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村娘が村人達とぬるーくダンジョン経営  作者: ムムのミニ神
一章 ダンジョンの始まり
32/79

決着

 ムムが気絶していたのは数分ほどだったようだ。


「わぁ……」


 目を覚ますと剣が突きつけられていた。嬉しくないサプライズである。


「約束通り裁いてやる」


 目が覚めるまで待っているとは律儀と言えようが、それなら寝ている間にぶすりとやって欲しかったな、と考えてしまうのはおかしいことであろうか。


「まって!」


 と、そこへマツがトテトテ走ってきて二人の間で止まった。

 トバズは村人を傷つけないという約束を守ってくれるようで、すぐに剣を降ろしてくれた。危険は無さそうなのでムムも一安心だ。


 さて、マツだが、手には見覚えのあるヒモが握られている。小さな手で隠そうとして隠しきれてない感じからして、何かするつもりらしい。


 ムムは危ないから止めさせようとしたのだがマツの方が行動が早かった。


「てあてしないと、めっ、だよ!」


 いつもテンに怒っているように腰に手を当てて可愛く怒る。

 トバズは気を悪くするかと思いきや、驚くべき反応を見せた。


 ――今、デレッとしなかった?


 ほんの一瞬だが顔が緩んだように見えたのだ。

 目を擦ると元に戻っていたが。

 ムムは幻覚を見てしまったのかもしれないと考えなおした。


 彼は救騎士を自称しているのだ。決して変態のような笑みを――


「じっとしてて」

「あ、ああ」

「やっぱ幻覚じゃなかった!?」


 物凄くデレッとした。見ていられないほどの蕩けっぷりであった。


 ムムがラモビフトをモフっている時もそんな顔をしているのだが。


 ――子供をそういう目で見るとか、あり得ない!


