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敵は料理か?

よろしくお願い致します!




翌朝、あらためて村の中を見て回った。


垂直の崖に、等間隔で無数の穴が開いていた。多分、50個はあるんじゃないかな?


入口は同じ茶色の布がかけてあり、遠目では分からないだろう。


崖から200メートル程離れたところに、並行して川が流れている。


これが生活水か。川の向こうには森が広がっている。




しかし、この生活レベルで布や、昨日読んだ手記に使われている紙はどうして手に入れているんだろう?



ティーナに聞いてみた。


「半年に一度くらい行商人が来ます。

竜人族と取り引きするなんて危険なので、とても信頼できる人ですよ!

そういえば、そろそろ来られる時期ですね」





信用! そう、昨日ティーナに聞いたのだ。竜人族がこんな辺境で、穴蔵生活をしなければならない、もう一つの理由を!



竜人族は死を悟ると人知れず消える…。


その理由は、死後に珠に帰るかららしい。


それが目的で、捕まったり殺された竜人族がとても多いとティーナは話していた…。



ナビさん曰く、その珠はその美しさもあるが、この世界で一般的に使われる魔法(僕は使えないけどね!)のブースターの役割をするらしい。


魔物も魔石と言うものを持っていて、同じ働きをするけど、龍人族の珠は格段に性能が違ってて、もっぱら戦闘用の魔法の杖なんかに使われているそうだ!


ちなみに魔物の魔石は、よほどじゃないと戦闘用には向かないらしく、生活用魔石として広く使われているって教えてくれた。


だから、龍人族の珠を見つけたら、仲間同士で奪い合いになって、殺し合いにまでなるのはよくある話らしい…。




この地に来るまで、たくさんの龍人族が迫害され、捕まり殺されたとティーナが話してくれた…。



当時は、竜人族は捕まったら最後まで奴隷として働かされ、死後は宝珠として取り上げられて、道具として扱われたって話だ…。


龍人族からしたら、死後も物になって、迫害したものの為に働かさせられるんだから、更にそれが龍人族に向けられるとしたら! 人知れずに死のうと思うのは解るよね!




「その行商人はどのくらいの付き合いなんだい?」


「そうですね、その一族とはもう数百年の付き合いと言われています。元々は私達の王族の親戚筋で、亜人に嫁いだ者の末裔と言われています」


そうか、血の繋がりがあるわけだ、納得。 信用できる訳だね!




「そういえば、料理を振る舞うんだよね、村長達だけ?」


有力者だけって訳にもいかないだろうけど、僕一人では限りがある。


「いえ、村人みんなにも振る舞って頂ければ…」


しかし、作るのは僕です!


「何人いるの?」


「…、150人ほどです…。」


ティーナの声が小さくなっていった…。


村の人口150人くらい! VS キャンプ用調理セット!


初めから勝負になりませんね…。


小さくなっていくティーナ、とはいえ150人? さて、どうする?





僕は村長の元に向かった。


そして、おじいさんの部屋(今は僕が使っている)にあった紙とペンを使って図面を引いた。



「これを石で作って欲しいのですが、無理なら岩でもいいです、できますか?」



大きさは身振り手振りで伝えました。150人分を作る鍋とか料理器具です! それこそ、東北地方で芋煮祭りの鍋サイズ! あれは千人単位だっけ?


無理だと言わせて人数を絞る作戦です!



「このくらいなら何とかなるでしょう。大人は狩に出かけていますので、村に残る女子供にでも作らせましょう!」


おい、マジか、即答か!


てか、デカイぞ、石だぞ、加工だぞ! サイズもハンパないぞ! それを女子供でって?




驚いていると、ティーナが説明してくれた。


「竜人族は土の魔法が得意なのです。竜人族の膂力と土の魔法を組み合わせれば、はいこの通り!」


ティーナは近くにあった丸い石を指でくり抜いていた。


竜人族との喧嘩はやめましょう、マジ温厚で助かったわ!





村長の力を借りて、村の皆さんに、丈夫で大きな石をくり貫いて作ってもらった。


とても大きな石鍋が大中小(小で直径1メートル)の三つが出来た。


素手で石掘るなよ!


グリーズベアーも瞬殺だろ!(できないらしいが?)


あと、一枚石の鉄板替わりなども作ってもらいました…。





しばらくすると大人達が狩から戻ってきました。


大人一人でイノシシ三頭担いで、そいつらがワラワラ帰って来ました…。他にも、男の子達が森の恵みをいっぱい抱えて、多過ぎませんか?


川原に食材のマウンテンが出来ています! 見上げる僕の首が痛い…。




とりあえず、解体は村の人達に任せました。解体は無理です、しかもこの量!


解体された肉は、バッグの中に入っていたナイフで切り分けます。


このナイフが物凄く切れるんです! さすが神仕様、研ぎもいりません!



一番小さい石鍋に酒(酒は果実を使って作ってるらしい)と塩、胡椒(これは自前です)、香草、果物を混ぜた液体を作る。


これに様々な肉を入れ、漬けておきます。




中くらいの石鍋には骨を砕いて布に包んだものを入れ、水で満たし沸かします。 


ダシ作りです!


村長に大きな布をもらいました。布はこれ専用にすればいいだろうと思います。これからも使うだろうしね!


アクが出るので僕はそれを担当した。


ティーナには、森の恵みを貸したナイフで切ったり皮を剥いたりしてもらう。


村に来るまで手伝ってもらっていたので要領は得たようです!


