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#002 ょぅι゛ょからのプレゼント。




「―あれ?」


 目が覚めると、そこは穏やかな草原だった。


 青々と茂った草、緑に染まる森。吹き抜ける風が俺の頬をなでてゆき、心地よい気分にさせられる。

 どこからか、遠くの方から聞こえてくる鳥の鳴き声。穏やかな森の中に、自然と生命をはぐくんでいた。


 そして気づくと、俺はその草原の真ん中に一人、立っていたのだ。


「な、なんだ、ここ?」


 顔に困惑の表情を浮かべ、俺は辺りを見渡した。

 

 ふと空を仰いでみると、雲一つない晴天が広がっている。太陽が明るく大地を照らし、その眩しさに俺は腕で影を作ると、目を細めた。


 その太陽は、明らかに野外であることを告げている。

 それを見て、俺は頭を抱え込んだ。

 

(ど、な、なんで!? 何でここにいるんだ俺ぇ――ッ!?)


 ここにいる理由、それを俺は思い出そうとする。


「そうだ! 俺、確かゲームにログインして……それで突然意識が無くなって、で」


 ──俺は、ここに立っていた。


 (な、何がどうなっているんだ……?)


 困惑の表情を浮かべ、誰となしに呟く。

 純粋に考えれば、ここはゲームである、で一応説明はつく。

 しかし、俺は疑問せずにはいられなかった。


 ──ゲームの世界に(・・・・・・・)何故五感があるのか(・・・・・・・・・)


 風が頬をなでる感覚。それを思い出し、俺はそっと頬を触った。

 しかし、帰ってきたのはぷにっという触覚だけだ。指で突られている、という感覚のみが俺の手にも頬にも伝わり、楪はますます表情を曇らせる。


(なんだ、これは……まるで、現実のようではないか)


 俺の頭に、その言葉が反芻する。

 そして俺は、指を顎に当て、表情を渋りながらゆっくりと一つの解を口に出す。


「まさか、ここは……異世界か!」

「いえ、ちがいます」

「うっひょっほいっ!?」


 反射的に両手を上げて、変な叫び声をあげ驚いてしまった。恥ずかしい。

 

 顔を朱に染めながら、きょろきょろと辺りを見渡し声の主を探すと――そこにいたのは、煌めく長髪を持つ、金髪の美少女だった。

 薄桃色のワンピースを身にまとい、純白さの印象を与えるかのような美しい女性。もし地球にいたとすれば、たとえ世界三大美人すらその美貌には敵わないだろう。そう思わせるほどの魅力が、彼女にはあった。

 ……ただし、だ。


 身長が五十センチほどしかないということを除けば、だが。


「……」


 絶句した。


 驚いて声も出なかった。いや、俺が極度のロリコンをこじらせていてそんな小さな少女に性的興奮を覚えてしまうが故に見惚れていたとか、そういうことではない。断じてないのだ。


「? ……あの」


 突然動かなくなってしまった俺に、彼女はおずおずといった調子で首をかしげる。下から目線で顔を覗きこまれ、そのあどけない表情に俺は不覚にもときめいてしまった。


 ――いやちょっと待ってほしい。 いや、ロリコンじゃないから、通報しないで! その携帯電話をしまって! お願い!


 ……ふぅ。

 取り乱してしまった。


「あのぅ……」


 心配そうにこちらを伺う少女、改めてその少女のことをよく見てみる。

 すると、うるうるとうるんでいる可愛らしい瞳、小さいお鼻、ほのかに桃色に染まる唇。色白の肌が、より一層その少女の魅力を際立てていた。


「あのっ!」

「うおぉっ! びっくりした」


 その声に驚き、声を荒げたその少女の方を見てみると、胸の前で気合いを入れるように両手に握り拳を作っている姿を見つける。

 声を荒げたからか、頬も紅潮しており、少女は俺を見てきっと睨みつける。しかし、少女が睨みつけている姿は逆にかわいいだけにしかならず、思わず俺は頭を撫でた。


「えへへー、きもちいいですぅ……ではなくて!」


 少女はそんな俺のことをぷりぷりと怒り出す。

 そろそろ話を聞かないと本気で嫌われてしまいそうだと思い、今度は話を聞くことにする。


「どうしたの?」


 俺は極力、近所の優しいお兄さんっぽく話しかけてみた。

 

