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魔王の娘 ラティエファ・ミシュフェルト・レハフィール

「はいおしまい。どう? 無事に思い出せたかしら?」


女は微笑した。額に当てていた指を降ろす。


「・・・あ、ああ」


ぼくは驚いていた。相づちは打つが、釈然としない。あのときばあさんに話し掛けられ夢について聞かれたのは事実だ。そしてぼくは夢などないと答えた。それだけだ。それで話は終わっていた。


なのにあのばあさん。あろうことか。ぼくを催眠術にかけやがった。


ぼくは自分の心境を洗いざらいあのばあさんに話しちまっていた。さらにやつは心理カウンセラーのごとく誘導尋問で異世界に興味はあるか云々を聞き出し主従関係を結ぶ旨まで深く切り込み、それに対してぼくは「イエス」をほのめかすかのような回答をしてしまっていた。悔しいが、あれは確かに自分の本心だ。

認めざるを得ない。

それを聞いたばあさんは満足そうに去っていった。そこで過去の記憶から戻ってきた。


にしても、普通にしているつもりだったが、あんなに負のオーラ出してたのか自分。しかもその日はクリスマスイブ。魔界人なら目ざとく負の感情丸出しの人間を感知しても不思議じゃない。


「だとすれば、お前は本当にあのばあさんなのか?」


「まあ、そういうことになるわね。ああ、念のため言っておくけど、あのおばあさんは仮の姿。本物がこの姿よ。以後あたしのことをばあさんなんて言ったら承知しないから」


ギロリと睨まれる。冗談は通用しなさそうだ。悪寒が走る。ひいぃぃぃ!


「つーことで、その杖の使い方多少なりともわかったでしょ。その杖かなり希少性高いから、絶対になくさないこと。返事は?」


ロリに返事を強要される。指図されるの嫌いなんだよな。


「へーんーじーはああああああああああああああああああ!!!?」


「は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


「ちっ、返事くらいさっさとしろや」


「・・・」こわっ、このロリ。こわっ!!!!!


ぼくが怯えていると、女はなにかを敏感に察知したように辺りを見回し始める。


「あーそろそろ時間かぁ。続きは後だ。ここにはもういられない。あたしの部屋に戻る。お前も一緒に来い」


女が言った直後、ゴゴゴゴゴゴと地鳴りが始まった。ピキ、ピキと亀裂が走り出す。


スライムは動揺している。


「な、なんだ!? どうなっている!? 説明してくれ!」


「説明は後。とにかくあたしに掴まりなさい。死ぬわよ」


つかむ。女を? え、いいの。女に触っていいの。胸でもいいの。胸はやばいか。


「恥ずかしがってる場合か! いいから早くしなさい」


「は、はいぃ!」


ぼくは女の手を掴む。女が握り返す。

瞬間。



今までいた闇色の空と大地が消失し、なんの変哲もない部屋に変わった。

違う。変わったのではない、ぼくらが移動したのだ。


「む」


女がにらむ。


「あ、ごめん」


手を離し、へたりこむ。なんだったのださっきの地鳴りは。怖かった。


こんな体験、引きこもっていたら味わえない。引きこもっていなくてもなかなか味わえないだろう。魔界恐ろしい場所。


女は手近にあった一人用のでかい椅子に腰掛ける。足を組み、肘掛けに腕を当てほおづえをつく。


しばらく沈黙が続いた。


「で。なんだっけ?」


退屈そうに言葉を発する。


「いや、ぼく、じゃなくて、ワ、ワイも突然のことになにがなんだか」


「ワイとかいいから。まあいいわ。とりあえずあんたは魔王を目指しなさい。で、そのためには魔物をたんまり召喚して育成、で、レベル上げて強力なモンスターをばんばん出せるようにならなきゃ話にならない。分かってるわね?」


声に凄みを感じる。緊張が走る。ぼくはのんびり魔物を育成したかったのに。こんな脅しされたら、嫌になる。召喚士なんてやめたくなってきた。いっそもう死にたい。


「・・・お、お前はだれなんだ? なんでぼくなんだ。この杖だって、お前が使えばいいだろ。ぼくじゃなくたって・・・お前が魔王になればいいじゃないか!」


「お前っていうのやめろ。名前、まだ名乗ってなかったわね。よっ」


女は椅子から立ち上がった。格好つけて、両手を腰に当てる。

子供っぽい。


「何を隠そう、あたしの名前はラティエファ・ミシュフェルト・レハフィール。魔王の娘よ!」


「ラティエ・・・」








今、魔王の娘って言った?












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