それにしても手さばきがするどい、手元が見えない!





村人にも手伝ってもらってます、さすがに150人分は間に合わないので、下ごしらえは村人に任せます!


モツを川で綺麗にしてもらう。


森の恵みの下処理、洗ったり、皮をむいたり!


果物は味見して分量を合わせて、潰して搾る。


混ぜたら水で薄めてジュースの完成だ!


元々、森の果物は甘味が強いので、水で薄めた方が喉越しがいいし、ちょうどいい甘さになる。




一番大きい鍋に、煮立たせたダシを半分(これは竜人族にやってもらった。熱くないの?)注いで、ティーナがさばいた森の恵みの根菜らしきものを入れる。


それに水を足して火をつける。


肉は後だ、最初から入れたら硬くなる。



ダシが残る中鍋には、モツと香草を入れて火にかける。


後は塩と胡椒で味付けだ。


いわゆる塩モツ煮だ…。


竜人族にはモツを食べる習慣が無い、これだけで少しは食料問題が改善されるだろう。





後は大きな石鍋だ。


これには芋やユリ根のような根菜をたっぷり入れてある。


これは昨日のうちに村長にお願いしていた。


食料事情を聴くと、どうしてもバランスが悪い。野菜は少なく、肉に特化していた。


なので肉と野菜の主食を用意してみた。


薄切り肉を大量に入れ、その後に葉物を投入。煮立ったら味噌と塩で味付けすれば完成だ。





手伝いを終えたものには村長の指示で食器を作らせた。


皿とデカイお椀だ!


箸やスプーンなど無いので、竹らしい植物を縦に4頭分させて、お椀から口に入れる道具を作った。


意外とお碗からすくいやすい、これはティーナで試してあるのでつかえるだろう。


大きな石鍋の火を落とし(石鍋だから簡単に冷めない)、味噌と塩で味付けした。


悪くは無いだろう。


後はメインだが、それは出来立てを食べてもらいたい!






村長に合図を送った、宴の始まりだ!


「皆のもの、今日は新しい仲間を紹介しよう。

我々は半年前に大切な友を失った。

彼は我々に大きな遺産を残してくれた。

それは今日の料理という物に生かされているという。

詳しくは味わってみて判断して欲しい。

また、我々は新たな友を迎える事が出来た。

紹介しよう、今日の料理を伝えし新たな友人、リューイ殿だ!」


歓声が上がる!


大きな拍手も、歓迎してくれているのだろう、とても嬉しいです。


ただ、風向きが変わり、料理の匂いがしてくると皆そちらを向きやがる…。


ティーナ、お前もか!




「ご紹介にあずかりましたリューイです。

私は異世界から来ました。仲良くしてください」



そう言うのが精一杯だった…。


昨日、寝る間を惜しんでスピーチも考えたんだ!


けどダメだ、完全に風向きが変わった。


皆、顔はこちらを向いているが、目が、泳いでいやがる…。


口からはヨダレが滝のようだ。


大切な事だから二度言う。 ティーナ、お前もか!





「最後に一つ、食べ方は村長に聞いていると思うので、メインはこれから焼きます。

出来上がったら、村長の指示に従って取りに来てください。

その時は皿を忘れ無いように。では召し上がってください」




そう、蜘蛛の巣を散らすとはこの事を言うのだろう。


言い終えた瞬間、目の前は広場だけでした…。





鍋の方を見ると次々に料理をよそっています。


集団で瞬間移動ですか?


ダブルオーナ○ンですか?


今日も日差しが眩しい。


あれ? 天気雨が降って来て、僕の頬を伝うよ!





気をとりなおし、石板(鉄板では無い)に向かった。


一番小さい鍋の中を覗く。


「頃合いだな!」


そう言うと石板の上に油(獲物の脂肪を熱し、布でこしたもの)をひいて、鍋の中の肉を取り出して焼いていく。



一度に15人分を焼く!


全員に行き届く為には最低10回は繰り返さないといけない。


しかし焼き時間は5分くらいだから問題は無いだろう。


そう思うと目の前にティーナが立っていた…。




「お疲れ様ですリューイ様、私も手伝います」


そう言うとティーナは微笑んだ。


「まだ食べてないんだろう」と、気を使って食べてくるようにティーナに言うと、


「えっ、食べましたよ!

モツは噛む感触すら掴めずに口の中でとろけ、美味でした。

味噌仕立ての鍋の味と言ったら、天にも登りそうな味わいでした!

あと、口直しのジュース、甘くて美味しかったです」


はいっ、コンプリートしてますね!


この短時間で、僕が演説終わって今まで五分も無いと思います。


今、ティーナさんの視線は一番最初に焼き出した肉にロックオンです。


また、天気雨が降ってきました…。




心の扉に固く鍵をかけ、平常心でティーナに向かいます…。


「しょうがないな、これ食べたら手伝ってね!」


肉を返しながらそう言うと、さっきまで何も持っていなかったティーナさんの手にお皿が乗ってました…。


もう、心の中は土砂降りです。


そして、気が付けばティーナの後ろに長い列が出来ています…。


五分ですよ!


心の中はゲリラ豪雨です!




その後は肉を焼き続けました、 ただ修行僧のように…。


肉を食べ終わった(口の中でもごもごしてます)ティーナさんが石板に肉を乗せ、焼き上がった肉を僕が渡します。


ルーチンをただこなす、簡単なお仕事です…。


これって、僕の歓迎会だよね?





ありがとうございます。

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