第四話「ZANNZOU!」
ピンのすけ「お、おまっ…おままっ」
ごむこ「嘘…でしょ…」
唖然するばかりの二人を尻目に、はじきは置いてあった菓子パンを再び取って頬張り始めた。
はじき「はむっ…」
ピンのすけ「お、お、お、お、お、お、おおおおおいはじき!今のどーゆーことだ!?」
ごむこ「どどどどどどどどんな手品使ったの!?」
はじき「手品なんて失礼だなあ、もぐもぐ…、ボクの実力だよ」
尚も菓子パンを頬張り続けるはじき。
一体その華奢な、スラッとした体のどこにそんな食料が収まると言うのだろうか。
ごむこ「じ、実力って…」
はじき「二人だって練習すればこんぐらい朝飯前だよ」
ピンのすけ「いやいやあんなの朝飯前でたまるかよ…」
ピンのすけがそう言うと、はじきはそれまでゆっくり頬張っていた菓子パンを一気に口の中にねじ込み、爆裂的な勢いで咀嚼し、飲み込むと顔色をフッと変えてこう言った。
はじき「手品じゃないことを証明すればいい?」
ごむこ&ピンのすけ「は」
はじき「じゃ…二人が指定したモノを二人が指定した方向へ弾いてあげるよ。本棚でも金庫でも…何でも言うといい」
ごむこ「はあ!?本棚!?金庫!?」
ピンのすけ「そ、そんなもの、本当に弾くってのかよ!?」
ごむこ「はじき、あなた一体」
はじき「早く言って」
はじきはごむこのセリフを、静かで厳かな覇気で威圧し、遮った。
普段のはじきからは想像もつかない恐ろしさであった。
ごむこ「…!」
ピンのすけ「じゃ、じゃあ…これだ」
そう言ってピンのすけが提示したのは、古びた教卓。
すでに要らなくなり、廃棄が決まっているものだ。
はじき「いいよ。どこへ飛ばす?」
ピンのすけ「さっきの山とは…逆の山へだ」
はじき「わかった」
こんなもの、普通に考えれば飛ばせるわけがない。
ピンのすけも後になって、提示したモノが少し大きすぎたのではと思った。
しかし、その考えは、すぐに教卓と共に吹き飛ぶこととなる。
はじき「窓外して」
ごむこ「は、はいっ」
はじきの威圧感に自然と敬語になってしまうごむこ。
はじき「弾くよ」
はじきは先程のように指をOKサインにし、手を教卓の2~3cmほど手前に持っていくと…
次の瞬間。
バチン!!!
…いや、「ドゴン」の方が擬音として正しいかもしれない。
炸裂音、衝撃波、様々なものが同時に巻き起こった。
教卓は先程の消しゴム同様、残像すら見えんとする速さで、ピンのすけの指定した山へ吹き飛んでいった。
周囲の窓やドアがガタガタと音を立てる。
ミシッとヒビの入った所さえあった。
そして、爆発こそ起こらなかったが、猛烈な土煙が、例の山の教卓の落下地点と思われる場所で巻き起こったのがはっきり見えた。
ごむこ「」
ピンのすけ「す、すげえ…」
はじき「もぐもぐ…」
ふとはじきを見ると、机に座って菓子パンを頬張るいつものはじきに戻っていた。