もしも幸助がコタツを開発したら
「コースケ、こんなの何に使うんだ?」
「ふふふっ、それは秘密です」
幸助は魔道具職人であるニーナから魔道コンロの改造品を受け取るとほくそ笑む。
外観はそのままに出力の調整をしてもらったものである。
「これで毎日暖かに過ごせる~」
足取りも軽く宿へ帰る幸助。
寒い風も何のその。
他に必要なアイテムは用意済みだ。
絨毯に小さな正方形の特注テーブル。そして正方形の特注布団が部屋にはある。
「これでよし、と」
テーブルの裏面に改造コンロを装着すれば完成だ。
そう、日本人の愛してやまないアイテム、コタツである。
「おっと、これを忘れてた」
最後に忘れてならないカゴ盛りのミカン(の類似品)をセット。
「よし。準備完了。今日という日は歴史の転換点になるであろう。スイッチ、オン!」
手探りで改造コンロのスイッチを入れる。
残念ながら手元でコントロールできるような便利なアイテムは無い。
本家のコタツのようにすぐには暖かくならないが、輻射熱でじわじわと暖かくなってくる。
「あ゛ー、骨抜きになるぅ」
久しぶりの快楽に、コンニャクのようになる幸助。
下手するとそのまま寝てしまいそうである。
「そうだ。コタツといえば!」
パチンと手を鳴らすと幸助はコートを手に取り宿の外へ出る。
数十分後、幸助はサラとパロを連れて帰って来た。
新しい魔道具の実験に付き合ってほしいと誘ったのだ。
「コースケさん、これが前に言ってたコタツね!」
「そう。これがコタツ。こうやって入ってみて」
幸助をまねてサラとパロもコタツに入る。
「わぁ、あったかいの!」
「うん。暖かいね!」
「コタツはこの中だけ温めればいいから使用するエネルギーも少なくて済むんだ」
「暖房代が安くなるんだ。さすがコースケさん。すごい発想だね!」
「すごいの!」
幸助はおもむろにカゴの中にあるミカンを手に取るとナイフで切り分ける。
部屋中に爽やかな柑橘系の香りが広がる。
簡単に手でむけないのは不便であるがこればかりは仕方ない。
「はい、どーぞ」
「うん。何だかよくわからないけどコタツに合うね!」
「おいしいの!」
その後幸助は、魔道コンロの改造品ということなどをひとしきり説明する。
横を見ると絨毯とコタツ布団に挟まれて丸くなっているパロが見える。
といっても見えているのはピョコンと出ている耳だけなのだが。
「あーあ、パロちゃん寝ちゃったね」
「うん。寝ちゃったね」
どうやら幸助の新魔道具実験は成功裏に終わったようだ。




