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村娘が村人達とぬるーくダンジョン経営  作者: ムムのミニ神
二章 ダンジョン準備
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案内

「ほう、これが入口の門か。こいつはいい趣味してるな」


 ダミーコアが埋め込まれた入場門前、これまで辛口評価だったチャクマがほうと感心していた。手先が器用な村人が彫った模様を気に入ってくれたらしい。

 泥団子には勝ててなさそうだが。


 対して天使長は別の所に興味を示していた。


「門番がいないのが気になりますが……いえ、門に仕掛けがありますね。ダミーコアが埋め込まれていて、魔力を注入しないと開かない仕組みになっているようです。これが門番代わりなのでしょう」


 さすがは天のダンジョンマスターである。この短時間で仕掛けを見抜いていた。


 年季が違うねぇ、なんてムムが感心していると、天使長はなにやら言いたげな視線を向けてきた。

 ははぁんである。彼の言わんとすることがわかってしまった。


 ――惚れちゃったんだ。


 美貌だけでなく、ダンジョンマスターとしての素質まで見せつけてしまったのだ。落ちてしまっても不思議じゃない、と。


 内心照れたムムは同時に申し訳なさを覚えていた。

 このダンジョンは一人の力で作り上げたのではない。カナィド村総出で努力した結晶なのである。


「あのね、私が可愛くて知的そうに見えたかもしれないけど、ダンジョンが凄いのは皆の力があってこそだから!」

「はぁ……」


 謹み深いムムはきっちり申告したわけだが天使長は薄い反応だった。

 幻滅させてしまったからだろう。


 でも、これでよかったんだよとムムは思っていた。誇大された自分に惚れられてもお互いに不幸だ、と。


 ――それに私にはテン君がいるからね。


 気持ちには答えられない。

 その分、ダンジョンリゾートのおもてなしで満足させる所存だった。


 入場料の魔力を注入してもらい開門。


『~♪』


 するとムムの鼻歌が流れた。コアに録音再生機能があったので内緒で設定してみたのだ。自信作である。

 もちろん、この場でコメントを述べてはくれる人はいなかった。総スルーである。テンでさえビクッとして終わりだ。


「鼻歌のチョイスが悪かったかな」

「それ以前の問題よ」


 そんな親子のやり取りの間に門は開ききる。その向こうには、お出迎えが縦二列、ちょうど壁へ沿うように並んでいた。


「ようこそ、いらっしゃいませ!」

「よく来たね!」

「歓迎歓迎!」

「よぉく、いらいらしなさいませだっけ?」

「あら、好みかも」


「あ?」

「これは……」


 おばちゃん、おばちゃん、おばちゃん、おばちゃん、おばちゃん。ツトがサービス業のいろはを教えている看板娘達である。

 平均年齢は聞いてはいけない。

 教えを活かさない見事にバラバラな挨拶であった。


 お客二人のテンションも駄々下がりである。


「変な目で見てんじゃねぇよ」

「いやぁん」


 チャクマに至っては色目を使ってくるおばちゃんにガンを飛ばしたが逆に喜ばれてしまいドン引きだ。


 ――後でシメる。


 列の先頭に立っていたツトは笑顔を取り繕っているが背中から怒りが漏れていた。


 と、そこへテンがとててんと走ってその列の最後尾に並ぶ。


「こりゃあ!?」

「絵になりますね」

「うひょー!」


 劇的だった。天使が加わったことで平均年齢が下がり、可愛らしさが倍増されたのだ。

 一番奥なのにこの破壊力。もはや無敵、怖いものはない。

 渋い顔をしていた二人がたちまち機嫌を直すほどであった。


 ここぞとばかりにツトが動く。


「では、宿泊所へ案内しますね。お荷物はありますか?」

「ない」

「手ぶらです」

「わかりました。では、こちらへどうぞ」

「うひょう……」


 テンにノックアウトされていたムムと出迎え組を残し、一行は新たに作られた三階の宿泊エリアへ。

 本来であれば一階に設置したかったが、魔力が足りなかったためにこの階層のままになってしまっている。


 それはさておき内装だが、洞窟そのものである。

 せっかくのダンジョンリゾートなのだからあえて普通にはしなかった。家具も一通り揃えられているが雰囲気を壊さないデザインだ。


 さらに、それなりの広さを確保してあるのでダンジョンらしくても息苦しさや圧迫感はない。薄暗い明かりに照らされた中で落ち着いて過ごしてもらえることだろう。


「まぁ、ダンジョンリゾートだもんな。こんなもんか」


 頭にラモビフトを乗せたチャクマはあまりお気に召してなかった。


「部屋には温――薬湯は無しですか……」


 湯浴み着のまま湯気を立ち上らせている天使長も残念そうだ。

 まぁ、今までのことを考えればこの反応は当然だろう。彼らはダンジョンらしさには飽きているのだ。


 格好からして通り抜けた道中は堪能してもらえたようであるが。


 チャクマはラモ踏みマッサージと称したラモビフト達による蹂躙を楽しんでいたし、天使長も馬鹿みたいな値段で販売されている村長秘蔵のお酒を片手に薬湯に浸かって入口で聞いた鼻歌を口ずさんだりしていた。


「今のところいい感じかな」

「ムム、遅かったわね」


 ようやく追い付いてきたのだ。

 湯気を立ち上らせて、頭にラモビフトを乗せていることからして、理由はお察しであろう。客よりもダンジョンを楽しむマスターである。


「あっ、ここから新しいトコだ。気に入ってくれるといいね」

「そこそこだったわよ」

「え?」

「だから、もう見せてきたの」

「嘘ぉぉぉっ!?」


 母ミミから衝撃の事実を聞かされた。

 彼らは手荷物が無かったので先に四階に行っていたのだ。

 さらに戻ってマッサージと薬湯へまた行ってたりもする。


「つか、あんたドコ行ってたのよ」


 先の階はともかくとして、戻った際に出会ってないのはおかしい。

 ミミに訊ねられたムムはあからさまに目を逸らした。


「……五階へ飛んだんだ」

「ナンノハナシカナー」

「先回りして驚かせようと思ったんでしょ」

「迷子になんてなってないから!」


 五階は道に迷いやすいのである。だが――


「迷子なんて一言も言ってないけど?」

「あっ」


 まだ言い逃れ出来ただろうに、しまった、という表情をしてしまってアウトなのである。

 ムムは驚かせようと先回りして迷子になったので戻ってから追い付いてきたのだ。


「にしても、あんたアホね」

「あそこの道、覚えらんないもん」

「いや、そこじゃなくてさ、彼らもダンジョンマスターなんだからワープ出来るはず」

「あっ」

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