「どうしたもこうしたもありましぇ……ありませんっ!」


 あ、噛んだ。

 舌足らずが災いを呼び、少女は言葉の途中で噛んでしまう。しかし、突っ込まないでおいてあげるのが本当の優しさだ、これは心の内に止めといて気づかなかったことにしよう。

 ……録画しとけばよかった。


「またちゃんとはなしをきいていませんっ! いいですか!」


 少女は人差し指を立てた右手を俺の前に出し、左手を腰に当ててほっぺを膨らませる。

 ぷぅぅぅ、という音が聞こえてきそうだ。すると、少女は言った。


「ここは、げーむのせかい(・・・・・・・)、なのですっ!!」

「まぁ、順当に考えればそうだよなぁ」

「……あれ、いがいとおどろきがちいさい?」


 というか、自分も異世界なんてことは信じてなかったし、一番現実味のあるその言葉を待っていた、というのもある。

 ……いや、もしかしたら異世界なのでは、だなんて期待してはいないですよ。全然まったく。


「と、いうわけで。――どうもこんにちは、ぷれいやーさん。わたしは【あしすときゃらくたーべーたつーがた】、こゆうめいフミです。わたしが、あなたをあしすとします」

「こ、こんなかわいい子が……アシストキャラだとぉぉお!?」


 この少女がアシストキャラだなんて信じたくもなかったが、何故かそうだと(・・・・・・・)納得できてしまったのだ。くっそ何考えているんだ運営! いくら払えばゲーム内に現界させることができるんだッ! どこに払えばいいっ!?


 ――余談だが、空に向かって大声で叫んだ時、少女が薄っぺらな胸を張って「えっへんです!」と言っているのが聞こえたような気がした。




「おちついたのですか」


「……あぁ」


 少女はおずおずと尋ねてくる。

 俺は呻くように返事をすると、手で頭を押さえるようにした。頭が痛い。

 しかし痛みもなくなってきたので、押さえていた手を外して会話に応じた。


「ではあらためまして……」


 こほん、と少女は咳払いすると、佇まいを正して俺を見据える。


「わたしはフミといいます。ここでは、ぷれいやーさんをみちびくしごとをしています」

 

 少女――フミは、言葉をためて言い放った。


「そう、ちょうど貴方のような」


 瞬間、背筋に悪寒が走る。


 そのニュアンスには、まるで上から見下すような、ひどく冷たい感情が込められているように感じた。

 相容れない存在、知ってはいけないものを知ってしまった感覚。そんなものが俺の身体を駆け抜けて行った。

 しかし、それは一瞬のことだ。


「……?」


 そして気づくと、今までと変わらない表情でそこに佇んでいた。


(何なんだ、一体)

 俺はひどく気にはなったが、触らぬ神に祟りなし、という言葉を思い出し、開けてはいけないパンドラの箱を開けるのは自分の仕事ではないと気付かないふりをした。


「む。な、なんですか」

「……いや、なんでもない」


 だから俺は、そっとフミの頭に手を置き撫でてやる。

 するとフミは、目を細めて気持ちよさそうに猫なで声を上げたのだった。


「ふみゃぁぁ……」


 あぁ、これは可愛い。

 ダメになっちゃう。このままずっと撫でていたい。というか、お持ち帰りしたい。

 はぁう~、かぁいいよぉ!


