火と水と氷
フィーリアとお爺さんとお婆さんの3人で森の外へ出て魔法の実地訓練だ。
先日夕食の際、フィーリアからお爺さんとの訓練の内容を聞き、お婆さんが怒った。それも凄い勢いで。
いい加減な教え方は危険だから、お婆さんが教えお爺さんはサポートに回されることになった。
お爺さんは必死にいい訳してだけど全く聞いて貰えなかった。
「最初は火魔法からだよ。火よ、灯れ。はい、やってごらん」
「んっ、「火よ、灯れ」。出来たー」
差し出した小さな指先に火がゆらゆらと灯っていた。
「一旦、魔力を止めてその火は消しなさい。それで次は、火よ、球となりあの的へ飛んでいけ、ファイアーボールと唱えるんだよ。あの爺様に向かってね」
「えー、お爺さんは大丈夫なの?魔法は人に向かって撃ったら危ないからいけないって、お婆さんが自分で言ってたよー」
「大丈夫だよ、フィー。爺様は人外だからね。2、3発くらい撃ってもへっちゃらさ。さあ、ドンドン行こう」
「火よ、球となりあの的へ飛んでいけ、ファイアーボール、ファイアーボール、ファイアーボール、ファイアーボール、ファイアーボール」
「よっ、はっ、とっ、ほうりゃ、そいっ」
「お爺さん凄ーい。全部避けちゃった!!」
「爺様よ、避けてたら的にならないじゃ無い。何とかおしっ」
「仕方無いのー。婆さん。無茶振りが酷いぞ。じゃあ、次はこれでやるから。フィー、撃ってきなさい」
「火よ、球となりあの的へ飛んでいけ、ファイアーボール、ファイアーボール、ファイアーボール、ファイアーボール、ファイアーボール」
「ほい、ほい、ほい、ほい、ほいっとな」
「はー、やっぱり爺様は人外だねぇ。剣を振るだけで普通は消せないんだけど」
「お爺さんは人外人外。キャッキャ、キャッキャ」
「あれー、お婆さん。人外ってなあに?」
「それはね、人から外れたもの。つまり、化け物とか爺様みたいな普通じゃ無い人のことを言うんだ。分かるかい?」
「んー、何となく分かった」
「ほんと酷い婆さんじゃよ。自分でやらせといてこれだもの。わし、がっくしじゃ」
「フィー、じゃあ次は水魔法いってみようか」
「・・・」
「さっきの火の時と呪文は同じだよ。最初に火や水や氷等の元素を、次にどんな形でどこに向かって、どうしたいのか唱えるんだよ。これが魔法の詠唱の基本だからね。ちょっと難しかったかい、フィー?」
「だいじょーぶー。何となく分かったよ、お婆さん」
「じゃあ、やるね。水よ、球となりあの的へ飛んでいけ、ウォーターボール」
「ほいっさ」
「上手く出来たじゃないか。次は氷だね。球の所は礫に変えてやってごらん。氷は重いから小さな石をイメージした方が上手くいくんだ。最後の台詞はアイスボールでいいからね」
「あいっ。氷よ礫となってあの的へ飛んでいけ、アイスボール」
「ほいっほいっほいっ、うほっ、つべたいっ?!」
「あらっ、小さい氷の礫が一杯バラバラになって飛んでいったわね。フィー、どうやったんだい?」
「うんとねぇ、えっとねぇ、礫が小さいから一杯あるイメージにしたの。ダメかなー」
「いいえ、大丈夫よ。フィーはえらいわね」
「ほんと天才じゃのー。これならそのうちファイアーボールもウォーターボールもいくつか同時に撃てるようになるんじゃないかの。孫が賢くて辛いわ。ウオッホッホッホッ」
ここに爺馬鹿極まれり。まだまだ馬鹿っぷり続きます。