表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

ぼくゴブリン、召喚士になる

両親と妹は家族旅行で長野に行ったから、家には今ぼくしかいない。


外は寒い。冬なのだから当然だ。おまけに夜だ。なおさら寒い。


風が吹き付けて窓をがたがたと揺らしている。ぼくはといえば、テレビをつけて暖かいコタツでごろごろしながらみかんを食っている。


テレビの上にある壁掛け時計が十時を指そうとしていた。


テレビ画面には人間がおばけメイクした人間が映っていた。『心霊体験特集』だそうだ。正直これのせいでコタツから抜け出して風呂に入ることが出来なくなってしまった。フィクションだろうがおばけメイクだろうが、怖いものは、怖い。


・・・まあ、一日くらいいいよな。親もいないしな。寒いし。


十二時を回りまぶたがとろんと重くなってきた頃。ここで眠ってしまおうかとも考えたが、やはり寝るのは布団の中がいいのでコタツから抜け出し歯を磨いてから二階の自室に行きベッドに入った。ひんやりと冷たい毛布と布団が全身を覆う。寒さにふるえながら体を丸める。


17歳、高校二度目の冬休みだった。


夢なし。彼女なし。勉強苦手。ゲーム大好き。おなにーも大好き。


身長167センチ。体重普通。ちん長12センチ。(勃起時15センチ)


それがぼくだ。それがおれだ。


何の取り柄もない。


何もできないし、したくない。


ただ普通に過ごせればそれでよかった。普通に高校生活が送れればそれでいい。だがそんな普通さえも出来なかった。普通の生活を送らせてもらえなかった。だから引きこもりになった。


夢などない。将来には不安しかない。なにになりたいのか、なんて考えたくもない。


もしもどうしても何かをして生活の基盤を作らないといけなくなったとしたら、ぼくは死ぬしかない。


一歩も家から出ず、魔法を使って金を稼げたらこんな心配しなくて済むのに。もしくは、魔法で家から何から出すことが出来れば、一生何もしなくても暮らしていけるのに。


だけど魔法なんかないし、出せない。気だって、チャクラだって出せない。(練習したけど出せなかった)


今日は12月28日。


クリスマスから三日が過ぎた。サンタは未だに来ていない。プレゼントがどこを探してもないのだから、まだ来てないのだろう。もしくは記憶障害で届けるのを忘れてしまったのか。深くは考えない。


ベッド脇の机の上にはクリスマスイブに自分の小遣いで買ったガンプラが置かれている。


プレゼントならあった。プラモデルだ。それがぼくのクリスマスプレゼント。


雪も雨も降っていない。ただ風が乱暴に音を立てて吹きすさぶ。


無意識の中で自分の意識がなくなっていくのを感じる。窓を叩く風の音が心地よかった。ゴーゴーという風とがたがたとならす窓、世界は静かに沈んでいく。



人間の一日が終わる合図だった。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