 ……って、そんなことじゃなくて。


「ゲームの世界? っていうと――」


 俺が思い浮かべたのは、あの有名なラノベの、ゲームに幽閉されるやつだった。も、もしかして、俺も百階層までクリアしないとログアウトできないのだろうか。


「……あなたがいま、なにをそうぞうしているのかしりませんが、とりあえずあなたがおもっているようなことにはなりません。そのよだれをふいてください」


 俺は舌打ちを鳴らした。

 まぁでも、よく考えてみたらそれはそれでいやだな、と俺は思った。


「それで? だったらこれはいったい何なの?」

「そうせかさないでください、ちゃんとせつめいしまひゅ……します、から」


 また噛んだ。

 おそらく俺が急かしたからだろう、フミもこちらを見るときっと俺を睨む。

 なんだか、今までの殺伐とした空気が一気に和んだ気がした。


「いまからせつめいします。よくきいていてください」


 フミが言うには、こうだった。


 VRヘッドギアモニターディスプレイ――それは、国家機密であるとある開発技術を使用してつくられたゲーム機器のことらしい。

 そのため、発売は日本限定。


 で、この機器は電波信号を脳波信号と限りなく同一体にし、神経の信号をゲームコントローラーの電波信号に互換して動かしているらしい。

 ……何を言っているのか分からないと思うが、まぁ簡単に言うと、“ゲームのコントローラー=脳みそ”ということだそうだ。


 つまり、俺が足を動かそうとしたとする。

 すると、脳は足に動くように『脳波信号』を送るわけだ。

 しかし、それをVR装置で無理やりゲームコントローラーの『電波信号』に変えてしまい、結果としてその信号を受け取ったゲームの操作キャラ――まぁ今の俺だが――の足が動き出す、ということらしい。

 何てややこしい……。

 

