴びも出来るしね!」
ティーナはパンをはむはむしながら目を輝かせた。
竜人族はとにかく水浴びが大好きだ、暑かろうが寒かろうが、川に氷がはろうが入るらしい。
僕には無理です!
竜の村に戻ったら風呂文化を広めよう、最重要かつ最優先事項だ! 心に固く誓います…
食事を終え、荷物を片付けて、僕らは川沿いを遡ってライオネ山脈の山頂を目指します。
途中、グールが現れます、ティーナさんがサーベルで一刀のもと片付けます。
サーペント(毒蛇)が現れます、ティーナさんが袈裟懸けで輪切りにします。
ホワイトタイガーが現れます、ティーナさんが真っ二つに…。
「サーベルって便利ですねっ!」
笑顔でそう言うティーナさん?
サーベルは武器ですよ? 簡単に扱える道具じゃありませんよ…? 僕はもう、剣術を教えるメンタルが枯渇しました…。
その後も、朝に剣のおけいこ、そのあと魔物をなます切り、時に水浴び(もちろん入浴シーンは見ませんよ、まだ輪切りにされたくないですから!)、そしてナビさん任せで就寝。
そんなルーチンをこなすこと一週間、ライオネ山脈の山頂に到着しました……
ありがとうございます。




