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村娘が村人達とぬるーくダンジョン経営  作者: ムムのミニ神
一章 ダンジョンの始まり
2/79

生地獄

 ムムはあれからどうやってカナィド村に戻ったかは覚えていなかった。

 あの山にはよく足を運んでいたのが幸いしたのだろう。痛みで朦朧としながらも道を体が覚えていてくれたからこそ帰れた。そうとしか考えられなかった。


 無事に帰れたのだからそれはいいとして、村に帰ってからもムムには地獄のような試練が待っていた。


 第一の試練はやはり痛みだ。全身の痛みは弱まりこそしたがまだ健在であるし、頭に至っては徐々に強まっている感がある。このままでは熟しすぎたフルーツのように爆発するんじゃないか。

 ほとんど停止している思考がずっと警鐘を鳴らしている。


 そんなムムを襲う第二の試練は母親ミミだった。


「あんた、籠はどうしたの!」

「うへぇ? 籠ぉ? あ、無いねぇ……」


 籠はあの場に忘れてしまっていた。さすがの体もそこまでは気が回らなかったらしい。

 そして、いくら辛くても、適当な受け答えをしてしまったことが運のつきだ。


「あんたねぇ!」


 烈火のごとく怒られた。そりゃあもう怒られた。

 元々、ガサツ系女子であるムムには多くの前科がある。

 農具をへし折ったり、家の柱をへし折ったり、村長のプライドをへし折ったり。へし折り系、もとい破壊系女子でもあるのだ。


 今回もその一環だと思われてしまった。なので帰ってすぐ正座だ。

 二時間に及ぼうかという説教は見せしめのように村の中心で行われた。


 そこで第三の試練である。

 痛みのせいで説教を聞き流しているムムの視界にぼんやりとではあるが動くものが見えた。おそらくは二つ。ムムの方に近づいてくるとピタリと止まった。


 ここは村の中である。動くものは村人か卵を生むリトワニという爬虫類の家畜ぐらいのものだ。

 大きさは普通の村人にしては小さく、地面に直立しているのでリトワニでもない。


 となれば答えは一つだった。それに気付いたムムは絶望した。


「おねーちゃん、おかえり。おこられてるの?」

「おかえり、また、こわした?」

「ぐはぁっ、二人とも天使。特にテン君天使……でも見ないで……」


 テンとマツだ。この村で小さな姿、すなわち子供はこの二人しかいない。その可愛らしい声からしてもはや疑いようもない。

 正座させられて説教されている姿なんて二人には見られたくなかった。


 ライバルのマツに弱みを見せるわけにはいかないし、テンのお嫁になれなくなってしまう。


「どうしよう、どうしよう……」


 なにか対策を取りたかったが断続的な痛みのせいでなにも思いつかない。痛みが無ければ、と、ムムは思っているが、無くても思い付かなかっただろう。


「あんた話聞いてるの!?」

「ぐえっ」


 そしてげんこつ制裁がきた。まだ説教の最中なのに聞いてない素振りを見せたのだから当然である。


 ダメージこそ少なかったが、うっかり足を崩してしまったムム。解放された足から駆け上がる痺れは彼女に新たな試練を課した。

 体の痛みも辛いが、微振動する痺れも耐え難い辛さだ。


 さらにテンとマツの無垢なる視線に晒され、ムムの地獄がそこに完成したのだった。




「熱が出てるなら出てるって言いなさいよ」


 説教が一段落したところでミミはムムの不調に気がついた。おでこにてを当ててビックリ、かなりの高熱であった。


 それから村の男に運ばせ、粗末な煎餅布団に放り込んだのが昨日。ムムの熱はまだ引いていない。


「うー」

「おかゆ、食べる?」

「冷たくて……甘くて……とろけるようなやつなら食べる……」

「んなもんあるわけないでしょ」


 聖王都にだってあるのかどうかわからない代物を要求する不届きな娘の口に木製スプーンを押し込んだ。


 ムムは変な呻き声を出したが、それでもしっかり食べる。食欲の衰えは風邪ほどではないのだ。


 口に広がるはぬるめのとろとろに煮込まれたお芋。リトワニの卵も一緒に煮込まれ絡みついている。

 さらに乾燥させた山菜香辛料が独特の爽やかな風味のアクセントをつけており、


「うまぁ……」


 ムムは一時訪れた幸せに、目をつぶりながら笑みを浮かべた。

 ミミは料理上手なのだ。


「そんだけ食べれるんなら安心ね」


 呆れ口調のミミだったが娘につられたように僅かに微笑み次の一口を差し出した。




「ごちそーさま」

「はーい」


 ぺろりと二皿平らげたムムは洗い場に向かった母の背中を見送り、寝返りをうった。


「あ……」


 すると大きめの赤い石が置いてある。元凶となったあの石だ。持ってきていたらしい。


「これ、どうしようかね」


 ムムはそれの対処に頭を悩ませた。

 いや、どうしなければいけないかは既に理解・・している。一蓮托生だということも教えて・・・もらった。


「だからってねぇ」


 ムムはまた寝返りをうった。

 気が進まない。全くもって進まない。


 その道は誰も彼もを不幸にしてしまうだろう。だからこそ、あの白い老人も押し付けてきたのだ。

 そう考えるとムムは腹がたった。


「余計なもの押し付けやがってー! うっぷ……」


 ムキーっと、布団で暴れたムムは満腹感と痛みのダブルパンチにより気持ち悪くなった。

 吐いたらお嫁にいけなくなる。あと母親に叱られる。

 ムムは必死に堪えるのだった。

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