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第1話 秘封倶楽部の日常

「………子、蓮子…、起きなさい」


誰かが私の名前を呼んでいる。

どうやら、いつの間に眠っていたようだ。

「……ん、あれ、メリー。どうしたの…?」

目の前で呆れた表情をする彼女に私は尋ねてみた。

「どうしたの?じゃないわよ。降りる準備をしないと」

「降りる準備って…?」


現状を把握するため周囲を確認する。

私は今、路線バスの車内にいるようだ。

バスは峠道を走っていて、窓の外には緑の大自然が広がっている。

すると聞き慣れた案内チャイムとともに車内アナウンスが流れた。

次に通過する停留所の名前を聞き、ようやく思い出す。


「そうだわ、降りないと…!」

「本当に忘れていたのね」

降車ボタンを押し、私達は急いで荷物をまとめてバスを降りる。


今日は私達“秘封倶楽部”の活動日。

目的地はこの山奥深くにある博麗神社だ。



―3日前 大学のサークル室―


「博麗神社…?」

「週末に行くわよ。メリーもとくに予定ないでしょ?」

メリーは不満げな表情を浮かべていた。


私とメリーは秘封倶楽部という大学サークルで活動をしているが、部員は私達2人しかいない。

活動内容はオカルトの調査や都市伝説の実証など多岐にわたる。

それだけ聞くと一般的なオカルトサークルと何の変わりもないだろう。

しかし、1つだけ他のオカルトサークルと比べて大きく違うところがあるのだ。


「そこは前にも行ったけど、何もなかったじゃない」

「今回はもっと詳しく調査をするのよ」

博麗神社には以前にもメリーと2人で訪ねたことがあった。

その時は結局何も見つからなかったのだが…。


私の友人であり、秘封倶楽部のもう一人の部員である彼女の本名はマエリベリー・ハーン。

名前が発音しづらいので私は普段から彼女をメリーという愛称で呼ぶことにしている。

彼女は“結界の境目を見ることができる能力”を持つ。


様々な場所に存在する結界の綻びや境目を見れる能力。

正直に言うと、そんな便利な能力を持っているメリーが羨ましい。

だが、本人の意思に関係なく常に結界が見えてしまうのは難点かもしれない。


これが他のオカルトサークルにはない大きな違いだ。

オカルトに特化した彼女の能力を使って、秘封倶楽部は今日も()()()()を続けている。


「もちろん、来てくれるわよね?」

「蓮子がどうしてもって言うのなら…」

メリーはため息を交えながら応えた。

このパターンもいつも通りだ。

私が突発的に活動内容を提案するとメリーは不満を口にするが、それでも付き合ってくれる。


「メリーは本当にいい子だわ」

「母親みたいな台詞を言わないで。それより、第3ゼミ室の教授のところに行かなくていいの?」

「……ん?今日はとくに呼び出しは…」

そう言いかけて、ふと思い出す。


確か、教授から課題レポートを作るようにと言われていた気がする。

「もしかして、レポート提出の締切って今日まで?」

「締切まであと1週間もあるからと言って余裕ぶっていたのは、どこのどなたかしら?」


世界中に散りばめられている“封じられた秘密”を暴くために結成したサークル、秘封倶楽部。

さっそく次の活動を始めたいところだが、どうやらその前にやるべきことがあったらしい。

私は鞄から()()()のレポートファイルが記録されたUSBメモリを取り出し、教授が待つ第3ゼミ室へと向かうのだった。

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