 だが、フミの『ゲームのコントローラー=脳みそ』という説明で何とか理解できたものだ。

 しかし、それには一つ疑問がある。


「脳は足に『動け!』って命令しているんだろ? だとしたら、今ベッドの上で寝ている俺の足も動くんじゃないのか」


 当然の疑問だ。

 脳の命令をVR機器で、無理やりゲームキャラの信号にへと変えているのだ。

 だとしたら、実体の俺の方もその命令は適応されるはずだろう――だとしたら、今現実では誰もいないベッドの上で虚空に向かって話しているのか。

 それは……怖いというか、気持ち悪いな。


 すると、その質問を受けたフミは微笑みながら言う。


「いいしつもん、ですね!」

「お、おぅ……」


 その笑顔にくらっと来た。

 危なかった、今にも襲い掛かろうとしていた右手を左手で抑えられていなかったら、性犯罪者になっていただろう。フミはまさにロリコンホイホイだ、将来が末恐ろしい……。

 しかし、フミはそんな俺に気付いてか気付かずか、言葉をつづけた。


「さいしょ、あなたはいいましたよね? 『とつぜんいしきがなくなった』――と」

「――ッ! まさか!」

「はい、そのとおり。げんじつのあなたのからだにましんで“まひどく”をうちこみました」


 ぞくり、心臓を鷲掴まれるような衝撃を受ける。

 先ほどの恐怖の理由はこれだったらしい……納得と同時に、俺は戦慄の表情を浮かべた。


「ど、毒……?」


 俺は、呆然と呟く。

 その言葉が反芻し、俺は後ずさりながら口の端から言葉を漏らした。


「はい、どくです」


 まるでハムスターのように、小首をこくんと傾げ口をωにする少女フミ。

 さっきまで可愛らしく思えていた彼女が、不意に恐怖の対象に映る。


 すると、フミは俺のその内心を読み取ったのか、あっ、と漏らしてからある言葉をいう。


「あんしんしてください、しにはしませんから」

「――へ? 死なない? 毒なのに?」

「はい。たしょうのどくはくすりになります、つまりせっしゅりょうをまちがえなければしぬことはないのです」


 やたら難しい言葉を使うなこの子は。

 他にも、フミは麻痺毒による影響を語り出した。確かに、最悪の場合死に至ることもあるらしいが、そんなことは滅多にないので大丈夫らしい。

 しかし、なまじ毒だけにいまいち安心できない楪だった。


「――というわけです。わかりましたか」

「平仮名だと分かりづらいの……」


 だが一応理解できたので、頷いておく。

 それを見てフミは「よかったです」と小さく息を吐きながら言っていたので、意外と緊張していたのかもしれない。

 すると、フミはポケットから何かを取り出しながら言った。


「ではいまから、あなたにせんべつ? をおくるのです」


 せんべつ? ……あぁ、餞別のことか。

 要するに、ゲームでいうところの初期装備のことだろう。せっかくだし、強いのがいいなぁ。

 するとフミは紙を三枚取り出す。すると、彼女はそれを俺に渡してこう言った。


「えっと、この三枚の紙の中から、自分がほしいものを一つ選ぶのです」

「あぁ、選べるんだ」


 選べました。良心的だね!


 いやもうなんていうか、よくRPGである一国の王様から『皮の装備一式』をもらって旅立つ勇者が可哀想に思えてくる。

 王からもらったお金とか、三つ目くらい先の町に行くと、普通にそこらへんの子供の方が金持ってるんだよなぁ。小遣いあげるからちょっと魔王倒してきて~、ぐらいの感覚で魔王を殺しにいかないといけないんだから、勇者はたまったものじゃないだろう。


 と、それはともかく。

 何の装備をもらおうかと、俺はもらった紙三枚に目を通す。


 すると――『伝説の剣』『絶対に壊れない盾』『なんか魔法(どれか一つ)』と紙には書かれていた。


「……」


 抽象的すぎんだろ!

 なんだ『伝説の剣』って!? 名前そのまんますぎんだろ!

 『絶対に壊れない盾』とかさ、どんな盾でも貫く矛でも探したほうがいいのか? って名前だし。


 ……いや、まぁこれらはまだ納得できるんだが。


 問題はこの『なんか魔法』だよ! なんかって何!? ざっくりしすぎだろ!!


「はぁ……」


 自然とため息がこぼれた。頭が痛い。

 しかし、何もないよりはましなので、まさか縛りプレイなんぞしたくないので何か選ばせていただく。


 幸い、紙にはその武器の特徴や説明が載っていた。

 俺はそれを読みながら、どの武器にするか考える。


『伝説の剣』


 勇者ヨシヒコが使っていたと思われる伝説の剣。柄がちょっと汗でくさい。手入れしていないので少し錆びついている。

 ちなみに、勇者ヨシヒコは三十五歳の無職のおっさん。脇汗がきつい。


『絶対に壊れない盾』


 何があっても絶対に壊れない盾。武骨なデザインではあるが、何があっても絶対に壊れない。たとえ核爆弾が直撃したとしても壊れない。鉱石がふんだんに使われているため、推定一兆円くらいはある。

 ただしめちゃくちゃ重い。


『なんか魔法(どれか一つ)』


 魔法をどれか一つもらえる。

 何の魔法をもらえるかはくじで決まるので、何が出るかはわからない。禁忌魔法が紛れているかも。


 ………………。


 一つ、決めたことがある。

 『伝説の剣』と『絶対に壊れない盾』、これだけは絶対に選ばない。


 『伝説の剣』とか、もう触りたくもねぇよ! 捨てちまえこんなもの!


 『絶対に壊れない盾』とか、重くて持てないんだったら意味ないだろ!

  一兆円分の鉱石が使われているっぽいから、売るという選択肢もあるにはあるが、そもそも『絶対に壊れない』なら鉱石取れないだろ! これ作ったやつ絶対バカだ! いらねぇよ!


 ……と、なると。

 必然的に、『なんか魔法』ということになる。……あれ、おかしいな。魔法を使えるのって嬉しいはずなのに、なぜか全然嬉しくないんだが。

 まぁ、選べないという欠点はあるが、その前の二つを見ちゃうとなぁ。そんなものか、で済ませられる自分がいる。


 でもまぁ。


(どうせ自分で選べるなら決められないと思うし、なぁ)


 むしろ良かったのかもな、なんて思う。


「きまりました?」


 おずおず、といった調子でフミは尋ねてくる。

 俺はその問いにあぁ、と短く、それでいてしっかりと答えると、フミはそうですか、といって頷いた。


「な、『なんか魔法』、で、お願い、しま、す……」


 ……言うのめちゃくちゃ恥ずかしいなぁこれ!?


