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村娘が村人達とぬるーくダンジョン経営  作者: ムムのミニ神
一章 ダンジョンの始まり
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第二回村会議

 第二回、カナィド村会議が村の広場で行われることとなった。議題はもちろんムムのダンジョンについてである。


 議論はかなり白熱していた。


「カナィドわくわくダンジョン!」

「ダンジョン・ジ・カナィド!」

「カナィドの名所ランキング一位のダンジョン!」

「デスダンジョン・カナィド!」

「もふもふどうくつ~」


 そう、白熱しているのはダンジョン名についてであった。なぜ名前でここまでエキサイトしているのかは、もはや誰にもわからない。ただ、この瞬間の彼らは全力で本気であった。


 ムムも手をあげアピールしながら叫ぶ。


「天使降臨洞窟!」


 渾身のネーミングだ。あのダンジョンにはテンという天使が舞い降りたのだから、それ以外に名付けようもない。


 ムムの案により、あれだけ凄かった村人達の喧騒もピタリと止んでいた。

 やはり、天使と圧倒的センスは万人に通じるのだとムムは自信を深めた、のだが――


「ないわー」

「ボツ」

「てんしってなぁに?」

「もう少し考えるべきじゃな」

「お母さん悲しいよ」


 訪れたのは、称賛ではなく村人総出での却下であった。


「私がダンジョンの最高責任者なんだけど……」

「げんきだして」


 優しく頭を撫でて味方してくれるのは天使のテンだけである。


「テンー、おやつよー」

「わぁい!」


 その味方も去った。ムム、孤独に涙を拭う。

 そこへ、タイミングを窺っていたツトが一つのアイデアを投下する。


「ねぇ、名前考えるのもいいんだけどさ、ダンジョンの方向性を考えるのが先なんじゃない? そうすれば名前も自然と決まるでしょ」


 ムムを含めた多くの村人が「その発想はなかった」と表情で語っていた。

 アホばかりね、と、呆れつつもツトは現状のダンジョンについて訊ねる。


「今のコンセプトは何だったの?」

「ウゴヨクの魔の手から生きて逃げ延びる!」


 ミミの原案は、ダンジョンにてムムを匿うことだった。

 その為に隠れる場所を色々とつくった。ラモビフトの避難所なんかもそうだ。


 ただ、コアは人が通れないような狭い通路に魔力を通すことを苦手としていた。通そうとすればより多くの魔力を消費してしまうだろう。

 ヘタすればコアの機能が停止して、ムムもろとも――。

 と言うことで、コアは広い部屋に設置することとなった。


 それはそれとして、ウゴヨクを退けたわけで当初の目標は無事達成したと言えよう。


 だからこそツトは転換すべき方向性を高らかに主張する。


「よし、そのコンセプトは投げ捨ててお金儲けに変えよう!」

「えぇぇぇ!? ダメ!」


 最初のコンセプトを投げ捨てるのはいい。だけど、金儲けなんて響きの悪いコンセプトにはしたくなかった。


 ムムはテンと約束したのだ。優しいダンジョンマスターになると。

 その為には誰もが笑顔になれるダンジョンにしたい。

 その想いをムムはツトにぶつける。


「ダンジョンは笑うんだよ!」

「え? うん、あぁ、そう、凄いわね」


 間違えた。皆に笑ってもらうんだよと言おうとしたらこの有り様である。

 ツトでさえも突っ込もうとも弄ろうともしないミスであった。

 村人からの視線も生暖かい。居たたまれなさに逃げようかと思ったところでテンが突っ込んできた。


「だんじょんってわらうの?」

「ぐふっ」

「ムムねーちゃんまちがえなの。しっ、だよ? あっ、わたしなにもきいてないよ!」


 そしてマツの優しさが痛かった。前半の小声もムムには全部聞こえていたのでダメージは甚大だ。


「あー、それより、あんたはどんなダンジョンを作りたいんだい?」

「……皆が笑顔になれるダンジョン」


 見かねたミミが助け船を出してくれてが被害は拡大した。

 村人が「さっきの発言はそういう意味だったんだ」とさらに温くなった視線を送ってくれるのが辛い。

 父のウウが我が子の心意気に感動して服で鼻水をかんでいるのも辛い。


 ここはツトの毒で中和してもらうしかないと彼女を見るとにっこり笑っていた。


「まぁ、そういうコンセプトも悪くないんじゃない」

「えっ、認めてくれるんだ」


 まさかツトがと驚いたが腹黒な彼女が裏なく賛同してくれるわけがなかった。


「私も笑顔になりたいから金儲けはするわよ」

「そういうことか! ブレないね! 貨幣大好きさんめ!」


 してやられたとムムは悪態をついた。

 ツトからすれば誉め言葉だ。


「まぁ、これで方針は決まったわね。人を笑顔にして、金を儲けて、ムムを生き残らせる。大変そうだけどやりがいはある」

「ん? 私を生き残らせるってどういうこと?」


 なにやら聞き捨てならない言い方だった。ウゴヨクの脅威は去ったはずであるのに、まだ命の危機が終わってないかのような。

 ダンジョンのことも他には漏れてないはず。ムムはもう安全だと思っていたのだが。


 そんな甘い考えにツトは呆れる。


「なぁに、寝ぼけたこと言ってんのよ。敵はあいつだけじゃないでしょ。あんだけ人が押し寄せたんだから誰かしらがギルドにでもチクるでしょ。下手したら王の耳にも入るわね」


 全員の口を封じるなら、それこそ命を奪うしかない。もちろん、優しいダンジョンマスターを目指すムムはそれをよしとできない。


「つまり?」

「ムムの命はまだ助かってないわよ」

「……うぇぇぇぇっっ!?」


 ムムの試練はまだ始まったばかりだ。

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