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ぼくゴブリン、召喚士になる ラスト

「出でよ、スライム!」


心の準備を整え、唱えた。


言葉と同時に杖を地面に打ち付けると、描いた円が淡く光り中から緑色のゲルが召喚された。大きさは50センチくらい。ゴブリン(ため息)の下半身くらいか。


目もないし小さい。動きも鈍そうだ。


思ったより怖くない。


だが一つ失敗に気づいた。


布団が危険だ。


ふとした拍子にスライムの攻撃かなにかで布団が焼き消えでもしたら存亡危機だ。スライムを出来るだけ布団のある場所から遠ざけたい。だがどうすればいいのだろう。触れても大丈夫なのだろうか。


スライムに攻撃されないとも限らない。毒や麻痺成分を持っているかもしれない。何も分かってないのに不注意に素手で触れたりはしない方がいいだろう。


ぼくは考える。そして結論を導く。


この召喚杖でスライムを押そう。


杖の末端でスライムと地面の間をえぐる。ゲルの物体は多少持ち上がるが、ことのほか地面に吸着しなかなか押し出せない。ノロイが自分の意志で動いている。


どうやら杖で布団への進行方向を塞いだおかげで、スライムの方が自分から遠ざかってくれた。魔物といえど、敵愾心を抱かなければ臆する必要はないのかもしれない。一応召喚主だし。


ぼくが召喚主だと分かっていたのかは定かではないが。



ところで。


次は何をすればいい。


大まかな情報は受け取ったが、何をどうすればいいのか。杖からの新たな指示はない。


さきほどスライムを召喚した時に唱えたのだって、魔物=スライムのイメージがあったから言っただけだ。


何の魔物を出せるのかもよく分からない。他に何がいたかな・・・。


まあいいか。召喚杖は魔物を増やせと言っていた。弱かろうがスライムだって魔物だ。当分はスライムを召喚していればいいだろう。


布団の位置から遠く離れ、何度かスライム召喚を行った。


スライムは全部で5匹になった。


しかし6度目の召喚を行おうとしても出来ず、それ以降は何度やっても召喚が行えなかった。


たぶん召喚杖の魔力が切れてしまったのだろう。


太陽はなく、時間の目印となるようなものも周りにはなかった。


辺りは常に薄暗く、しんとしていた。ただスライムが体を引きずる音だけが聞こえていた。


ぼくはどうなってしまうのだろうか。不安になる。


また発狂したくなってきた。だがこらえた。


ひとりぼっちは心細いが、今は自分の他にも生命がいる。それは魔物だったが、そう考えるだけで救われる心地がした。


いや、ぼくも魔物か。


ぼくも魔物だったなそういえば。早くあのばあさん、きてくんないかな。そしてぼくを元のイケメンに戻してくれ。



それからは何もすることがなくなったため、今までに召喚したスライムの観察をして時間を費やした。


腹が減ったらどうすればいいのか、スライムを食べるしかないだろうかなどと考えていたが、結局腹はすかず、睡眠欲が先に来たため、食事に関しては一眠りしてからまた考えればいいだろうと、結論を下した。


スライムの観察をして分かったことと言えば、スライムは時間の経過とともに少しずつ体積を増していた。かすみか何かを食っているのかもしれない。あと、最初に召喚したスライムが分裂した。だから6匹になった。体積はどちらも二分の一になっていたが、しばらくすれば元の大きさに戻るのではないだろうか。


眠って起きたら、残りの4匹も分裂しているかもしれない。そうしたらスライムは全部で10匹だ。魔物を増やすことは成功していることになる。


そういえば杖のヤツは魔物を育成しろとかも言っていたな。


育成とはいかに。放っておけば勝手に育成してることになるのか?


まあいい。


今日のところは眠るとしよう。


ぼくは第二の故郷に戻り毛布をかぶると、そっと目を閉じる。


異世界転移1日目。


今日から日記を始めるとしたら、どんな題名にしようか。出来ればインパクトのある題名がいいが、長すぎるのもあれだしな。


決めた。


ぼくゴブリン、召喚士になる。







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