 なんで名称が『なんか魔法』なんだよ! なんかいらねぇだろ! 開発者いっぺん死んで来い!


「まほう、ですか。……わかりました」


 フミはそういうと、どこからともなく赤い箱を取り出した。


 その赤い箱には中央に『抽選箱』と大きく赤字で書かれており、紅白の背景がやけに特徴的なものだ。

 その箱の上部には黒い、スポンジのような素材でできた手を入れる穴があり、中が見えないようになっている。

 三十センチくらいはあるだろう箱を、フミは重そうに持つ。顔が、箱に隠れて全然見えなくなってしまった。


「かわぃぃ……」


 その時、俺は世界の神秘について悟った。

 しかしフミはそれに気づいていないのか、意にかえさずといった調子で言葉を続ける。


「このなかに、たくさんのまほうのなまえがかかれたかみがはいっているのです。それででてきたまほうが、あなたのまほうとなります。

 あ、やりなおしはできませんよ」


 どうやらこれを引くらしい。

 おかしい、俺にはなぜか、彼女が赤の法被を着ているように見えた。


「……というか、これおもいのではやくひいてください」


「あ、はい。ごめんなさい」


 なんか怒ったような調子で言われてしまった。

 反射的に謝っちゃったよ。でも、辛そうでもあったので俺は早く終わらせるため、さっとくじを引くことにする。


 俺は抽選箱(?)の中に自分の手を突っ込んだ!


(うぅむ、下のほうにいいのがありそうな気がする。……って、どれを選んでも一緒か)


「ええいままよっ!」


 ずぼっ、俺はよく考えず適当にそこにあったものを取った。

 その紙は、本物の抽選のように三角折にされており、紙にもやはり抽選と書かれている。


「ふっ。さぁ、あけてください」


 重かった箱をまた気づくと持っていなかった。

 そして、フミは中身がなんだったのか教えろと催促してくる。まぁ、教えないのもやぶさかではないため、俺は三角くじをゆっくりと開いた――。


 ごくり、俺は唾をのむ。

 果たして、そこに書かれていたのは。


『 念力 』


「これは……?」


 もしかして? これはもしかしてあたりなのではなくって!? これでよく漫画の主人公がやるみたいな、車を持ち上げて敵の頭上から落としたり、とかできるんではなくって!?


「あぁ、それは“ねんりき”ですね。いしころしかもちあげられないはずれまほうですよ」


 なん……だ、と……。


「え、石ころ?」

「はい、いしころです」


 ……それって、いったい何の意味があんのや。


 チェンジ! 俺はチェンジを要求する!


「だめです」


 あっるぇぇぇぇぇえええええええええ!?!?


 石ころ!? 石ころを持ち上げる力でどう戦えと!?


「ばかとはさみはつかいよう、です」


 小三くらいの少女に慰められる俺、情けなさすぎだろ!?


「ぐずっ、もういいもん! これで魔王倒してやるからな! 見てろよ!」


 半泣きしながら俺は言う。

 フミに困ったように見つめられる俺、自分で自分がどうしようもなく思えてきた。死にたい。


「まぁ、ぷれーやーさんがあといちまんにんいるのですけれど、その、がんばってください」


 暗に無理だから諦めろって言われた! ちくしょーッ!



「絶対魔王倒してやる――ッ!!」



 俺は叫んだ。

 その声は草原中を響かせ、木霊し、どこまでも響いていった。


 やがて、俺は全身が光の粒子に包まれ。


 ――俺は、光の残滓を残して消えた。



「……きたい、していますよ」


 誰もいなくなった草原、ざわめきだけが、その声を知る。


本文中の、VRヘッドギアマウントモニターディスプレイの設定について模式図です。

挿絵(By みてみん)


こじつけみたいなものですので、見飛ばしていただいても結構です。

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