表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/82

コントラスト

 目の前に存在する脅威を、まず排除しなくてはならない。

 こちらを睨み付けて唸っている敵と向き合って、しっかりと剣を構え深呼吸をする。


「さて……」


 先に動き出したのは飛竜。大きく空気を飲み込み口元に炎を滾らせる。この種お得意のブレスである。

 フェリシアは例のごとく、剣を飛竜が吐き出した火球に剣先を向けた。


「もう飽きたわよ!」


 これまた綺麗に火球を真っ二つに分断する。


「このまま」


 裂いた炎の先にもう一つの火球。それは真っ直ぐフェリシアへと向かう。


「連続!? っく!」


 燃え盛る炎の塊を剣身全体でなんとか受け止め、その火球も二つに割るが、勢いにおされて足が止まった。これを狙っていたのか、立ち止まるフェリシアを尻尾が襲う。


「冗談でしょ!」


 気付いて剣を振りかざした時にはもう遅かった。尻尾は体に巻き付き、鎧をも砕きそうな力で締め上げる。


「う……ぐ……がああああああ!」


 到底彼女自身の力だけで抜け出せるようなものではなかった。

 悲鳴を上げる彼女に、救いの手を差し伸べてくれる仲間は見当たらない。通りすがりの、なんて夢のまた夢。人気も全くない。ただただ、静かな夜に叫び声が響くだけ。

 自分の命も、たった一人の連れの命すら守れなかった。

 情けない。

 ひどく後悔した。

 自分の腕には自信があった。だから大丈夫。そう思っていた。

 でも現実はこう。

 なんて呆気ない。


「ごめんね」


 せめて、せめてあいつの命は救ってやりたかった。

 こんな自分より他人の命を。価値ある命を救ってあげたかった。

 それが自分のせいで……。




 朦朧とする意識の中で最後に見たのは、一つの光だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