 憤るムムであったが、十才下の男の子と結婚したがっているお前が言うな、である。

 ムムとトバズは同族なのかもしれない。


「なにが幻覚なんだ?」


 ムムのツッコミが気に障ったらしい。再度、切っ先が向けられた。


「やはり先に斬るべきか」

「ちりょーなのっ!」


 果敢にも遮るように怒ったマツは持っていたロープでトバズをぐるぐる巻きにする。

 彼なら余裕で逃げられただろうに、されるがままだ。


「おいおい、これじゃ動けないぞ」


 それも嬉しそうに。


「ほんとにうごけない?」

「ほんとだ、ほんと。本当に動けないだと!?」


 ようやくトバズは自身の状況を理解した。いくら力を入れてもロープは解けてくれず、千切れもしない。さらに身体強化の魔法が発動しないのだ。


「どうなっている!?」

「あー、それは封印の縄だよ」


 ダンジョンコアから作り出したアイテムだ。

 名の通り、縛った相手を無力化する効果を持っている。ただし、相手の力量によって巻き付けねばならない長さは伸びていく。

 トバズなら縄の殆どを巻いてようやくであった。


「おいおい、どういう了見だよぉ」

「幼子使って奇襲か?」


 団長が捕まってトバズ盗賊団が黙っているはずがない。休憩していた彼らは武器を持った。


 不穏な空気だ。マツはムムの後ろの隠れる。


「あの違っ――」

「おいムム! これはどういうことだ!」

「休戦協定が終わったのか?」


 ムムがなんとか状況を収めようとしたところ、シケボモ達が駆け寄ってきた。応急処置程度ではあろうがひとまず治療は終えたらしい。

 彼らはウゴヨク登場したあたりは気絶していたので状況を把握しきれていなかった。


 ムムがその身を差し出せば全て丸く収まる。もう戦う必要はないのだ。

 そう言おうとしたのだがシケボモに止められた。


「お前一人が犠牲になることはないぞ」

「………………」


 優しい言葉。それはとても嬉しいものであったが、ムムは言葉をうまく返せなかった。


 少し違うのだ。犠牲になって皆を助けたいという気持ちは確かにある。

 ただ、もう一つ、ミミやウウのことが頭をよぎっていた。


 二人は自分のせいで命を落としてしまった。記憶が少し曖昧になってしまっているが、失ったことによる虚無感と、罪悪感が胸の奥に残っているのだ。


 ムムは償うことを求めていた。

 トバズに裁かれると聞いたとき、少しホッとした自分がいた。


 そう、今のムムは生き残ることを望んでいない。


「どうやら時間のようです」


 サーソが呟いたのにあわせてムムは前に出る。マツが止めようとしたが、ムムはその手を優しく剥がした。


「私、一人でいい」


 ムムが悲しく四人に笑いかけると同時に、弓と魔法による一斉放火が始まった。


 ムム達に対してではなく、トバズ盗賊団にだ。

 さらに見知らぬ男達が雪崩れ込んできて攻撃を仕掛けていく。横合いから完全に虚を突かれた盗賊団に為す術はない。

 統率は崩れ、次々と捕らえられていく。

 多くの被害をもたらしたトバズ盗賊団もこれで終わりである。


「サーソ!」


 冒険者の集団から二人が駆け寄ってきた。サーソと組んでいる女性冒険者だ。


「遅くなってごめんね!」

「でも、なんとか間に合ったね」

「貴女達こそ無事でよかった」


 抱き合って再会を喜んだ一方で、ムムにすまなそうな視線を向ける。


「ムムちゃん、ごめんね。君のお父さんは私達を庇って化物に……」

「冒険者が守られちゃうなんて情けないよ……」


 どうやらウウは二人を逃がすために一人で立ち向かったらしい。


「謝らないで。お父さんとお母さんが死んだのは私のせいなんだから」

「誰が死んだって?」

「え?」


 勝利に湧く冒険者の雄叫びに混じって微かに、でもたしかにそれは聞こえた。聞こえてきたのは、入口に向かう方の通路から。

 冒険者を掻き分けて進むとムムは思わず息を飲んだ。


「お母さんと……生首?」


 ウウは生首のままだったのだ。正確には耳が天使のような白い羽と悪魔のような黒い羽になっている。


 さらに羽が生えているのはミミもであった。彼女は肩甲骨のあたりから白と黒の羽が生えている。


「どうやら心配かけたようだな」

「生首が喋った!?」

「ふふふ、そりゃ驚くよねぇ」

「どういうこと!? どういうこと!?」


 まさかの展開にしどろもどろなムムを二人は微笑んで見つめていた。


「それは私らが説明しましょう」


 ミミの後ろからおっさん天使とおっさん悪魔が現れた。


「端的に言うとだなぁ。決着が付かなかったから合同で生首を眷属化してやった。感謝しろよ」

「そうしましたら、ウウさんがミミさんの蘇生を望みましたので再び合同で下僕化しました」

「は、はぁ」


 なにを言っているか、ムムにはさっぱりである。

 ただ一つわかるのは二人がこうして生きているということ。ウウは本当に生きているか怪しいところだが話せることには変わりない。


「ありが――」

「ただ、困ったことがあんだよなぁ」

「えっ?」


 感謝の言葉は途切れた。

 今の悪魔の顔を見たら言う気も失せる。悪い顔をしているのだ。それは天使も同じで、今からロクでもないことを言われるのは確実だった。


「今、二人は天と地のマスターの下僕なんですよ」

「あぁ、地と天のマスターの眷属だ」


 天使と悪魔は無言で睨みあう。

 ムムが申し訳なさそうに「えっとそれで?」と続きを促すと天使は軽く咳払いをした。


「失礼しました。それでですね、代価はミミさんの魂という話でしたが、もう一度生き返せたので魂を頂けないわけですよ」

「早い話、二人分の魂を寄越せってこったな!」


 悪魔の下品な物言いに顔をしかめつつも天使は否定も訂正もしなかった。彼も魂を求めているのだ。


「まぁ、魔力でもいいぜ。このダンジョンにそれだけのポイントが残っているならなぁ!」

「ほんと?」

「えぇ、本当ですよ。サービスで二千万ポイントでいいです」

「さらに、この二人を引き取りたいなら一人一億ポイントだ!」

「はい」


 今、敵性勢力はこのダンジョンにはいないのでワープできる。


 天使と悪魔を連れてコアルームに飛んだムムはそれぞれに一億一千万ポイントを注ぎ込んだ。


「え?」

「あ?」


 マヌケ面を晒す二人。


「これでいい?」

「あ、はい」

「おう、って、なんでポイントあんだよ! 無かったはずだろ!」


 たしかに彼がウウを連れ去った時にはそんなポイントは残っていなかった。

 では、なぜ今はあったのか。


「魔剣が残した魔力吸いとったら凄いことになった」


 ということなのである。約二億五千万万ポイント。結構ギリギリではあったが払えてしまった。

 言い出したのは彼らなので反論はない。


 犠牲者ゼロの大勝利を納めた瞬間であった。

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